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屋外の食事って気持ち良い
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「ケヴィンさん、今日はお世話になります……」
私は騎士団長のケヴィンの前で頭を下げた。
案の定と言うか、多分断らないだろうなあと思っていたのだけど、ナイトがジュリアン王子とニーナ姫のところで可愛さアピールをしまくり、二人ともデレデレしていた時に通訳と言う形で私が、
「──あのう、ナイトがですね、お二人と町にある大きな公園でのんびりとピクニックしたいと申しておりますが、ご都合はいかがでしょうか? 騎士団長のケヴィンさんに警備同行の了承も得てるようなのですが……」
とさりげなく聞いたところ、即答のような形で承諾された。
現在、ジュリアン王子もニーナ姫も町の若者の普段着のような恰好でご機嫌である。まあジュリアン王子の場合は無表情なので、歩みが早いとかあちこちに視線を移しているぐらいでしか判断出来ないが、少なくとも嫌がっている様子はない。
「いや、ナイトから手紙を受け取った時に、トウコも俺たちの国のことを色々考えてくれてるんだなと思って嬉しかったし、王族を守るのは俺たちの責務だからな」
小声で囁くと楽しそうに笑顔を見せた。
最初に会った時には彼も黒髪だと思っていたのだが、良く見たら濃いこげ茶色だったようで、癖のない髪が風になびいて光に透けたことで判明した。
ニーナ姫が黒髪の人は少ないと言っていたけど、私みたいな日本人に多い純粋な黒髪という人は本当に少ないのかも知れない。まあ薄々は感じていたけどね。町で買い物してても割と視線が向けられることが多いんだもの。こんなごく普通の顔した平凡な人間なのになあ。ちょっとケヴィンに仲間意識持っていたのにこげ茶だったか。ま、どちらにしても彼も一八〇センチは優に超える体格の良いイケメンである。彼一人の同行とは言え、ナイトはかなり強い兄さんだよと言っていた。そりゃ騎士団長だしね。ボディーガードとしてはかなり安心出来る。
町の公園とは言ったが、団地とかにあるようなブランコと砂場ぐらいしかないようなところではなく、日本で言うところの新宿御苑とか昭和記念公園みたいな本当に大きなところで、私もそばを通り過ぎたことはあるが中に入るのは初めてだ。
「ふわあ……」
森のように大きな木があちこちにあり、芝生では子供たちが追いかけっこをして遊んでいたり、レトリバーのような犬種の犬に飼い主がボールを投げては取って来させたりしている。
壺を持った女性の像から湧き出している噴水の周囲にはベンチがあって、ご年配の夫婦やカップルが座って笑顔で会話をしている。のどかな空気が漂っていて良い場所だなあ、と感じた。
「……あら? ナイトがいないわ」
散策しつつ、ピクニックシートを広げる場所を探していると、ニーナ姫が声を上げる。
「あ、私がおやつを持って行く話をしたら、仲間にも分けてあげて欲しいから連れて来るって話になってまして、今呼びに行っているところです」
「まあ! それじゃ、ナイト以外の猫とも会えるの? 楽しみだわあ」
ポン、と手を叩いてはしゃぐニーナ姫と、それを聞いてソワソワが止まらないジュリアン王子。本当に好きなんですねあなた方。
歩いているうちに丁度いい感じに人気も少ない、大きな木があったので、この辺りにしましょうかと木陰に大きな布のシートを広げる。
ケヴィンが持ってくれていたバスケットと飲み物の入った水筒を受け取る。
「ジュリアン様、ニーナ様、そしてケヴィンさん。お口に合うか分かりませんが、私が作ったランチです。後でナイトが友だちを連れて来るでしょうから、騒がしくなる前にすませてしまいましょうか」
