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にょろにょろ討伐。
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翌日。
ハルカのテンションがやけに高め安定のまま、本日はウナーギ討伐である。
ハルカは朝早くからいそいそと弁当を作っているかと思ったら、トラを呼んでマイホーム予定地と改装中の店舗の方へ差し入れを持って行って貰うよう頼んでいる。
足とするのはラウールが牽引する馬車ならぬ『犬車(狼車?)』である。
幅の狭い荷車をラウールに皮バンドで繋いでいる。
本日の差し入れは皆が喜んでくれそうなので焼き肉丼と冷緑茶にした。
荷物を時間経過なしの携帯用アイテムボックスに入れ、荷車に乗せる。手綱を持ったトラに
《振り落とされるなよ》
と言うと、結構な早さで土埃を巻き上げてカラカラカラカラと消えていった。
ハルカが今度は討伐組の弁当を作ろうとして厨房に戻ると、
『急いで帰るので待ってて下さいね』
とメモ書きがテーブルに置いてあった。
(トラちゃんは魔物の肉を捌くの上手いから勿論待ってるわよ)
ハルカは自分でも昨夜ネット通販でウナギの捌き方の本を取り寄せて熟読した。
ウナギは血と内臓は毒があるらしいので気を付けないといけないが、血は焼いてあれば大丈夫らしい。
後はヌメりを取って蒸し焼きにしてタレつけて焼けば、日本では夏バテ予防にもなる高級食「天然ウナギの蒲焼き」の出来上がりだ。
ヤマーモといい、なんか呼び方が似てるものも結構あるのでウナーギは絶対ウナギである、とハルカは断定した。
いやそうであって欲しい。
あっちの生涯で一度しか天然ウナギを食べたことは無いが(高いので外国産が限界だった)、涙が出るほど美味しかった。
蒲焼き考えた人は天才だ。なぜあのにょろにょろを蒸して焼こうと思ったのか。いや最初はぶつ切りにして焼いた筈だ。そこでゴムみたいな食感と泥臭さを味わって美味しく味わう道を諦めなかった事に敬意を称したい。
びば料理人。びば食いしん坊。
その後1週間はもやし炒め乗せご飯だったが、あれは食べられて最高に幸せだったので良いのである。
ハルカは今まで食べた食べ物の味は大概忘れない。あっちの世界で長時間並んで不味かったモノに大枚払った時は、己の判断不足と失われた時間に歯ぎしりした。有名な店だろうと自分の舌の判断が全てである。グルメとかいうハイソな響きのものではない。突き詰めると、
【自分が美味しいと思うモノが食べたい】
だけなのである。それを皆が美味しいと言ってくれれば尚更良い。
(もしウナギだったら、原価タダだし……ふふふふふっ。食堂でお手頃価格で提供出来るじゃないの。みんな不味くて食べないとか言ってたから、ただの『蒲焼き丼』とかにすればいいか。ウナーギとかつけたら食べてくれないかも知れないもんね。食べてひれ伏すが良いあの美味さに。わはははは)
ハルカの頭の中では既に晩飯はうな重に決めていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ひえええええーーーっ!」
川にはウナーギが本当に大量にいた。ハルカの予想通りのウナギである。養殖場かと思うくらい川面でにょろにょろしていた。
Butしかし、いくら大きいといっても限度がある。
Aランクのウナーギは体長10メートル、胴体もハルカが抱き抱えるギリのサイズだ。1メートル位はあるだろうか。
大蛇か。
それも当然ヌメヌメでうまく掴めない。その上刃物の攻撃もヌメヌメのせいで防御されるのか表面を傷つけるくらいがせいぜいだ。
ケルヴィンが言うには、「攻撃力が高くてAランクなんじゃなく、扱いづらいからAランク認定」なんだそうだ。なるほど納得。攻撃も大したことないもんね。
「一番早いのは火魔法で燃やすことなんだけーー」
「却下です!美味しく食べられなくなります。肉に毒が回るので内臓は傷をつけたらいけません」
