31 / 42
お忍び【5・終】
しおりを挟む
──町から戻った後、私は執務室で変装を解いて普段の格好に着替えると、終始うつむいたままトッドから話を聞いていた。
「……私は何度も申し上げたはずですよね? バレたら困るのはルーク様だと」
「すまなかった」
「カフェでエマ様たちの話は全然聞こえない体でいて下さいね、とあれだけ忠告したにも関わらず、耳をすませて聞いていた会話に勝手に興奮して、急に立ち上がろうとするわ発言なさろうとするわ……エマ様とレイチェル様には何とかごまかせたからいいようなものですが、ベティーには気づかれましたし」
「──え?」
「え? じゃありませんよ。私が馬車に乗り込む前にベティーに呼ばれたのご存じじゃありませんか。肝が冷えたとはあのことですよ! 『わたくしに何の事前報告もなしに無茶なことをしないで下さい。エマ様は疑うことを知らない方なので良かったですが、もしご自身の感情がルーク様に駄々洩れになっていたことを知られたら、エマ様の羞恥心が爆発して大変なことになりますし、対処する羽目になるのはわたくしなのですよ』と散々怒られました」
トッドが深いため息を吐いた。
「……事前報告があれば協力もあると言うことだろうか?」
「今重要なのはそこじゃありません」
「申し訳ない。……だが、私のためにマグカップを、それもペアのマグカップを買ってくれたんだぞエマが! 嬉しくて感情が昂っても仕方ないじゃないか。毛布や枕も私のためだったし」
「そこは湧き上がる喜びに耐えて我慢するところでしょうが! 変装って意味、ちゃんと分かっておられますかルーク様?」
「──反省している」
「反省するだけならそこらの犬でも出来るんですよ。後から反省するようなことをしないでくれという話なのです。お分かりですか?」
トッドの説教は至極もっともで反論の余地もない。
だが、私に対してクールな部分をほとんど崩さないエマが、実は私を気遣い、並々ならぬ好意を抱いていると知れたことは、私の中では何よりも重要な事なのだ。
現在の私の優先順位は一にエマ二もエマ、三、四もエマで五に仕事なのだから。
「だがなトッド……私にはどうしても分からないことがあるんだ」
「何ですか?」
「エマがあれだけ自分を卑下していることがだよ」
「……それは私も感じましたが」
「三歳程度は年上のうちにも入らないと思うし、むしろゴツい私よりもエマの方が年下に見えるだろう? それに色々と欠点があると言っていたが、エマは誰よりも美人に見えるし、肉付きこそ細すぎるとは思うが、一般的にはスタイル抜群と言われる体型だ。教養もあるしマナーも完璧だ。何より性格も可愛いし、声も可愛いし、仕草も何もかも全てが可愛いだろう?」
トッドが少し引きつったような顔つきで私を見たが、私は無視して続ける。
「そんなエマが自分で欠点と言うのであれば、何か相手が嫌がると思うような……例えばだが見えない部分に目立つ火傷の痕が残っているとか、女性として知られたくない秘密を抱えていたりすることで引け目を感じて、私や他の人間の前では完璧な女性であろうとしている……つまりクールビューティーと呼ばれている自分を保とうとしているんじゃないかとも思うんだよ」
「それはあくまでも推測でしかありませんけどね」
「私は別に彼女が火傷があろうが気にしないし、人柄含めて全部が好きなんだ。だから態度が変わるなんてこともあり得ないんだが……エマに心から信頼してもらわないと打ち明けてはくれないんだろうな。自分から欠点なんて言いたくないだろうし。……これもまた時間がかかりそうだな」