「え? 俺、いや私もですか? 仕事中ですし、ジュリアン様とニーナ様がおられる場所でご一緒するのは流石に不敬かと……」
ケヴィンが慌てる。
「何を言ってるんですか。仕事だからこそ空腹で働いてたらダメでしょう? それに、そんなこと言ったらピクニックに来た意味ないですし、私だって王族と一緒には食べられないじゃないですか」
「……そうだぞ。問題ない」
私の言葉を後押しするようにジュリアン王子が反応した。
「今の私たちはお忍びで平民と同じ格好をしているのよ? ケヴィンが護衛のように横で突っ立ってたらむしろ目立ってしまうわ。ほら、良いから一緒に食べましょうよ。私もお腹が空いたわ」
少し口を尖らせたニーナ姫がケヴィンを引っ張る。
「──はい、それでは申し訳ありませんがご一緒させて頂きます」
少し躊躇したが、言われてみたらその通りだと思ったのかシートに腰を下ろした。
「それじゃ、ケヴィンさんは飲み物を入れて下さいね。私はランチの準備をします」
「ああ」
私はバスケットから蒸し鶏をマスタードとマヨネーズで合えてトマトとレタスで挟んだサンドイッチ、鳥のから揚げにポテトフライ、炒めたソーセージなどの入ったランチボックスを取り出した。
おしぼりも一人一人が使えるように渡す。
「簡単なものばかりですが、おかずはピックで刺して食べて下さい」
「まあトウコ! あなたって何でも出来るのね! とっても美味しそうだわ」
ニーナ姫がサンドイッチを一つ取ると一口食べて笑顔になる。
「マスタードがアクセントになっていて美味しい! それに緑の多い公園で景色を眺めながら食べるのって開放的でより美味しく感じるわね」
「家族で家事は分担してましたので、それなりに出来るだけです。大した手間も掛けておりませんし。でも確かに屋外で飲食するのって、何故か気持ち良いですよねえ」
「……うまい」
「トウコは器用だな」
ジュリアン王子とケヴィンも黙々と食べ始め、それぞれ褒めてくれる。ほぼ和えただけ、焼いただけ、揚げただけなので、正直料理と言えるものではなく、むしろ恥ずかしいのだけど。
のんびりと食事を済ませて片付けていると、ナイトが友だちを引き連れて戻って来た。長毛種の白い猫やらキジトラ、三毛猫、ハチワレなど様々な種がなんと七匹もいる。
『本当はもっといるんだけど、あんまり沢山連れて来ても困るだろうと思ってよ。こっちで一番最初に仲良くしてくれた奴らなんだ』
いやいや充分多いよ。ナイトは社交的なんだなあ。
「初めまして。トウコと言います。ナイトがいつもお世話になってます。これからも仲良くしてちょうだいね。ささ、良かったらどうぞ」
私は自分のバッグから鳥のジャーキーを取り出すと、一匹一匹の前に置いた。
うにゃうにゃ言いながらみんな美味しそうに食べている。ジュリアン王子もニーナ姫もいきなりの大量の猫たちに大喜びだ。幸せそうに食べる姿を眺めている。
「ナイト、これは気に入ってくれているの?」
『うん、すごく美味いってさ。トウコと一緒にいられる俺が羨ましいって』
「そっか。それじゃ食べ終わったら撫でさせてとお願いしてくれる?」
『そのぐらい当然させてくれるよ。王子様とお姫様も撫でたかったら構わねえよ。こいつら人馴れしてるし、危険がないって分かってるから』
私はジュリアン王子とニーナ姫に撫でたいか聞いたら速攻で頷いた。
「じゃあ、お願いするわ」
『オッケー』
ナイトは彼らに私の分からない猫語をにゃーにゃー言っていたが、食べ終わった順に私やジュリアン王子たちの方へ向かい、可愛く甘えだした。
「まあ……何て愛らしいの!」
ニーナ姫が頬を紅潮させて、猫たちの体を撫でては嬉しそうに声を上げている。私もナイト以外の子たちを撫でられて大満足だ。ケヴィンも嫌いじゃないらしく、自分のところに来た猫の体を撫でていたが、一番の収穫だったのは、嬉しさがMAXになったのか、ジュリアン王子の目元が緩み、口角が少し上がっていたのを見たことだった。何だかこっちまで幸せな気分になる。
