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商売繁盛
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「ありがとうございましたー」
ようやく途切れたお客さんを見送り、私はホッと息を吐いて汗を拭った。
流石に城下町の大きな祭りと言うだけあって、元々の住民に加えて地方から訪れる家族連れやカップルなどがどっと増え、町の人口が一気に何倍にもなったかのような人の群れである。
少し早く開けた方がいいかも知れないよ、と言う近場のワゴンの主の勧めで朝の八時頃からと早めに販売を始めたが、試食品を用意しておいたのと、
「ヘルシースイーツ」
と言うのは男女問わず惹かれる言葉だったらしい。
試食をつまんだ人が意外そうな顔をして、
「あら、ヘルシーって言うからポソポソした味気ないものを想像していたけど、ちゃんと甘みもあって美味しいじゃない」
「あ、これなら俺でも食えるなあ」
「ねえ、フルーツの入っているパウンドケーキもラムが効いてて、しっとりして美味しいわよ!」
などと嬉しくなる感想をもらえた。
「甘い物は疲れた時にはいいんですけど、食べ過ぎると太ったり健康に影響出やすいものですからね。これからのことを考えて、少しでもカロリーを抑えた方が良いですものねー」
販売のバイトをしていた頃を思い出しながら営業トークをしていると、自分でも引くほど売れた。
遠くに住んでいる人は友人や知人に、とまとめて買って行くので思った以上に在庫の減りが早い。
「おやトウコ、大繁盛だねえ! 私たちの分は残ってるかい?」
ケヴィンの母キャスリーンとケヴィンがパフを連れて顔を見せに来た時には救いの神に見えた。
「ケヴィンさん、キャスリーンおば様、良いところに! すみませんが十分ほどお店を見てて頂けないですか? ちょっと考えていたより売れ行きが早くて、自宅に戻って在庫取りに行きたいんです。値段は表に出してある通りですから」
「はいよ、任せておきな! 急がなくていいよ。ケヴィン、あんたも荷物運びに協力してきな。だてに筋肉ついてないだろう? はあいいらっしゃいませ~。お客さん、ここのお菓子は甘さ控えめでとっても美味しいんですよ~♪ ほら試食もあるんで食べて見て下さいよ」
パフの収まっているかごを横にそっと置くと、キャスリーンは手慣れた様子でお客さんの対応を始めた。任せて安心、接客業のプロである。
私とケヴィンは急いでカフェに戻る。
「ケヴィンさんもありがとうございます。助かりました」
「気にするな。友人なんだから助け合わなきゃな」
お菓子やパウンドケーキの入った大きな袋を三つも抱えさせているのに、何でもないように笑顔で返してくれるケヴィンには頭が上がらない。
ついでに食べる暇もなかったのでケヴィンと作ってあったサンドイッチをつまみ、トイレも済ませたので三十分ほど掛かったが、ワゴンのところまで戻ると八割がた品物が売れてしまっていた。
「お帰り! いやあ祭りで人出が多いとはいえ、大したもんだよねえ。これでカフェにもお客さん増えたらと万々歳だね」
「キャスリーンおば様が商売上手だからですよ。きっと合わせてこれも、とか言って買う予定がなかったものも売って下さったんでしょう? ふふふっ」
「おやバレたかい? でもみんな試食して美味しいって言って買って下さったんだ。文句はないだろうよ。それに遠出して来てたら改めて買いに来るのは大変だしね」
「ともかくありがとうございます。後日改めてお礼するとしても、うちの品物、お口に合うか分かりませんが、良かったら持って行って下さい」
私が持って来た品物からいくつか袋に入れて渡すと、キャスリーンは嬉しそうに笑顔を見せた。
「悪いねえ、ちっと手伝っただけなのにさ。でもほら、店の人間が試食のものに手を出すのはマズいだろう? だからお客さんが美味しい美味しいって言うのを見て指加えて見てるしかなかったからね。楽しみだよ。帰ったら早速おやつに頂こうかねえ……ってあら、パフはどこ行ったのかしら?」
私もパフが入っていたかごを見た。もぬけの殻だ。ナイトの姿もない。
「あ、慌ててて伝えるの忘れてましたすみません! ナイトがパフのたまの外出の機会だから遊んであげたいからケヴィンさんとキャスリーンおば様に伝えといてと伝言されてたんです。危ないこともしないし、誰かにいじめられないようにするって断言してましたから、ナイトが一緒なら問題はないと思います。本当にごめんなさい! ……でも遠くまでは行かないでしょうし、一区切りついたら私も今日は店を閉めるので、後でナイト探しておば様の家までパフを連れて行きますね」
「何だ、そうだったのかい。やっぱり一人だと寂しいのかねえパフも。まあナイトが一緒なら安心だよね。それじゃ申し訳ないけどパフを頼むね」
キャスリーンとケヴィンは怒りもせずにまたね、と祭りの散策に戻って行った。
(ナイトったらもう! ……いや、元々は私が急いでて伝えるの忘れてたんだし、ナイトは事前に言ってたんだからこれは完全に私が悪いわ。ナイトを怒るのは筋違いだよね)
品物を袋詰めしてお客さんに渡しながら、私は反省していた。
午後三時を少し回り、本日売る分が全部無くなったので、少し早いが私は店じまいをすることにした。まだナイトもパフも戻って来ていない。
まったくあの子たちはどこまで行っているのやら。パフも久しぶりの外を堪能してるのかな。
キャスリーンおば様に約束もしているので、私はナイトたちを探すためワゴンをカフェに持ち帰ると改めて大通りに戻ることにした。
ようやく途切れたお客さんを見送り、私はホッと息を吐いて汗を拭った。
流石に城下町の大きな祭りと言うだけあって、元々の住民に加えて地方から訪れる家族連れやカップルなどがどっと増え、町の人口が一気に何倍にもなったかのような人の群れである。
少し早く開けた方がいいかも知れないよ、と言う近場のワゴンの主の勧めで朝の八時頃からと早めに販売を始めたが、試食品を用意しておいたのと、
「ヘルシースイーツ」
と言うのは男女問わず惹かれる言葉だったらしい。
試食をつまんだ人が意外そうな顔をして、
「あら、ヘルシーって言うからポソポソした味気ないものを想像していたけど、ちゃんと甘みもあって美味しいじゃない」
「あ、これなら俺でも食えるなあ」
「ねえ、フルーツの入っているパウンドケーキもラムが効いてて、しっとりして美味しいわよ!」
などと嬉しくなる感想をもらえた。
「甘い物は疲れた時にはいいんですけど、食べ過ぎると太ったり健康に影響出やすいものですからね。これからのことを考えて、少しでもカロリーを抑えた方が良いですものねー」
販売のバイトをしていた頃を思い出しながら営業トークをしていると、自分でも引くほど売れた。
遠くに住んでいる人は友人や知人に、とまとめて買って行くので思った以上に在庫の減りが早い。
「おやトウコ、大繁盛だねえ! 私たちの分は残ってるかい?」
ケヴィンの母キャスリーンとケヴィンがパフを連れて顔を見せに来た時には救いの神に見えた。
「ケヴィンさん、キャスリーンおば様、良いところに! すみませんが十分ほどお店を見てて頂けないですか? ちょっと考えていたより売れ行きが早くて、自宅に戻って在庫取りに行きたいんです。値段は表に出してある通りですから」
「はいよ、任せておきな! 急がなくていいよ。ケヴィン、あんたも荷物運びに協力してきな。だてに筋肉ついてないだろう? はあいいらっしゃいませ~。お客さん、ここのお菓子は甘さ控えめでとっても美味しいんですよ~♪ ほら試食もあるんで食べて見て下さいよ」
パフの収まっているかごを横にそっと置くと、キャスリーンは手慣れた様子でお客さんの対応を始めた。任せて安心、接客業のプロである。
私とケヴィンは急いでカフェに戻る。
「ケヴィンさんもありがとうございます。助かりました」
「気にするな。友人なんだから助け合わなきゃな」
お菓子やパウンドケーキの入った大きな袋を三つも抱えさせているのに、何でもないように笑顔で返してくれるケヴィンには頭が上がらない。
ついでに食べる暇もなかったのでケヴィンと作ってあったサンドイッチをつまみ、トイレも済ませたので三十分ほど掛かったが、ワゴンのところまで戻ると八割がた品物が売れてしまっていた。
「お帰り! いやあ祭りで人出が多いとはいえ、大したもんだよねえ。これでカフェにもお客さん増えたらと万々歳だね」
「キャスリーンおば様が商売上手だからですよ。きっと合わせてこれも、とか言って買う予定がなかったものも売って下さったんでしょう? ふふふっ」
「おやバレたかい? でもみんな試食して美味しいって言って買って下さったんだ。文句はないだろうよ。それに遠出して来てたら改めて買いに来るのは大変だしね」
「ともかくありがとうございます。後日改めてお礼するとしても、うちの品物、お口に合うか分かりませんが、良かったら持って行って下さい」
私が持って来た品物からいくつか袋に入れて渡すと、キャスリーンは嬉しそうに笑顔を見せた。
「悪いねえ、ちっと手伝っただけなのにさ。でもほら、店の人間が試食のものに手を出すのはマズいだろう? だからお客さんが美味しい美味しいって言うのを見て指加えて見てるしかなかったからね。楽しみだよ。帰ったら早速おやつに頂こうかねえ……ってあら、パフはどこ行ったのかしら?」
私もパフが入っていたかごを見た。もぬけの殻だ。ナイトの姿もない。
「あ、慌ててて伝えるの忘れてましたすみません! ナイトがパフのたまの外出の機会だから遊んであげたいからケヴィンさんとキャスリーンおば様に伝えといてと伝言されてたんです。危ないこともしないし、誰かにいじめられないようにするって断言してましたから、ナイトが一緒なら問題はないと思います。本当にごめんなさい! ……でも遠くまでは行かないでしょうし、一区切りついたら私も今日は店を閉めるので、後でナイト探しておば様の家までパフを連れて行きますね」
「何だ、そうだったのかい。やっぱり一人だと寂しいのかねえパフも。まあナイトが一緒なら安心だよね。それじゃ申し訳ないけどパフを頼むね」
キャスリーンとケヴィンは怒りもせずにまたね、と祭りの散策に戻って行った。
(ナイトったらもう! ……いや、元々は私が急いでて伝えるの忘れてたんだし、ナイトは事前に言ってたんだからこれは完全に私が悪いわ。ナイトを怒るのは筋違いだよね)
品物を袋詰めしてお客さんに渡しながら、私は反省していた。
午後三時を少し回り、本日売る分が全部無くなったので、少し早いが私は店じまいをすることにした。まだナイトもパフも戻って来ていない。
まったくあの子たちはどこまで行っているのやら。パフも久しぶりの外を堪能してるのかな。
キャスリーンおば様に約束もしているので、私はナイトたちを探すためワゴンをカフェに持ち帰ると改めて大通りに戻ることにした。
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