未だにトカゲの話も思い出せないガサツな私が、エマが隠し事を打ち明けてくれるまで信頼してもらうのはどれだけ掛かるのだろうか、と思うと目の前が暗くなり、立っているのがしんどくなったのでソファーにゴロンと横になった。
その時控えめに執務室の扉がノックされ、声が掛けられた。
「ルーク様、ベティーでございます。エマ様が本日のお礼とご挨拶をとのことですが、今お時間の方はよろしいでしょうか?」
私は慌てて執務机の椅子に戻ると、
「ああどうぞ」
と声を上げた。
「失礼いたします」
扉が開いてエマと荷物を抱えたベティーが入って来た。
「ルーク様、本日は外出を許可して頂いてありがとうございました。良い気分転換が出来て楽しかったですわ」
淑女の礼を取ったエマはいつものようにすました顔だった。
「それは良かったね」
「それで……余計な気遣いかと思ったのですが、執務室でお休みになられるにはまだ冷え込む日もありますし、毛布と小さな枕を買って来ましたの。不要な時にはしまっておける小さな毛布袋もあるので、使って頂ければと思いまして……」
「やあそれはありがたいな! 助かるよエマ。喜んで使わせてもらう」
ベティーから袋を受け取る。開けると私の好みの無地の濃紺の毛布と同じ色合いのコンパクトな枕が出て来た。
「まるで私の好みが分かるみたいだね。こういうシンプルな方が落ち着くんだ。ありがとう」
「レイチェルから教えて頂きましたの。気に入って下さって何よりですわ」
ホッとしたようなエマが、自分の持っている小さな袋を持ったままもじもじしているので、私から声を掛ける。
「ところでそっちの袋は何だい?」
わざとらしく聞こえないかと心配だったが、きっかけが出来たという感じでエマが話を続けた。
「こちらは、マグカップなんですの。少し可愛いデザインなのでお気に召して頂けるか分からないのですが、執務室で飲み物なども飲む時に大きいサイズの方が淹れる手間も減るかと」
そっと差し出して来た袋を受け取り早速開ける。分かってはいたが黒猫のマグカップだ。
「猫は大好きだよ。……へえ、まるでエマみたいだね黒猫で瞳が青いなんて。とても可愛いじゃないか。大切にするよ」
一瞬エマが固まったように思えたが、ありがとうございます、と頭を下げた。
褒められた行動ではなかったが、今回の事でようやく彼女の気持ちが分かったのはありがたかった。
これは気づいてくれたのが嬉しいのと、だが自分をイメージさせるものを渡してしまうのは果たしてマナー的に良かったのだろうかと考えているのではないかと予測出来る。
そんなエマが可愛くて仕方がないが、私は彼女の本心は知らないことになっている。
もどかしい気持ちはあるが、幼馴染み以上の好意を持たれていると分かっただけで心の平穏になったことは間違いない。
「仕事中にお邪魔して申し訳ございませんでした。それでは私どもはこれで──」
頭を再び下げたエマが執務室を後にしようとして、「あ」と振り返る。
「トッド、マークはあれから大丈夫だったの? とても具合が悪そうだったけれど」
いきなり話を振られたトッドは、恐らく動揺しただろうがだてに騎士団を率いている男ではない。
「ご心配下さりありがとうございます。戻ってからはすっかり元気になりまして」
まあ具合が悪かったのは、マーク(私)を早急に止めるためトッドに脇腹を打たれたせいだが。
あれでも手加減はしたし、タオルを巻いているので三割減だったはずだと言われた。自業自得ではあるが、油断していたとはいえ私はまだまだ鍛え方が足りないようだ。
「それは良かったわ。私のワガママで緊張させてしまってごめんなさいねと伝えて下さる?」