猫カフェがこの国にあったら、彼は一番の常連さんになるかも知れない。
私は騎士団長のケヴィンの前で頭を下げた。
案の定と言うか、多分断らないだろうなあと思っていたのだけど、ナイトがジュリアン王子とニーナ姫のところで可愛さアピールをしまくり、二人ともデレデレしていた時に通訳と言う形で私が、
「──あのう、ナイトがですね、お二人と町にある大きな公園でのんびりとピクニックしたいと申しておりますが、ご都合はいかがでしょうか? 騎士団長のケヴィンさんに警備同行の了承も得てるようなのですが……」
とさりげなく聞いたところ、即答のような形で承諾された。
現在、ジュリアン王子もニーナ姫も町の若者の普段着のような恰好でご機嫌である。まあジュリアン王子の場合は無表情なので、歩みが早いとかあちこちに視線を移しているぐらいでしか判断出来ないが、少なくとも嫌がっている様子はない。
「いや、ナイトから手紙を受け取った時に、トウコも俺たちの国のことを色々考えてくれてるんだなと思って嬉しかったし、王族を守るのは俺たちの責務だからな」
小声で囁くと楽しそうに笑顔を見せた。
最初に会った時には彼も黒髪だと思っていたのだが、良く見たら濃いこげ茶色だったようで、癖のない髪が風になびいて光に透けたことで判明した。
ニーナ姫が黒髪の人は少ないと言っていたけど、私みたいな日本人に多い純粋な黒髪という人は本当に少ないのかも知れない。まあ薄々は感じていたけどね。町で買い物してても割と視線が向けられることが多いんだもの。こんなごく普通の顔した平凡な人間なのになあ。ちょっとケヴィンに仲間意識持っていたのにこげ茶だったか。ま、どちらにしても彼も一八〇センチは優に超える体格の良いイケメンである。彼一人の同行とは言え、ナイトはかなり強い兄さんだよと言っていた。そりゃ騎士団長だしね。ボディーガードとしてはかなり安心出来る。
町の公園とは言ったが、団地とかにあるようなブランコと砂場ぐらいしかないようなところではなく、日本で言うところの新宿御苑とか昭和記念公園みたいな本当に大きなところで、私もそばを通り過ぎたことはあるが中に入るのは初めてだ。
「ふわあ……」
森のように大きな木があちこちにあり、芝生では子供たちが追いかけっこをして遊んでいたり、レトリバーのような犬種の犬に飼い主がボールを投げては取って来させたりしている。
壺を持った女性の像から湧き出している噴水の周囲にはベンチがあって、ご年配の夫婦やカップルが座って笑顔で会話をしている。のどかな空気が漂っていて良い場所だなあ、と感じた。
「……あら? ナイトがいないわ」
散策しつつ、ピクニックシートを広げる場所を探していると、ニーナ姫が声を上げる。
「あ、私がおやつを持って行く話をしたら、仲間にも分けてあげて欲しいから連れて来るって話になってまして、今呼びに行っているところです」
「まあ! それじゃ、ナイト以外の猫とも会えるの? 楽しみだわあ」
ポン、と手を叩いてはしゃぐニーナ姫と、それを聞いてソワソワが止まらないジュリアン王子。本当に好きなんですねあなた方。
歩いているうちに丁度いい感じに人気も少ない、大きな木があったので、この辺りにしましょうかと木陰に大きな布のシートを広げる。
ケヴィンが持ってくれていたバスケットと飲み物の入った水筒を受け取る。
「ジュリアン様、ニーナ様、そしてケヴィンさん。お口に合うか分かりませんが、私が作ったランチです。後でナイトが友だちを連れて来るでしょうから、騒がしくなる前にすませてしまいましょうか」
「え? 俺、いや私もですか? 仕事中ですし、ジュリアン様とニーナ様がおられる場所でご一緒するのは流石に不敬かと……」
ケヴィンが慌てる。