ケルヴィンの提案にハルカは食い気味に返す。
「イヤ~やっぱりキモい~っ!」
小さいウナーギと大きいウナーギにまとわりつかれて締め付けられてる、らしいのだが何しろヌメヌメなので、でろーん、でろーんと巻きつかれた側から押し出されて地面に放り出されるミリアンが、泣き言を言っている。
「ウナーギの攻撃力ショボいでしょーミリアーン!」
「体は平気でもメンタルに来るのよー!」
「俺もイヤだーーーーーっ!生臭ーーい!」
まとわりつく小さなウナーギをぺしっと払い落としてクラインが叫ぶ。
プルも不気味がってふわふわと飛んで長い取っ手をつけた網で小さいウナーギを掬ってはテンの持つ魚籠に放り込んでいる。
ラウールはでかいウナーギと戦っているが、内臓は傷つけるなと言われて攻めどころを見つけられない。
トラは頭に大事な通販用のPC詰んでるので、捌くときしか近寄る事が出来ない。
辛うじてケルヴィンさんがAランクのウナーギを1体仕留めたが、あと9体いる。小さいウナーギは山のよう。
ハルカは、うーんこのままだとラチがあかんな、と精霊さんズを呼ぶ。
「精霊さんズ、ウナーギを傷つけずにサクッと捕獲したいんだけど、こうゆうの出来る?」
現れた精霊さん達とひそひそ話をしている。
「……雨みたいな感じでいいの?」
「そのあと……で?」
「局地的豪雨みたいな感じで。10秒位でいいの」
「……は暫くやるのね?分かったー」
「ハルカ、アイスクリーム皆に大好評だったからあれの違う味もあったらお願いね」
話し合いが終わり、ハルカは皆に声を掛ける。
「はーい注目ー。みんなー、でかいのが邪魔だからそれから先に片づけるよー。合図したら危ないからみんなウナーギから少し離れてねー火傷するから」
3、2、1、GO!!
皆がパッとウナーギから離れて走る。飛んでく。
そこへ熱湯のシャワーが空から魔法でざばーっと降り注ぐ。でかいウナーギが熱さでうねうねするが、白濁したゼリーみたいなのを体にまとうようになった。
すぐに今度は氷のように冷たい雨がざばざば降り注ぐ。
熱湯で弱ったウナーギが全く動かなくなった。
精霊さんズが片っ端から白濁したゼリーのようなものを魔法で取っ払い、背開きにして内臓と中骨を取り水洗いした後、適当な大きさに切り分ける。
元が大きいので、更に小さく丼用に切って串を刺すのはトラとクライン達に渡してやってもらう事にした。
「……あ、ヌメヌメがなくなった。これならナイフが使えるな」
「ほんとね、そんなに気持ち悪くないわ」
「僕は食材を切るのは得意です。内臓は注意して下さいよー」
クライン達がホッとした様子で作業を始める。
でかいのは全て解体したので、後は小さいウナーギ達なのだが、でかいのだけで相当な量になるので、プルが魚籠に放り込んでたのに足す形で放り込み、同様の下処理をした。小さいのは楽チンである。
足りなくなればまた取りに来ればいい。
ついでにAランクのウナーギを倒した際に出た魔石も回収した。
「身が締まってて美味しそうだわ……」
ハルカはヨダレがこぼれ落ちそうになったが、乙女としてそこまで堕ちたらいけないと必死で耐えた。
「ありがとうね精霊さんズ。これ約束のもの。チョコレート味とバニラ味ね。今度違うのも作っておくね」
アイテムボックスからアイスクリームを入れたケースを2つ取り出すと、作業を終えた精霊さん達に手渡した。
ついでにアイスクリームにつけて食べると美味しいよとウエハースもつけた。
「ありがとうハルカ♪またみんなでアイスクリームパーティーするわ」
「精霊使いが荒いけど、報酬は太っ腹だからいい上司」
「あー、仕事で疲れた時には甘いものよねぇー」
あっちの世界の会社員みたいなことを言いながら精霊さんズは戻って行った。
アイテムボックスから寸胴を出したハルカは、頭と骨を焼いて粉々にして入れ、醤油やみりん、砂糖や酒などを入れ早速かば焼きのタレ作りを始めた。アイテムボックスには山椒も入っている。
ついでに皮にも縮まないよう切れ目を入れ、昨日ネット通販で買い込んだウナギ焼き器(炭を入れて焼くアレ。10万円台だった。高いが経費で落とす気満々だ!)とタレ壺を出した。
まず小さいウナーギの方をどんどん串に刺し、別の鍋も出してどんどん蒸しては保存用のパレットに移していく。
(熱い蒸気も魔法で楽ちんですよ。女神様に感謝だ。
当然、夜のために味見はしなくてはならない(もちろん名目である)ので、蒸したウナーギをいくつか炭をおこしておいたウナギ焼き器に並べ焼いていく。タレ壺に沈めては焼き、そして沈めては焼く。
周辺にウナーギとタレの焼ける香ばしい匂いが広がって行く。
「ハルカ、匂いがすげーヤバい。腹へってきたぞ」
「ウナーギ、まさか自分だけ食べるつもりじゃないよな?」
「アタシ達も食べさせてくれるわよね?」
やけに串打ちがうまくなってたクライン達が(大量にあるので必然的にみんな早く上手くなっているのだが)、串を打ちながらハルカに呼び掛けた。
「えーと、今夜の晩ごはんにする予定なので、今食べない方がいいと思うよ?お昼ご飯もお弁当作ってきたし。」
「食べたいなう」
「なうなう」
「なうー」
「……なう……」
「……分かった。じゃ味見程度にしといてね。夜ご飯の時に食べ飽きると残念だから」
ハルカは焼きたての蒲焼きをカットして、みんなの口に放り込んで行く。
「……あれ?泥臭くないし固くない……うわあ美味しいっ!」
「やだ身がフワッと無くなる位柔らかいじゃないケルヴィン。うーん、ご飯に絶対合うわね。とっても香ばしくて美味しいわあ~」
「あのにょろにょろがこれほどの味とは……」
「……ハルカ、夜は俺様大量に食べたい。ウナーギも飯も増し増しで頼む」
《ワシは飯少な目でウナーギ多めな。いやぁ、ウナーギってこんなに美味いもんなんじゃのう。驚いた。またタレが合うのう》
「いや、これはちゃんとヌメヌメ取って内臓取って、と下処理しないで焼くと不味くて固くて食べられないわよ。下処理したら直接焼いてもいいんだけど、蒸した方が柔らかくなって個人的にはより美味しいので蒸してるだけ」
暫くはこの蒸した状態で保存して、店の外で別途焼き場作ってタレつけて焼けば、匂いでお客さんホイホイするに違いない。食堂は大儲けだ。わはははは。
「…………頑張って早く串打ち終わらせてお弁当食べたい……」
「がんばれー。一番早く終わった人はウナーギ蒲焼き1枚付けるよー」
ハルカが言うと、串打ちをしていた面々が加速装置をつけたように早まった。
食べられないので淡々と作業をするトラを見ながら、可哀想だから焼く時のハッピをプレゼントしてあげようとハルカは誓うのであった。
ハルカのテンションがやけに高め安定のまま、本日はウナーギ討伐である。
ハルカは朝早くからいそいそと弁当を作っているかと思ったら、トラを呼んでマイホーム予定地と改装中の店舗の方へ差し入れを持って行って貰うよう頼んでいる。
足とするのはラウールが牽引する馬車ならぬ『犬車(狼車?)』である。
幅の狭い荷車をラウールに皮バンドで繋いでいる。
本日の差し入れは皆が喜んでくれそうなので焼き肉丼と冷緑茶にした。
荷物を時間経過なしの携帯用アイテムボックスに入れ、荷車に乗せる。手綱を持ったトラに
《振り落とされるなよ》
と言うと、結構な早さで土埃を巻き上げてカラカラカラカラと消えていった。
ハルカが今度は討伐組の弁当を作ろうとして厨房に戻ると、
『急いで帰るので待ってて下さいね』
とメモ書きがテーブルに置いてあった。
(トラちゃんは魔物の肉を捌くの上手いから勿論待ってるわよ)
ハルカは自分でも昨夜ネット通販でウナギの捌き方の本を取り寄せて熟読した。
ウナギは血と内臓は毒があるらしいので気を付けないといけないが、血は焼いてあれば大丈夫らしい。
後はヌメりを取って蒸し焼きにしてタレつけて焼けば、日本では夏バテ予防にもなる高級食「天然ウナギの蒲焼き」の出来上がりだ。
ヤマーモといい、なんか呼び方が似てるものも結構あるのでウナーギは絶対ウナギである、とハルカは断定した。
いやそうであって欲しい。
あっちの生涯で一度しか天然ウナギを食べたことは無いが(高いので外国産が限界だった)、涙が出るほど美味しかった。
蒲焼き考えた人は天才だ。なぜあのにょろにょろを蒸して焼こうと思ったのか。いや最初はぶつ切りにして焼いた筈だ。そこでゴムみたいな食感と泥臭さを味わって美味しく味わう道を諦めなかった事に敬意を称したい。
びば料理人。びば食いしん坊。
その後1週間はもやし炒め乗せご飯だったが、あれは食べられて最高に幸せだったので良いのである。
ハルカは今まで食べた食べ物の味は大概忘れない。あっちの世界で長時間並んで不味かったモノに大枚払った時は、己の判断不足と失われた時間に歯ぎしりした。有名な店だろうと自分の舌の判断が全てである。グルメとかいうハイソな響きのものではない。突き詰めると、
【自分が美味しいと思うモノが食べたい】
だけなのである。それを皆が美味しいと言ってくれれば尚更良い。
(もしウナギだったら、原価タダだし……ふふふふふっ。食堂でお手頃価格で提供出来るじゃないの。みんな不味くて食べないとか言ってたから、ただの『蒲焼き丼』とかにすればいいか。ウナーギとかつけたら食べてくれないかも知れないもんね。食べてひれ伏すが良いあの美味さに。わはははは)
ハルカの頭の中では既に晩飯はうな重に決めていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ひえええええーーーっ!」
川にはウナーギが本当に大量にいた。ハルカの予想通りのウナギである。養殖場かと思うくらい川面でにょろにょろしていた。
Butしかし、いくら大きいといっても限度がある。
Aランクのウナーギは体長10メートル、胴体もハルカが抱き抱えるギリのサイズだ。1メートル位はあるだろうか。
大蛇か。
それも当然ヌメヌメでうまく掴めない。その上刃物の攻撃もヌメヌメのせいで防御されるのか表面を傷つけるくらいがせいぜいだ。
ケルヴィンが言うには、「攻撃力が高くてAランクなんじゃなく、扱いづらいからAランク認定」なんだそうだ。なるほど納得。攻撃も大したことないもんね。
「一番早いのは火魔法で燃やすことなんだけーー」
「却下です!美味しく食べられなくなります。肉に毒が回るので内臓は傷をつけたらいけません」
ケルヴィンの提案にハルカは食い気味に返す。
「イヤ~やっぱりキモい~っ!」
小さいウナーギと大きいウナーギにまとわりつかれて締め付けられてる、らしいのだが何しろヌメヌメなので、でろーん、でろーんと巻きつかれた側から押し出されて地面に放り出されるミリアンが、泣き言を言っている。
「ウナーギの攻撃力ショボいでしょーミリアーン!」
「体は平気でもメンタルに来るのよー!」
「俺もイヤだーーーーーっ!生臭ーーい!」
まとわりつく小さなウナーギをぺしっと払い落としてクラインが叫ぶ。
プルも不気味がってふわふわと飛んで長い取っ手をつけた網で小さいウナーギを掬ってはテンの持つ魚籠に放り込んでいる。
ラウールはでかいウナーギと戦っているが、内臓は傷つけるなと言われて攻めどころを見つけられない。
トラは頭に大事な通販用のPC詰んでるので、捌くときしか近寄る事が出来ない。
辛うじてケルヴィンさんがAランクのウナーギを1体仕留めたが、あと9体いる。小さいウナーギは山のよう。
ハルカは、うーんこのままだとラチがあかんな、と精霊さんズを呼ぶ。
「精霊さんズ、ウナーギを傷つけずにサクッと捕獲したいんだけど、こうゆうの出来る?」
現れた精霊さん達とひそひそ話をしている。
「……雨みたいな感じでいいの?」
「そのあと……で?」
「局地的豪雨みたいな感じで。10秒位でいいの」
「……は暫くやるのね?分かったー」
「ハルカ、アイスクリーム皆に大好評だったからあれの違う味もあったらお願いね」
話し合いが終わり、ハルカは皆に声を掛ける。
「はーい注目ー。みんなー、でかいのが邪魔だからそれから先に片づけるよー。合図したら危ないからみんなウナーギから少し離れてねー火傷するから」
3、2、1、GO!!
皆がパッとウナーギから離れて走る。飛んでく。
そこへ熱湯のシャワーが空から魔法でざばーっと降り注ぐ。でかいウナーギが熱さでうねうねするが、白濁したゼリーみたいなのを体にまとうようになった。
すぐに今度は氷のように冷たい雨がざばざば降り注ぐ。
熱湯で弱ったウナーギが全く動かなくなった。
精霊さんズが片っ端から白濁したゼリーのようなものを魔法で取っ払い、背開きにして内臓と中骨を取り水洗いした後、適当な大きさに切り分ける。
元が大きいので、更に小さく丼用に切って串を刺すのはトラとクライン達に渡してやってもらう事にした。
「……あ、ヌメヌメがなくなった。これならナイフが使えるな」
「ほんとね、そんなに気持ち悪くないわ」
「僕は食材を切るのは得意です。内臓は注意して下さいよー」
クライン達がホッとした様子で作業を始める。
でかいのは全て解体したので、後は小さいウナーギ達なのだが、でかいのだけで相当な量になるので、プルが魚籠に放り込んでたのに足す形で放り込み、同様の下処理をした。小さいのは楽チンである。
足りなくなればまた取りに来ればいい。
ついでにAランクのウナーギを倒した際に出た魔石も回収した。
「身が締まってて美味しそうだわ……」
ハルカはヨダレがこぼれ落ちそうになったが、乙女としてそこまで堕ちたらいけないと必死で耐えた。
「ありがとうね精霊さんズ。これ約束のもの。チョコレート味とバニラ味ね。今度違うのも作っておくね」
アイテムボックスからアイスクリームを入れたケースを2つ取り出すと、作業を終えた精霊さん達に手渡した。
ついでにアイスクリームにつけて食べると美味しいよとウエハースもつけた。
「ありがとうハルカ♪またみんなでアイスクリームパーティーするわ」
「精霊使いが荒いけど、報酬は太っ腹だからいい上司」
「あー、仕事で疲れた時には甘いものよねぇー」
あっちの世界の会社員みたいなことを言いながら精霊さんズは戻って行った。
アイテムボックスから寸胴を出したハルカは、頭と骨を焼いて粉々にして入れ、醤油やみりん、砂糖や酒などを入れ早速かば焼きのタレ作りを始めた。アイテムボックスには山椒も入っている。
ついでに皮にも縮まないよう切れ目を入れ、昨日ネット通販で買い込んだウナギ焼き器(炭を入れて焼くアレ。10万円台だった。高いが経費で落とす気満々だ!)とタレ壺を出した。
まず小さいウナーギの方をどんどん串に刺し、別の鍋も出してどんどん蒸しては保存用のパレットに移していく。
(熱い蒸気も魔法で楽ちんですよ。女神様に感謝だ。
当然、夜のために味見はしなくてはならない(もちろん名目である)ので、蒸したウナーギをいくつか炭をおこしておいたウナギ焼き器に並べ焼いていく。タレ壺に沈めては焼き、そして沈めては焼く。
周辺にウナーギとタレの焼ける香ばしい匂いが広がって行く。
「ハルカ、匂いがすげーヤバい。腹へってきたぞ」
「ウナーギ、まさか自分だけ食べるつもりじゃないよな?」
「アタシ達も食べさせてくれるわよね?」
やけに串打ちがうまくなってたクライン達が(大量にあるので必然的にみんな早く上手くなっているのだが)、串を打ちながらハルカに呼び掛けた。
「えーと、今夜の晩ごはんにする予定なので、今食べない方がいいと思うよ?お昼ご飯もお弁当作ってきたし。」
「食べたいなう」
「なうなう」
「なうー」
「……なう……」
「……分かった。じゃ味見程度にしといてね。夜ご飯の時に食べ飽きると残念だから」
ハルカは焼きたての蒲焼きをカットして、みんなの口に放り込んで行く。
「……あれ?泥臭くないし固くない……うわあ美味しいっ!」
「やだ身がフワッと無くなる位柔らかいじゃないケルヴィン。うーん、ご飯に絶対合うわね。とっても香ばしくて美味しいわあ~」
「あのにょろにょろがこれほどの味とは……」
「……ハルカ、夜は俺様大量に食べたい。ウナーギも飯も増し増しで頼む」
《ワシは飯少な目でウナーギ多めな。いやぁ、ウナーギってこんなに美味いもんなんじゃのう。驚いた。またタレが合うのう》
「いや、これはちゃんとヌメヌメ取って内臓取って、と下処理しないで焼くと不味くて固くて食べられないわよ。下処理したら直接焼いてもいいんだけど、蒸した方が柔らかくなって個人的にはより美味しいので蒸してるだけ」
暫くはこの蒸した状態で保存して、店の外で別途焼き場作ってタレつけて焼けば、匂いでお客さんホイホイするに違いない。食堂は大儲けだ。わはははは。
「…………頑張って早く串打ち終わらせてお弁当食べたい……」
「がんばれー。一番早く終わった人はウナーギ蒲焼き1枚付けるよー」
ハルカが言うと、串打ちをしていた面々が加速装置をつけたように早まった。
食べられないので淡々と作業をするトラを見ながら、可哀想だから焼く時のハッピをプレゼントしてあげようとハルカは誓うのであった。
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