「はい。ですが、緊張感を持つのも騎士団の仕事のうちですからお気になさらずに」
「ありがとう」
エマたちが出て行き、少し経ってから私はベルを鳴らした。
やって来たメイドにエマからもらったマグカップに紅茶をたっぷりと淹れてもらう。
「エマからもらったカップを使っていると言うだけで紅茶の味も香りも五割増しだな」
紅茶を味わいながらトッドに喜びを伝えるが、彼はそっけない。
「はあそうですか。良かったですね」
「冷たいな」
「……ルーク様、今回のような事はもう二度とゴメンですからね。命が縮む思いでしたよ」
「うん、私もだ。良心の呵責に苛まれたし、気持ちが分かっただけで良しとしよう」
あとは私がどんなエマでも愛していると分かってもらい、彼女からの信頼を得るだけだ。
……その「だけ」というのが難しいんだけどねえ。
「……私は何度も申し上げたはずですよね? バレたら困るのはルーク様だと」
「すまなかった」
「カフェでエマ様たちの話は全然聞こえない体でいて下さいね、とあれだけ忠告したにも関わらず、耳をすませて聞いていた会話に勝手に興奮して、急に立ち上がろうとするわ発言なさろうとするわ……エマ様とレイチェル様には何とかごまかせたからいいようなものですが、ベティーには気づかれましたし」
「──え?」
「え? じゃありませんよ。私が馬車に乗り込む前にベティーに呼ばれたのご存じじゃありませんか。肝が冷えたとはあのことですよ! 『わたくしに何の事前報告もなしに無茶なことをしないで下さい。エマ様は疑うことを知らない方なので良かったですが、もしご自身の感情がルーク様に駄々洩れになっていたことを知られたら、エマ様の羞恥心が爆発して大変なことになりますし、対処する羽目になるのはわたくしなのですよ』と散々怒られました」
トッドが深いため息を吐いた。
「……事前報告があれば協力もあると言うことだろうか?」
「今重要なのはそこじゃありません」
「申し訳ない。……だが、私のためにマグカップを、それもペアのマグカップを買ってくれたんだぞエマが! 嬉しくて感情が昂っても仕方ないじゃないか。毛布や枕も私のためだったし」
「そこは湧き上がる喜びに耐えて我慢するところでしょうが! 変装って意味、ちゃんと分かっておられますかルーク様?」
「──反省している」
「反省するだけならそこらの犬でも出来るんですよ。後から反省するようなことをしないでくれという話なのです。お分かりですか?」
トッドの説教は至極もっともで反論の余地もない。
だが、私に対してクールな部分をほとんど崩さないエマが、実は私を気遣い、並々ならぬ好意を抱いていると知れたことは、私の中では何よりも重要な事なのだ。
現在の私の優先順位は一にエマ二もエマ、三、四もエマで五に仕事なのだから。
「だがなトッド……私にはどうしても分からないことがあるんだ」
「何ですか?」
「エマがあれだけ自分を卑下していることがだよ」
「……それは私も感じましたが」
「三歳程度は年上のうちにも入らないと思うし、むしろゴツい私よりもエマの方が年下に見えるだろう? それに色々と欠点があると言っていたが、エマは誰よりも美人に見えるし、肉付きこそ細すぎるとは思うが、一般的にはスタイル抜群と言われる体型だ。教養もあるしマナーも完璧だ。何より性格も可愛いし、声も可愛いし、仕草も何もかも全てが可愛いだろう?」
トッドが少し引きつったような顔つきで私を見たが、私は無視して続ける。
「そんなエマが自分で欠点と言うのであれば、何か相手が嫌がると思うような……例えばだが見えない部分に目立つ火傷の痕が残っているとか、女性として知られたくない秘密を抱えていたりすることで引け目を感じて、私や他の人間の前では完璧な女性であろうとしている……つまりクールビューティーと呼ばれている自分を保とうとしているんじゃないかとも思うんだよ」