「何を言ってるんですか。仕事だからこそ空腹で働いてたらダメでしょう? それに、そんなこと言ったらピクニックに来た意味ないですし、私だって王族と一緒には食べられないじゃないですか」
「……そうだぞ。問題ない」
私の言葉を後押しするようにジュリアン王子が反応した。
「今の私たちはお忍びで平民と同じ格好をしているのよ? ケヴィンが護衛のように横で突っ立ってたらむしろ目立ってしまうわ。ほら、良いから一緒に食べましょうよ。私もお腹が空いたわ」
少し口を尖らせたニーナ姫がケヴィンを引っ張る。
「──はい、それでは申し訳ありませんがご一緒させて頂きます」
少し躊躇したが、言われてみたらその通りだと思ったのかシートに腰を下ろした。
「それじゃ、ケヴィンさんは飲み物を入れて下さいね。私はランチの準備をします」
「ああ」
私はバスケットから蒸し鶏をマスタードとマヨネーズで合えてトマトとレタスで挟んだサンドイッチ、鳥のから揚げにポテトフライ、炒めたソーセージなどの入ったランチボックスを取り出した。
おしぼりも一人一人が使えるように渡す。
「簡単なものばかりですが、おかずはピックで刺して食べて下さい」
「まあトウコ! あなたって何でも出来るのね! とっても美味しそうだわ」
ニーナ姫がサンドイッチを一つ取ると一口食べて笑顔になる。
「マスタードがアクセントになっていて美味しい! それに緑の多い公園で景色を眺めながら食べるのって開放的でより美味しく感じるわね」
「家族で家事は分担してましたので、それなりに出来るだけです。大した手間も掛けておりませんし。でも確かに屋外で飲食するのって、何故か気持ち良いですよねえ」
「……うまい」
「トウコは器用だな」
ジュリアン王子とケヴィンも黙々と食べ始め、それぞれ褒めてくれる。ほぼ和えただけ、焼いただけ、揚げただけなので、正直料理と言えるものではなく、むしろ恥ずかしいのだけど。
のんびりと食事を済ませて片付けていると、ナイトが友だちを引き連れて戻って来た。長毛種の白い猫やらキジトラ、三毛猫、ハチワレなど様々な種がなんと七匹もいる。
『本当はもっといるんだけど、あんまり沢山連れて来ても困るだろうと思ってよ。こっちで一番最初に仲良くしてくれた奴らなんだ』
いやいや充分多いよ。ナイトは社交的なんだなあ。
「初めまして。トウコと言います。ナイトがいつもお世話になってます。これからも仲良くしてちょうだいね。ささ、良かったらどうぞ」
私は自分のバッグから鳥のジャーキーを取り出すと、一匹一匹の前に置いた。
うにゃうにゃ言いながらみんな美味しそうに食べている。ジュリアン王子もニーナ姫もいきなりの大量の猫たちに大喜びだ。幸せそうに食べる姿を眺めている。
「ナイト、これは気に入ってくれているの?」
『うん、すごく美味いってさ。トウコと一緒にいられる俺が羨ましいって』
「そっか。それじゃ食べ終わったら撫でさせてとお願いしてくれる?」
『そのぐらい当然させてくれるよ。王子様とお姫様も撫でたかったら構わねえよ。こいつら人馴れしてるし、危険がないって分かってるから』
私はジュリアン王子とニーナ姫に撫でたいか聞いたら速攻で頷いた。
「じゃあ、お願いするわ」
『オッケー』
ナイトは彼らに私の分からない猫語をにゃーにゃー言っていたが、食べ終わった順に私やジュリアン王子たちの方へ向かい、可愛く甘えだした。
「まあ……何て愛らしいの!」
ニーナ姫が頬を紅潮させて、猫たちの体を撫でては嬉しそうに声を上げている。私もナイト以外の子たちを撫でられて大満足だ。ケヴィンも嫌いじゃないらしく、自分のところに来た猫の体を撫でていたが、一番の収穫だったのは、嬉しさがMAXになったのか、ジュリアン王子の目元が緩み、口角が少し上がっていたのを見たことだった。何だかこっちまで幸せな気分になる。
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