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婚約者候補は○○でした。★

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「………リーシャ様、今からそんなに緊張してて大丈夫でございますか?」

「だ、大丈夫よ。イヤねルーシー、私はもう人妻なのよ?
 こう、大人のしっとりとした落ち着きがあるはずなのよ。ほら、どこかにあるんじゃない?ほらほら」

「どこにも見当たりませんが。冬物の入れ替えの時にポイされたのではございませんか?それともリーシャ様お得意のあるある詐欺でしょうか」

「結婚、出産、子育てと一通りこなしてる私に何故見当たらないのよ?困るのよイメトレ出来ないから」

「性格的なものでしょうかね。過ぎた美貌を持ちながら、妖艶さとか色気すらも結婚前から行方不明なままで、安否確認すらしてない御方が大人の落ち着きとは、ほっほっほっ。
 リーシャ様の冗談のスキルが年々レベルアップされていて、わたくしウェストが3センチ細くなりました。誠にありがとうございます」

「今のは私にも分かったわよ。嫌味ね?嫌みなのね?」

「わたくしがリーシャ様に嫌味など言った事などお仕えしてから一度たりともございません。常に敬愛の気持ちを忘れずにいるわたくしに何て酷いお言葉を………」

「………悪かったわ、言い過ぎたわね。ごめんなさいルーシー」

「素直でチョロ………お優しいリーシャ様にお仕え出来てわたくし人生に一片の悔いなしでございます。………おや、そろそろ到着でしょうか」

 馬車の窓から外を眺めたルーシーが私に告げた。



ーーーーーーーーーー


 侯爵家主催の若い淑女が集まるお茶会に、兄様の婚約者候補のレベッカ=カレイド伯爵令嬢がやってくると言うので、ヒッキーの私は渋々参加したのだが、20人位はいるんですけど淑女が。
 どこよレベッカ嬢。

 そして私に向けられる恐ろしいキラキラとした眼差し。

「あの方がリーシャ様………なんてお美しいのかしら………」

「お子様も生まれたそうですけれど、スタイルもよくていらっしゃる………」

「ご覧になって!あんなに艶めかしい黒髪は見たことありませんわね!どんな美容液を使っておられるのかしら。
 あまり華やかな場はお好きではないと伺っておりましたが、久しぶりに参加されると聞いて私、楽しみにしておりましたのよ」
 

 とても自分の事を言われてるとは思えない美辞麗句がヒソヒソと囁かれている。
 居たたまれない。ツラい。
 ダークとカイルのもとへ帰りたい。

 今日は仕事が休みのダークがカイルの子守りをしてくれている。
 仕事で普段疲れているダークに余り長時間の子守りは可哀想だ。

 何しろカイルはちょっと目を離すと、高速ハイハイで姿が見えなくなるのだ。

 先日などトイレにいって戻った時にはもう姿が消えており、使用人総出で捜す羽目になったが、ソファーと壁の隙間で寝ていたところをアレックさんに発見された。
 別の日にはトイレに顔を突っ込もうとしてる時もあった。
 油断も隙もない子なのである。
 
 ダークが疲労困憊するんじゃないかと気が気じゃないので、とっととレベッカ嬢の人となりを探って帰ろうと私は決意した。



「リーシャ様、あちらがレベッカ様だそうですわ。あの赤みがかった金髪の」

 お茶を飲みながら、最近消失しかけていた全社交力を傾け可愛い女性………多分腐ってない婦女子の方々との交流をしていると、背後にルーシーがやってきて耳打ちした。

 知り合いを見つけた体でその場を離れる。

 さりげなく目を向けると、少し離れたテーブルで談笑している中に、いた。

「………可愛いじゃない」

 レベッカ嬢は、私から見てもちょっとタレ目なところが愛らしい、アッサリ系ではあるが色白の柔らかな印象を受ける、感じの良さそうな女性だった。

「マークス様にはああいう物静かで女子力の高そうな方がお似合いでは?」

「そうね。まあ話をしてみないと何とも………」

 私は、気合いを入れて歩いていった。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「ねえ、それでどんなお嬢さんだったの?リーシャ」

「性格は?傲慢なタイプだったか?」


 ママンとパパンの視線が痛い。
 ダークとカイルの顔を見る前に実家へ戻った私は、両親の期待に満ちた目に何と言えばいいのやら頭が痛かった。

「いえ、性格は控え目で物腰も柔らかいし、愛らしい顔立ちの美人さんだし、頭もいいのよ」

「まああぁ!」

「おお!そんな文句なしの令嬢が」


 うん、私もお義姉様と呼びたかったわ。

「でもね、ダメなのよ」

「?何がだ」

「………兄様ではダメなの」

「マークスは私の息子だが、母様譲りの男前だぞ?真面目だし女癖も悪くないと思うし、何が問題だ?」

「性別」

「………え?」

「本当に残念なのだけど、彼女、同性愛者だったの。女性にしか興味ないのよ」

 彼女はこの世界で初めて出会う百合の方であった。

 そう、ずっと私の顔を眺めて頬を染めて、手を握り、あからさまに誘われた。

「ゴツくて汚ならしい殿方よりもリーシャ様のような美しい女性と過ごしたいんですの。未知の扉、開いてみたくありません?」

 みたくない。

「私主人にベタぼれですのよ、残念ですけれど。うふふふ」

 で逃げ切ったけど、おお、これがノンケの人が迫られると言う感覚なのね、と変なところで感心した。

 可愛い女の子は好きだけど愛でるだけで満足なのですよ私は。

 しかし、男性ではないからまだましだけど、あれも一種のセクハラよねぇ。

「そうか………なんて残念な………性別はどうもならんなぁ」

「………そうですわねぇ」

 溜め息をつく両親に、私も申し訳なく思う。

「いい知らせでなくて本当にごめんなさいね」

「やあね、リーシャのせいじゃないもの」

「私達が『うちにもカイルみたいな孫が早く欲しいな』なんて思ってつい焦ってしまってな」

「………兄様は、その、女性が好きと言うことで間違いないのよね?」

 私は念のため確認した。
 跡取りはともかく、兄様も同性愛者だったらブライアンに託さないと。
 ブライアンは女の子が好きなことは聞いているから心配ない。

「それは大丈夫だ。ただあれもシスコンだからな。リーシャぐらい可愛い子じゃなきゃ結婚しないとか贅沢言ってるんだよ」

「リーシャほどの子なんてどこにも居ないわよねえ。面食いなのも困るわ~」

 兄様、中身はかなり残念な子ですのよあてくし。

「マークス様も無茶を仰いますね。傾国の美女がアチコチいたら、国が傾きまくりではございませんか」

「ルーシーやめて体が痒くなるから。ほら帰るわよ」

 また近々遊びにいくから、と言うママン達に別れを告げると、私とルーシーは我が家への帰路についた。



◇  ◇  ◇



「まー!うー!」

「ただいまーカイルぅー」

 扉を開けると、リビングでダークとボール遊びをしていたカイルが高速ハイハイでやって来たのを抱き上げる。

「ああー、私の癒しだわぁ」

 キャッキャと喜ぶカイルの頬にキスをして、ダークを見た。

「ごめんなさいね、父様達の所にも寄ってたから遅くなってしまって。疲れたでしょう?」

 ルーシーも抱っこ待ちだったのでカイルを預け、ダークに抱きついた。

「いや全然。リーシャの方が疲れただろう?社交苦手だしなぁ。疲れた顔してるぞ、早く夕食にして、風呂に入って疲れを取った方がいい」

「………私の旦那様が優しくて惚れ直すわー押し倒してしまいそう」

「………おう。いつでもいいぞ」

「旦那様もリーシャ様もイチャコラが過ぎてもう照れることも無くなった自分が切ない今日この頃ですが、そろそろ食堂にお願いいたします。カイル坊っちゃまも食事の時間でございますよ」

「っ、ああ、済まなかった」

 ダークが私の手を取って、食堂へと促す。

「気になってたんだ。食事の時に今日の様子を聞かせてくれ」

「盛りだくさんだわよ?楽しみにしてて」

 私は、ダークの腕に手を回すと、今夜はお肉かな魚かなー、あ、ジュリアの野菜スープ飲みたいなー、とたわいもない話をしながら食堂に歩いていった。





「………レベッカ嬢が同性愛者なのはいいとして、手や二の腕や………太股まで触られた?」

「いや、でも女子はコミュニケーションの一環でボディタッチするから、それかなぁと思ってたのよ!太股は掌をぽん、と置かれただけよっ」

 さわさわ、っとされたけどちょっと。これは言わない方がいい案件だと思う。



 食事をしながら今日の顛末を話していると、段々とダークの眉間にシワが寄ってきた。

「リーシャはどうしてそう警戒心がないんだ。男でも女でも隙あらばリーシャをどうにかしたくてウズウズしてるのに!
 ………あぁ拐われなくて良かった。それでも速攻で取り戻すが、女でも殴るぞ俺のリーシャに何かしたら」

 過保護に過大評価に過剰防衛のスリーカードです旦那様。

「大丈夫よ、お茶会でそんなことあるわけないでしょう。心配性なんだからダークは」

 鮭のフライをタルタルソースにつけて頬張る。
 ああ、タルタルソースって神のソースだわ。ほんと美味しい。

「呑気にモグモグしてないで、少しは人を疑う心を持ちなさい、男も女もリーシャにとっては基本ケダモノと思う位でちょうどいいんだ。こら、聞いてるのか?」

「ダーク、お説教はもういいから。
 フライは熱々が一番美味しいのよ?はい、あーん」

 私はエビフライをカットして、タルタルソースにつけてダークの口元へ持っていく。

「………あーん」

「ほら、美味しいでしょう?」

 モグモグするダークに問いかける。

「………美味いけども、だな」

「カキフライも食べたい?それとも豚ヒレがいいかしら?」

「………カキフライ」

「はい、あーん」

「………あーん」

 モグモグとしながら、ダークが、

「とにかく、出掛ける時には気をつけるように」

 といい、そこからはカイルの昼間の様子などを語ってくれた。

 ルーシーが小声で、

「旦那様も相変わらずリーシャ様限定でかなりチョロいですね」

 と呟いてたが、私も最近そう思う。



◇  ◇  ◇



 お風呂を出て、ルーシーに髪を乾かしてもらい寝室に入ると、何故かダークがソワソワしている。

 カイルをお風呂に入れてタオルドライはルーシーに任せたとかで、風呂上がりのせいか顔も上気している。

「………今夜はルーシーがカイルの面倒を見ると言ってくれた」

「え?ルーシーも私に付き合って疲れてるのに悪いわよ。昨日も大分任せたのに。
 私ならもうお風呂に入ったら元気になったから大丈夫よ。今夜は私が………え?何?何か問題があるの?」

 ダークがひどくショックを受けたような顔をしていてこちらの方が驚いた。

「いや、だって………」

「だって、何?」

「………押し倒したいって、言ったのに………いつでもいいって言ったのに、………今夜じゃなかったのか?………」


 ………そのソワソワは、私の押し倒し待ちでしたか。
 なんだこの目を潤ませるクソ可愛い夫は。


 神様ー、私の旦那様がほんっとうに恐ろしい位可愛いんですけどー。

 実は押し倒すってのは言葉のあやだったんですがー、期待してたみたいでー、据え膳なんで頂いていいですかー?良いですよねー?
 
 脳内で神様への感謝を捧げると、私はダークを見詰めた。
 何だか私、違う性癖が目覚めそうで困るんだけどなぁ。今日はSリーシャをご希望なのかしら。


「………ダークったら、そんなに襲われたかったの?いやらしいわね」

 すっ、と近寄ると、ベッドに腰かけていたダークの肩をトンっと押し倒して、ガウンの紐をほどく。

「リーシャ………」

「まあ、こちらの坊やはなに?下着からはみ出す位に元気になってるわよ?何もしなくてもこんなに元気なら、弄る必要もないんじゃないの?」

 私は下着を下ろして、そっと指で剛直を撫でる。

「あらあら。ダラダラと先からヨダレが垂れてるみたいよ。
 どうして欲しいのかしらねこの子?」

「あっ、リーシャ………」

「ほら、お願いはなぁに?言わないと分からないわよ?」

「………舐め、て」

 恥ずかしそうに顔を赤らめるダークが可愛いので、嗜虐心が煽られる。

「お願いするなら、舐めて下さいリーシャ様、でしょう?」

「んっ………舐めて、下さい、リーシャ様」

「仕方ないわ、お願いだものね」

 私はダークのギンギンに勃ち上がっているアレをペロリと舐める。
 ダークの腰がビクッと動く。

「まぁ、これだけでいいの?可愛いお願いだこと。物足りないわ」

「あっ、リーシャ様っ、………くっ、くわえて舐めて下さいっ!」

「正直にそう言えばいいのよ。素直な子は好きよ?」

 カリを舐め上げながら、口に含む。
 何度も歯を当てないよう上下に味わい、届かない下の方は指でしごく。

「っはぁっ、………んっ」

 身体をよじらせ、快感を耐えているダークの顔がとてもエロ神々しい。
 一度ちゅぽっ、と音を立てて彼のモノを離すと、

「私、喉が渇いたわ。あなたのジュースが飲みたい」

 耳元でそう囁くと、改めてモノを含み、さっきより刺激を強めにしつつ、先走りと唾液でぬるぬるした彼自身を弄ぶ。

「あっ、そんなにされたらもうっ、………くっ」

 ダークのモノがぐっ、と質量を増したと思うと、私の口の中に彼の白濁が放たれた。かなりの量だが飲み込む。
 先端もちゅう、と吸い上げるようにして全てを飲み込んだ。

「ふふっ。ご馳走さま。美味しかったわ」

 ティッシュで唾液や白濁で汚れた口元を拭い、息を荒くしているダークの耳を舐めた。

「こういう女王様プレイもたまには良いかしら?うーん、でも似合わないかも」

 こんなにカッコよくて綺麗で人柄もいいのに寂しがりで、私なんかをひたすら愛してくれる旦那様もそうは居ない。
 たまには望むならキャラにないことだってしてあげるのだ。

 私の太陽。私の月。私の全てだから。

「………いや、ちょっと刺激が強すぎてすぐイってしまった………」

「そっか。でも気持ちよくなれたなら良かったわ」

「………で、二回戦目は、俺が王様モードでいいか?」

「ひゃうっ」

 ガバッ、と逆にベッドに押し倒されて微笑むダークに思わず声が上がる。

「今出したばかりじゃなーーーちょ、何でもう元気なの?普通は休まないと出来ないって言うじゃ、んぁっ」

 いつガウンはだけた。
 いつネグリジェのボタン外した。

「誰からそんなこと聞いた?ん?」

 片手で胸に愛撫を加えながら片手でパンツ下ろすとか、ダークの動きが早すぎて抵抗する隙もない。

「んっ、フランとか、ちょっとエッチな本、とかっ………そこダメっ、あぁっ」

「リーシャのダメは信じない。ほら、もうビショビショだリーシャのアソコ」

 指でそっとクリトリスを刺激されただけで軽くイってしまった。

「ふぁっ………」

 でも、指を出し入れし気持ちいいところを的確に攻めてくるのでまたゾワゾワと来る。
 もっと奥に欲しい、足りない、と思ってしまったのを気づかれたように、ダークが耳に舌を入れて舐めながらテノールボイスで囁く。

「ほら、リーシャ、どうして欲しい?お願いしてごらん。足をモジモジさせてるだけじゃ分からないぞ」

「あっ、んんんっ………挿れて下さ、いっ」

「何を挿れて欲しい?」

「ダーク様、の大きな、アレを、あぁっ、私の中に、奥まで挿れて、下さいっ………ひゃっ、あ、あと、」

「あと、何だ?」

「ぎゅっ、て抱き締めて、キスして、下さい、っひぁっ」

 もう何だか耳からの刺激と下半身の刺激でおかしくなりそうで、早くイかせて欲しい。

「………っリーシャ、いい子だ。ご褒美に全部叶えてあげる」

 ダークの熱い猛りが私を貫く。
 ずっと焦らされていた体はすぐにイってしまう。

「ダークっ、お願いっ、もうイったから今は動かな、……あああっ!変になっちゃっ」

 ダークは抱き締めたまま抽送を止めてくれない。

「いくらでもイけばいい」

 舌を絡ませ歯茎の裏側まで舐めるような濃厚なキスをしながら、

「リーシャ、俺のリーシャ………何でこんなに可愛いんだ。愛してる」

 と腰に響く美声を耳元で延々と囁かれるのは卑怯だと言いたかったが、余りの快感の連鎖に頭の中がスパークし、そのまま気を失ったようで、気がついたら朝だった。


 ダークがスッポンポンで正座して、

「つい興奮してやり過ぎましたごめんなさい嫌わないで下さい本当に反省してます」

 と謝ってきたので、許すけど反省のため一週間エッチ禁止ですからね、と睨むとものすごくしょんぼりしていた。


 可愛くてどうしてくれようかこのオッサンは、と思ったけど、ここはムチもないと暴走するので心を鬼にしようと思った。


 時々、私には二人の息子がいるような気がする。
 どちらも油断も隙もない、手のかかる子である。


 頑張れ自分。





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