「それはあくまでも推測でしかありませんけどね」
「私は別に彼女が火傷があろうが気にしないし、人柄含めて全部が好きなんだ。だから態度が変わるなんてこともあり得ないんだが……エマに心から信頼してもらわないと打ち明けてはくれないんだろうな。自分から欠点なんて言いたくないだろうし。……これもまた時間がかかりそうだな」
未だにトカゲの話も思い出せないガサツな私が、エマが隠し事を打ち明けてくれるまで信頼してもらうのはどれだけ掛かるのだろうか、と思うと目の前が暗くなり、立っているのがしんどくなったのでソファーにゴロンと横になった。
その時控えめに執務室の扉がノックされ、声が掛けられた。
「ルーク様、ベティーでございます。エマ様が本日のお礼とご挨拶をとのことですが、今お時間の方はよろしいでしょうか?」
私は慌てて執務机の椅子に戻ると、
「ああどうぞ」
と声を上げた。
「失礼いたします」
扉が開いてエマと荷物を抱えたベティーが入って来た。
「ルーク様、本日は外出を許可して頂いてありがとうございました。良い気分転換が出来て楽しかったですわ」
淑女の礼を取ったエマはいつものようにすました顔だった。
「それは良かったね」
「それで……余計な気遣いかと思ったのですが、執務室でお休みになられるにはまだ冷え込む日もありますし、毛布と小さな枕を買って来ましたの。不要な時にはしまっておける小さな毛布袋もあるので、使って頂ければと思いまして……」
「やあそれはありがたいな! 助かるよエマ。喜んで使わせてもらう」
ベティーから袋を受け取る。開けると私の好みの無地の濃紺の毛布と同じ色合いのコンパクトな枕が出て来た。
「まるで私の好みが分かるみたいだね。こういうシンプルな方が落ち着くんだ。ありがとう」
「レイチェルから教えて頂きましたの。気に入って下さって何よりですわ」
ホッとしたようなエマが、自分の持っている小さな袋を持ったままもじもじしているので、私から声を掛ける。
「ところでそっちの袋は何だい?」
わざとらしく聞こえないかと心配だったが、きっかけが出来たという感じでエマが話を続けた。
「こちらは、マグカップなんですの。少し可愛いデザインなのでお気に召して頂けるか分からないのですが、執務室で飲み物なども飲む時に大きいサイズの方が淹れる手間も減るかと」
そっと差し出して来た袋を受け取り早速開ける。分かってはいたが黒猫のマグカップだ。
「猫は大好きだよ。……へえ、まるでエマみたいだね黒猫で瞳が青いなんて。とても可愛いじゃないか。大切にするよ」
一瞬エマが固まったように思えたが、ありがとうございます、と頭を下げた。
褒められた行動ではなかったが、今回の事でようやく彼女の気持ちが分かったのはありがたかった。
これは気づいてくれたのが嬉しいのと、だが自分をイメージさせるものを渡してしまうのは果たしてマナー的に良かったのだろうかと考えているのではないかと予測出来る。
そんなエマが可愛くて仕方がないが、私は彼女の本心は知らないことになっている。
もどかしい気持ちはあるが、幼馴染み以上の好意を持たれていると分かっただけで心の平穏になったことは間違いない。
「仕事中にお邪魔して申し訳ございませんでした。それでは私どもはこれで──」
頭を再び下げたエマが執務室を後にしようとして、「あ」と振り返る。
「トッド、マークはあれから大丈夫だったの? とても具合が悪そうだったけれど」
