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のどかなハイキング
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ケヴィンと直属の騎士団の皆さんも物々しくならないよう人数を絞って総勢六名。ジュリアン王子とニーナ姫、私、ナイト、そのお友だちを併せて九人プラス八匹の集団は、すぐ近くの山へハイキングに出掛けた。山と言っても、標高五百メートルほどの小さな山である。
絞ったと言うわりには割に結構な大所帯だ。
まあ家族連れが二組とか一緒にお出掛けすればこんな人数にはなると思うが、流石に猫は多いかも知れない。少なくとも町中ではとても目立つ。
ナイトにそう告げると、
『まあこれだけ集まってたら目立つよなあ。んじゃ山の入り口に現地集合ってことで、町中ではちっと適当に散歩しながらついてきてもらうよ』
周囲のお友だちにニャゴニャゴとナイトが言うと、了解といった感じで「にゃーお」と鳴いて皆が散って行った。申し訳ないのと迷子にならないのか心配だったが、
『トウコ、お前猫の嗅覚バカにしてんのか? 犬とたいして変わらんぞ。俺の匂いやトウコの匂いなんて遠くからでも分かるっつうの!』
「そっか。ごめんね」
『……でもまあ燻製の匂いの方が強いかもしんないけどな』
食い意地が張っているということですかそうですか。
どちらにせよちゃんとついて来られるなら一安心だ。ジュリアン王子もニーナ姫も最初は猫まみれでご満悦だったのが急にナイトだけになって寂しそうだったが、町を出て山に入る頃合流すると言ったらニーナ姫は笑顔が戻った。ジュリアン王子は口元だけ少し緩んでいるだけだったが、これでもかなりご機嫌な方ではないかと思う。
案の定、彼は山に入る時に集まって来た猫たちを見て私に、
「……おやつはまだダメなのか?」
とソワソワと小声で聞いて来たぐらいだ。
「ダメです。ランチの時に一緒です」
「そうか……」
少し残念そうな顔をしたが、一緒に山道を多くの猫と歩いているだけでも楽しいらしく、ナイトと色々と話しながら足取りも軽く登っている。当然通訳は私だ。
「見て! 兄様、葉っぱが赤く色づいているのもあって素敵だわ!」
「ああ、そうだな」
のんびりとした空気の中、周囲の自然の景色を見ながら歩くのは私にとっても良い気分転換だ。
『なあトウコ、ちっと疲れたから抱っこしてくれよ。あ、王子様かお姫様でもいいぞ』
「……と言ってますがどうしますか? 服が汚れてしまうと思いますが」
「構わない。私が抱っこする」
「ちょっと兄様、私だって別に汚れても良い服着てるんだから!」
「女性の服が汚れるよりは私の方が良いだろう」
そういうと腰を下ろしてナイトを抱き上げた。
ずるい、と文句を言うニーナ姫に、ナイトが連れの奴らも抱っこして欲しいらしいと言っていると伝えると、いそいそと近くの白に黒ぶちの子を抱き上げた。一番小さな子だったからより疲れていたのかも知れない。目が糸のように細くなって、ニーナ姫に撫でられゴロゴロと喉を鳴らしている。
「ほら、あなたたちも他の子たちを抱っこして上げてちょうだい。まだ頂上まで結構あるんでしょう?」
ニーナ姫は護衛の騎士にそう告げると、抱き上げた黒ぶちの子を撫でながら歩き出した。
ケヴィンもパフが家族に加わったため、猫への愛着も増したそうだ。
「ほら、来いよ」
と一番おデブな猫を軽々と抱き上げ、それにつられて他の騎士たちも一匹ずつ抱き上げる。
人が九人、猫は八匹。
おい、私にはモフモフの温もりがないのはどういうことだ。
……まあジュリアン王子たちがご機嫌が良いのなら何よりだし、私は家で好きなだけモフらせてもらえるから良いかな。
私は気持ちを切り替えて山頂へ向かった。
絞ったと言うわりには割に結構な大所帯だ。
まあ家族連れが二組とか一緒にお出掛けすればこんな人数にはなると思うが、流石に猫は多いかも知れない。少なくとも町中ではとても目立つ。
ナイトにそう告げると、
『まあこれだけ集まってたら目立つよなあ。んじゃ山の入り口に現地集合ってことで、町中ではちっと適当に散歩しながらついてきてもらうよ』
周囲のお友だちにニャゴニャゴとナイトが言うと、了解といった感じで「にゃーお」と鳴いて皆が散って行った。申し訳ないのと迷子にならないのか心配だったが、
『トウコ、お前猫の嗅覚バカにしてんのか? 犬とたいして変わらんぞ。俺の匂いやトウコの匂いなんて遠くからでも分かるっつうの!』
「そっか。ごめんね」
『……でもまあ燻製の匂いの方が強いかもしんないけどな』
食い意地が張っているということですかそうですか。
どちらにせよちゃんとついて来られるなら一安心だ。ジュリアン王子もニーナ姫も最初は猫まみれでご満悦だったのが急にナイトだけになって寂しそうだったが、町を出て山に入る頃合流すると言ったらニーナ姫は笑顔が戻った。ジュリアン王子は口元だけ少し緩んでいるだけだったが、これでもかなりご機嫌な方ではないかと思う。
案の定、彼は山に入る時に集まって来た猫たちを見て私に、
「……おやつはまだダメなのか?」
とソワソワと小声で聞いて来たぐらいだ。
「ダメです。ランチの時に一緒です」
「そうか……」
少し残念そうな顔をしたが、一緒に山道を多くの猫と歩いているだけでも楽しいらしく、ナイトと色々と話しながら足取りも軽く登っている。当然通訳は私だ。
「見て! 兄様、葉っぱが赤く色づいているのもあって素敵だわ!」
「ああ、そうだな」
のんびりとした空気の中、周囲の自然の景色を見ながら歩くのは私にとっても良い気分転換だ。
『なあトウコ、ちっと疲れたから抱っこしてくれよ。あ、王子様かお姫様でもいいぞ』
「……と言ってますがどうしますか? 服が汚れてしまうと思いますが」
「構わない。私が抱っこする」
「ちょっと兄様、私だって別に汚れても良い服着てるんだから!」
「女性の服が汚れるよりは私の方が良いだろう」
そういうと腰を下ろしてナイトを抱き上げた。
ずるい、と文句を言うニーナ姫に、ナイトが連れの奴らも抱っこして欲しいらしいと言っていると伝えると、いそいそと近くの白に黒ぶちの子を抱き上げた。一番小さな子だったからより疲れていたのかも知れない。目が糸のように細くなって、ニーナ姫に撫でられゴロゴロと喉を鳴らしている。
「ほら、あなたたちも他の子たちを抱っこして上げてちょうだい。まだ頂上まで結構あるんでしょう?」
ニーナ姫は護衛の騎士にそう告げると、抱き上げた黒ぶちの子を撫でながら歩き出した。
ケヴィンもパフが家族に加わったため、猫への愛着も増したそうだ。
「ほら、来いよ」
と一番おデブな猫を軽々と抱き上げ、それにつられて他の騎士たちも一匹ずつ抱き上げる。
人が九人、猫は八匹。
おい、私にはモフモフの温もりがないのはどういうことだ。
……まあジュリアン王子たちがご機嫌が良いのなら何よりだし、私は家で好きなだけモフらせてもらえるから良いかな。
私は気持ちを切り替えて山頂へ向かった。
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