いきなり話を振られたトッドは、恐らく動揺しただろうがだてに騎士団を率いている男ではない。
「ご心配下さりありがとうございます。戻ってからはすっかり元気になりまして」
まあ具合が悪かったのは、マーク(私)を早急に止めるためトッドに脇腹を打たれたせいだが。
あれでも手加減はしたし、タオルを巻いているので三割減だったはずだと言われた。自業自得ではあるが、油断していたとはいえ私はまだまだ鍛え方が足りないようだ。
「それは良かったわ。私のワガママで緊張させてしまってごめんなさいねと伝えて下さる?」
「はい。ですが、緊張感を持つのも騎士団の仕事のうちですからお気になさらずに」
「ありがとう」
エマたちが出て行き、少し経ってから私はベルを鳴らした。
やって来たメイドにエマからもらったマグカップに紅茶をたっぷりと淹れてもらう。
「エマからもらったカップを使っていると言うだけで紅茶の味も香りも五割増しだな」
紅茶を味わいながらトッドに喜びを伝えるが、彼はそっけない。
「はあそうですか。良かったですね」
「冷たいな」
「……ルーク様、今回のような事はもう二度とゴメンですからね。命が縮む思いでしたよ」
「うん、私もだ。良心の呵責に苛まれたし、気持ちが分かっただけで良しとしよう」
あとは私がどんなエマでも愛していると分かってもらい、彼女からの信頼を得るだけだ。
……その「だけ」というのが難しいんだけどねえ。
16
お気に入りに追加
294
あなたにおすすめの小説
木曜日生まれの子供達
十河
BL
毒を喰らわば皿まで。番外編第四弾。
五十四歳の誕生日を迎えたアンドリムは、ヨルガと共に残された日々を穏やかに過ごしていた。
年齢を重ねたヨルガの緩やかな老いも愛おしく、アンドリムはこの世界に自らが招かれた真の理由を、朧げながらも理解しつつある。
しかし運命の歯車は【主人公】である彼の晩年であっても、休むことなく廻り続けていた。
或る日。
宰相モリノから王城に招かれたアンドリムとヨルガは、驚きの報告を受けることになる。
「キコエドの高等学院に、アンドリム様の庶子が在籍しているとの噂が広まっています」
「なんと。俺にはもう一人、子供がいたのか」
「……面白がっている場合か?」
状況を楽しんでいるアンドリムと彼の番であるヨルガは、最後の旅に出ることになった。
賢妃ベネロペの故郷でもある連合国家キコエドで、二人を待つ新たな運命とはーー。
サレカノでしたが、異世界召喚されて愛され妻になります〜子連れ王子はチートな魔術士と契約結婚をお望みです〜
きぬがやあきら
恋愛
鈴森白音《すずもりしおん》は、地味ながらも平穏な日々を送っていた。しかし、ある日の昼下がり、恋人の浮気現場に遭遇してしまい、報復の手段として黒魔術に手を出した。
しかしその魔力に惹き付けられたヴァイスによって、異世界”エルデガリア王国”に召喚された。
役目は聖女でも国防でもなく「子守り」
第2王子であり、大公の地位を持つヴァイスは、赤子の母としてシオンに契約結婚を望んでいた。契約の内容は、娘の身の安全を守り養育すること。
ヴァイスは天才気質で変わり者だが、家族への愛情は人一倍深かった。
その愛は娘だけでなくシオンにも向けられ、不自然なほどの好意を前に戸惑うばかり。
だって、ヴァイスは子をなすほど愛し合った女性を失ったばかりなのだから。
しかし、その娘の出生には秘密があって……
徐々に愛を意識する二人の、ラブロマンスファンタジー
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
いつから魔力がないと錯覚していた!?
犬丸まお
BL
婚約者に無理やり襲われそうになり、寮の二階の窓から飛び降りたサフィラスは、落下した衝撃で前世を思い出した。サフィラスの前世は、無詠唱の大魔法使いと言われた最強の魔法使いフォルティスだったのだ。今世では、魔法伯爵家に生れながら5歳の魔力判定で魔力なしと判じられてからというもの、ずっと家族から冷遇されていた大人しいサフィラス。ところが前世を思い出した途端、サフィラスの人格は前世のフォルティスの人格にほぼ飲み込まれてしまった。これまでの可哀想なサフィラスよ、さようなら。これからは我慢も自重もしない。転生する前に、女神から与えられた強運という祝福と無敵の魔法で、これまで虐げられてきたサフィラスは人生を謳歌することを決意する!主人公が1ミリもピンチに陥らないお気楽な話です。恋愛&ラブHは物語後半に予定。
フォアローゼズ~土偶の子供たちも誰かを愛でる~
来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
日本人的ないわゆる大和民族顔がもてはやされる国で『シャインベック家のフォアローゼズ』と呼ばれた美貌の4兄妹がいた。
「傾国の美貌」「ガーランドの女神」「びいせんの乙女」などと呼ばれる母から生まれた顔立ちは、あっさり顔で母親の血を色濃く引いていた。
特に双子の娘は女神再来かと思わせる程遠いそっくりだと小さな頃から評判で、そんな彼女たちも16になり、とうとう社交界にデビューする事に──。
【土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。】の4人の子供たちのその後のお話です。
ちっと長いですが、前作を読んで頂いてからの方がキャラ的な理解が深まり、もっと楽しんで頂けるかと思います。
前作主人公リーシャ&ダーク夫妻や、メイドのルーシー・グエン夫妻もウロチョロ出ております。
ファーストカット!!!異世界に旅立って動画を回します。
蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)
BL
トップ高校生we tuberのまっつんこと軒下 祭(のきした まつり)、17歳。いつものように学校をサボってどんなネタを撮ろうかと考えてみれば、水面に浮かぶ奇妙な扉が現れた。スマホのカメラを回そうと慌てる祭に突然、扉は言葉を発して彼に問い掛ける。
『迷える子羊よ。我の如何なる問いに答えられるか。』
扉に話しかけられ呆然とする祭は何も答えられずにいる。そんな彼に追い打ちをかけるように扉はさらに言葉を発して言い放った。
『答えられぬか…。そのようなお前に試練を授けよう。…自分が如何にここに存在しているのかを。』
すると祭の身体は勝手に動き、扉を超えて進んでいけば…なんとそこは大自然が広がっていた。
カメラを回して祭ははしゃぐ。何故ならば、見たことのない生物が多く賑わっていたのだから。
しかしここで祭のスマホが故障してしまった。修理をしようにもスキルが無い祭ではあるが…そんな彼に今度は青髪の少女に話しかけられた。月のピアスをした少女にときめいて恋に堕ちてしまう祭ではあるが、彼女はスマホを見てから祭とスマホに興味を持ち彼を家に誘ったのである。
もちろん承諾をする祭ではあるがそんな彼は知らなかった…。
ドキドキしながら家で待っていると今度は青髪のチャイナ服の青年が茶を持ってきた。少女かと思って残念がる祭ではあったが彼に礼を言って茶を飲めば…今度は眠くなり気が付けばベットにいて!?
祭の異世界放浪奮闘記がここに始まる。
彼は最後に微笑んだ
Guidepost
BL
エルヴィン・アルスランは、冷たい牢の中で大切だった家族を思い、打ちひしがれていた。
妹はさんざんつらい思いをした上に出産後亡くなり、弟は反逆罪で斬首刑となった。母親は悲しみのあまり亡くなり、父親は自害した。
エルヴィンも身に覚えのない反逆罪で牢に入れられていた。
せめてかわいい甥だけはどうにか救われて欲しいと願っていた。
そして結局牢の中で毒薬を飲まされ、死んだはず、だった。
だが気づけば生きている。
9歳だった頃の姿となって。
懐かしい弟妹が目の前にいる。
懐かしい両親が楽しそうに笑ってる。
記憶では、彼らは悲しい末路を辿っていたはずだ。
でも彼らも生きている。
これは神の奇跡なのだろうか?
今度は家族を救え、とチャンスを授けてくれたのだろうか?
やり直せるのだろうか。
──そう、エルヴィン・アルスランの時間は18年前に遡っていた。
(R指定の話には話数の後に※印)
妹に騙され性奴隷にされた〜だからって何でお前が俺を買うんだ!〜
りまり
BL
俺はこれでも公爵家の次男だ。
それなのに、家に金が無く後は没落寸前と聞くと俺を奴隷商に売りやがった!!!!
売られた俺を買ったのは、散々俺に言い寄っていた奴に買われたのだ。
買われてからは、散々だった。
これから俺はどうなっちまうんだ!!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる