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クロエの場合。【7】★
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「……ふぅ」
高位貴族や隣国のお偉方がそこらじゅうにいる立食パーティーという戦場を何とか乗り越えて、私とジークはようやく新居となる屋敷へ帰って来た。
帰って来た、と言えるのが嬉しい。
ここはジークと私のマイホームだものね。
私との結婚後を考えてジークがこちらに来てから建てた屋敷だ。
シャインベック家からも遠くないし、町には歩いて10分ちょっとで行けるかなり利便性もいい。
別棟があり、そっちは住み込みでメリッサも入れて5人の使用人が住んでいるが、こちらの母屋自体は大きな寝室とそれぞれの個室、書斎、客室2つに広めのキッチンにリビングダイニング、ちょっと気が早いけど子供部屋も3部屋あり計10部屋。あとバスルームとトイレが2つずつ。
女性は主に美容の関係で長風呂の人が多いので、男性用と女性用にと複数ある屋敷が多いのだ。
正直ここまで広々とした屋敷に住むのは少し贅沢な気がしたのだが、子供が生まれて手狭になって建て直す方が贅沢だろう? とジークに言われてそれもそうかと考え直した。
母様のように旦那様の食事は私が作りたかったので、コックは雇っておらず、メイド3人に庭師兼雑用の男性、あと隣国から一緒に連れて来た執事のメイヤーと私たちの計7人がフェルーシー家……とと、もう王族じゃないからフェルーシーじゃなかったわね、アーデルハイド家の新しいファミリーだ。
でもアーデルハイドミレニアカリクバーン国からとってアーデルハイドを名乗れって国王陛下も無茶言うわよね。
王族絡みだって知らない人にもバレバレじゃないの。
「ギュンターお義兄様と呼んでくれないか」
とか言ってたけど当分陛下と呼ぶ事にしよう。
ジークもそれでいいって言ってたし。
「疲れただろうクロエ? あれでもかなり断ったんだけど……ごめんね」
溜め息が聞こえたのか、ジークが私の顔をすいっと下から覗き込んだ。
「一生に一度の事だもの、全然平気よ」
私はジークに抱きついた。
「ようやく私の旦那様ねジークも!」
「クロエも私の奥さんだ。長かったね本当に……」
ぎゅっと抱き締め返すと普段なら優しく頭を撫でていた手が私の顎をクイッと上げて、唇を奪った。
今まで経験した記憶がないほど情熱的で、舌を絡めてくるような濃厚さに呼吸のしかたも分からなくなって頭がぼうっとしてしまった。
「……ジ、ジーク」
ようやく唇が離れた時には息も絶え絶えだった。
別人のようなジークに少し驚いた。
「本当に……クロエが思っている以上に私には長かったんだ……こんなに年が離れてるんだから、いつか私から離れてもっと近い年頃の男に行ってしまうんじゃないかとずっと不安だった……私はそれでも仕方ないと思っていた。だって出会ったのが3歳と22歳の時だからね」
ジークが苦笑していつものように頭を撫でた。
「クロエは小さな頃から私の天使で、将来はリーシャさんのようにとんでもない美人になるのが分かりきっていた。
こんな私を慕ってくれただけでも御の字だ、一時的にでも素敵な女性に好意を持たれる喜びをくれたと思えばいいと。──だけど年々クロエは可愛くなるし、私への好意も変わらないし、私も本気になってもいいかもと思ったんだ。たとえ最後に傷ついたっていいじゃないか、お前は不細工な癖にこんな美人に好かれてたんだぞ、って未来の自分に自慢してやろうと思ってね」
「ジーク……」
「でも、本気になればなるほど他の男に持っていかれたくなくて、隣の国にいるのが辛くなってきた。
兄上に仕事で結果を出すからガーランド国に行かせてくれって土下座して頼み込んだ。
うちの兄上は弟である私を便利に使っていたから、あのままだと無事結婚が出来るまではずっとアーデルに引き留められてたに違いなかったし」
「まあ……」
初めて聞いた。たまたまこっちに来られる仕事があったのだと思っていた。
「最後まで『もしクロエが他の男性と恋仲になってお前と結婚しなかったら、同じ国には居づらくないか』って言われたけど、もしそうであっても私はクロエの近くに居たかった。
……いい年して気持ち悪いと思われてもしょうがないけど、最初で最後の恋だと思ってたから」
私は思わずジークを強く抱き締めて告げた。
「私は浮気はしないタイプなのよ。
やあね知らなかったの?」
「うん、そうだね。知ってたけど、時は流れるから。
ほら、出会った頃は僕とか言ってた私ももう37になったし、クロエから見たら相当なオジサンだろ?」
「んー、小さな時から見てるから、年を取った感じは余りないのよね。私はずっと宝石のような瞳の王子様だと思ってたし、父様の次に格好いい男性だと思ってたもの。……あ、でも今は違うけど」
「違うって?」
「父様の次だと思ってたけど、父様よりイケメンだったのよね私の旦那様」
「クロエ……っっ!」
余りに力強い抱擁にむせた。力が強すぎる。
ゲホゲホいってる私にすぐ気づいて慌てて力を抜いてくれた。
「ごめんクロエ! ちょっと感極まって思いっきり……」
「だ、大丈夫」
ずっとエントランスにいる状況も何とかしたいのだけど、と思っていると、ジャストタイミングでメリッサが現れた。
「旦那様、奥様お二方ともお疲れかと思いましたので、私どもでお風呂の用意をしております。
すぐ入れますわ。
先ずは疲れを落としてからごゆっくりされるのがよろしいかと思われますが」
「ああ、そうだね! 私も家に入った途端に疲れた妻を労ることも忘れてた。クロエ、またあとで」
恥ずかしげに手を上げると、ジークもお風呂に入るべく去っていった。
「ありがとうメリッサ。寒くて体が冷えかけてたのよ」
「私はクロエ様専属メイドでございますから。
あの……それと呼び方ですが、クロエ奥様の方がよろしいですか? それとも若奥様ですとか」
「普通にクロエでいいわよ、体が痒くなるじゃない」
「かしこまりました。それではクロエ様バスルームへ。
私が腕によりをかけて磨かせて頂きますわ」
「……え? 自分でやるわよ」
「ルーシー先生が初夜には初夜なりの磨き方があるとしっかり教わりました」
「今度は師匠でなく先生なのね。まあいいわ。私には磨き方は分からないものね。メリッサにお願いするわ、ちょっと裸を見られるのは恥ずかしいけど」
シャインベック家でも小さな頃はルーシーにお世話になっていたが、流石に12、3歳位からは1人で入るか母様やアナと一緒にしか入っていない。ウチは自分の事は自分で出来るようにという家訓だったので、基本的にある程度の年になるとメイドに頼むことはなかったし。
以前同級生だった侯爵家や伯爵家の中には、自分で洗ったことなんてないわという女子もいたので、家によって違うのだろう。ウチはかなり庶民的らしい。
「慣れて下さいませ」
「慣れたくはないわねー。あ、いけない着替えを──」
「用意しております。ささ、お風呂へ」
急かされるようにバスルームへと促される。
そういえば他の部屋は何度か遊びに来たので見たことがあるがバスルームは見たことがなかったな。
私は楽しみにしつつ、ようやく張っていた気持ちが弛むのを感じた。
□■□■□■□■□■□■
「……」
何故だろう。
お風呂に入る前より疲れた気がする。
メリッサの念入りな全身マッサージと柑橘系の香りのトリートメントでお肌も髪も艶々ではあるのだが、この膝もろくに隠れない薄手のネグリジェは何とかならなかったのだろうか。
それにパンティーは圧倒的に布地が足りてない。
お尻が半分出てしまっているじゃないの。
それにブラジャーはどこブラジャーは。
「どうせ脱がされるんですから必要ありませんわ」
ホホホホ、とメリッサに笑顔で返されたが、せめて脱がされるまでは大きくない胸を寄せて上げておきたかったのに。
何故アナは結構大きく育ったのに、私は母様に似てささやかなのかしら。
双子なのに成長が違うってずるいわよね。
母様は、
「……大きすぎない方が老後垂れないからいいのよ。
それにルーシーが言ってたけど、大きいと肩こりがひどいんですって」
と唇を噛みながら悔しそうに教えてくれたけど、肩こりがあっても大きい方が色気があって良かったんじゃないかと切なくなった。
くよくよ悩んでいると、寝室のドアがノックされた。
「入っていいかなクロエ?」
私はサッと毛布に潜り込み、どうぞと返事をした。
……ああ、ジークは本当にセクシーだわ。
大人の色気とパジャマからも分かる筋肉質な体つき。その上完璧に私好みな顔立ちである。
未だに父様やジークが何故不細工と言われるのか分からないけれど、母様が言うには人の好みは十人十色だし、私やクロエみたいなアッサリした顔がたまたまこの国の流行りみたいだから、ジークライン王子や父様みたいな彫りの深いイケメンは残念ながら受けが悪いのよね、と苦笑していた。
「でも、逆に言えばライバルが現れる可能性も少ないし、私たちの好きな人をほぼ独占出来るんだから、これはこれでアリよね。
ダークなんか未だに腹筋割れてる位鍛えてるし、顔は20年位ほぼ変化ないのよ? 年々滴る色気が増量して恐ろしいわ。私なんてどんどん体力落ちるし体もたるんできてるのに。全くふざけてるわよね神様も」
と途中からぷんぷん怒っていた。
でもそんな母様もとても40には見えないんだけど。
まあジークがイケメンだとあちこちの女性が認識してしまったら、モテまくって私のようなお子様は相手にされなくなるかも知れないから、申し訳ないけど内心ではモテないでくれてありがとうと思っている。
「ん? なんだい? 何か変かな?」
私がじっと見ていたのでジークが首を傾げた。
「いえ、旦那様がいい男だなぁ、って思って」
「クロエぐらいだからねそんな事言ってるのは」
ベッドに腰を下ろすと頭を撫でる。
「でも、ずっとそう思っててくれるように努力するから、嫌いにならないでくれるといいな」
「ならないわよ。もう15年の付き合いでしょう? 嫌になる所があればとっくになってるわよ」
カチリ、とサイドランプが一番小さな灯りになって、ベッドにジークが入ってきた。
「……ありがとう。それじゃ私の可愛い奥さん」
「はい……?」
「夫として、新妻を襲ってもいいかな?」
そういうと返事も待たずに抱き寄せられた。密接してジークの心臓の音がすごく早いのが分かる。私もだけど。
「よ、よろしくお願いいたします」
「ん……」
優しいキスをしながら、胸に手を置かれるとゆっくり揉まれる。
「ごめんなさいね、その、余り大きくなくて」
「え? いや別に大きい方が好きとかないけど。
好きな女性の胸が一番だから」
ちゅ、ちゅ、とついばまれるようなキスをしている内にネグリジェがいつの間にか脱がされていた。ブラジャーあっても確かに意味はなかったかも知れない。
「あ」
胸の頂をくわえられ吸われると、ちょっと変な感じになった。
「痛い?」
「……え、んと、痛くはなくて、その、何と言うか感じた事がない……ぞわぞわする感じ?」
「それは気持ちいいんだよ。ほら、乳首が立ってる」
「ひゃぅんっ」
ピンッ、と弾かれて思わずのけ反る。
「ああクロエが可愛い……出来るだけ痛くないようにするからね。私も初めてだけど男は気持ちいいだけだから、クロエにも気持ちよくなって欲しい」
愛撫をつづけるジークの台詞に素通りできない言葉があった。
「ジーク、ジークが初めてって嘘よね? だって37にもなってたら娼館とかにも……」
「──行ってないよ。
自分でずっと処理してたから。愛のないセックスは私には無理だから……まあこの顔だし、行ったとしても嫌々相手されるのは目に見えてたし」
「じゃ、お互い初めての人になるのね」
「私は最初で最後の人だけどねクロエが」
するりとパンティーが下ろされる。本当に初めてなのかと思うほどの手際のよさだ。
「ああ良かった濡れてる」
にゅるっ、と大事なところに指が這わされ思わず電気が流れたような刺激がありビクッとする。
「ここにね、私のモノが入るんだよ? ああでもまだ狭すぎてこれじゃ無理だ。1回はイかないと」
くにゅくにゅと柔らかく刺激され、何だかとても気持ちいい。
「んんんっ」
「気持ちいい所は教えて。覚えるから」
指を1本挿れられて、あちこち動かされる。自分の中からぬるりとした液が溢れている気がする。
どうしてだろう。最初はすごく痛いと聞いていたけど、ジークが慎重なのか気持ちいいだけで痛くない。
「……ごめんね、どうしても舐めたい」
ふわふわした高揚感で反応が遅れていたら、ジークが足の間に顔を入れて何とアソコを舐めている。
「やめてジーク、汚ないわっ」
「汚なくないよ。クロエの蜜が甘くて美味しい」
「あっ、っ」
舌での刺激と指の刺激でぶわっと毛が逆立つような衝撃が来て一気に体が浮き上がったような気がした。
息が上がり心臓がばくばくする。
「……すごい指が締め付けられてる。多分イけたんだね。でもまだ無理かな。もう1回位イっておこうか」
また動き出した指と舌に翻弄されて、よく分からない内に2度も同じようにイかされた。
「ジーク、も、もう無理、私……」
これ以上イかされたら気を失いそうだ。
「そうだね。私ももう無理かも知れない。そろそろ挿れていいかい?」
先程から太ももに感じた熱いモノが、私から流れ出た愛液をまとわせて入口を往き来する。視界に入ったジークのアレを思わず二度見してしまった。
待って待って、ちょっと話に聞いてたより大きいんじゃないかしら。あれ絶対無理じゃない? 指なんか比べ物にならない太さなんだけど。
グイッと挿入される雄は私の中をメリメリとこじ開けるように進んで来る。苦しい。
「……痛っ……」
「ごめん、もう少しだから」
まだ挿入るの? とおののいた。
「──ほら、全部挿入ったよ。まだ動かないから力を抜いてクロエ」
ジークの方も額から汗が流れ、眉間にシワが寄っている。
ものすごい圧迫感と異物感。
これがジークののアレなのね……。
でも、すごく痛いと聞いていたけど、耐えられる痛みだ。きっとジークが色々してくれたからだろう。
「ゆっくり動いていいかい?」
「だ、大丈夫」
じれったいほど気遣われた速度で抽送が始まる。
「どうしよう……気持ち良すぎてすぐ出そうだ……」
と焦ったようなジークの呟きが聞こえた。
「ジーク、私平気だから……好きなようにして?
私も沢山気持ち良くして貰ったから、ジークが気持ち良くなってくれないと不公平だもの」
「……っ、ああもうクロエはっ!」
「んぁっ!」
ガツンッ、と最奥に当たるような衝撃で目がチカチカした。そのままジークはガツガツと早い動きで抽送し、
「くっ……」
最後に最奥まで突き入れたと思ったら、ジークの雄はビクビクとするのを感じて、お腹の中に熱い何かが広がった。
「……ジークも、イったの?」
「うん。──どうしよう」
「何が?」
「……全然足りない。いや、こんな直ぐじゃなくて、もっと頑張れるんだ私は。初めてであっという間だったけど、違うんだ」
……イヤな予感がした。
あの、私初めてで。もうちょっと無理と言うかぐったりな感じで。充分お腹いっぱい……だから何でまた動き出すの。
どうしてまだ大きいままなの。
「クロエッ、死ぬまで愛してる。ここで私の形を覚えて。というか他の男に挿れさせる訳ないけど」
ていうか何だか痛みが薄れて私も少し動かれると気持ち良かったりする事もあるんだけど、いや、でも。
「ダメだ! クロエの中が気持ち良すぎる……」
ほどなくして再度吐精したジークが荒い息をついた。
「あ、あの……終わったのなら抜いてく……」
「こんなんじゃクロエに中イキなんて教えられないじゃないか! 大丈夫だからねクロエ、まだ全然萎えないから。何しろ覚えたての若造と同じだからね!
経験を積めばクロエももっと気持ち良くなれるから。私も力の限り頑張るから」
──あの、私は全然大丈夫じゃないんだけど。
母様の言ってたアレって童貞って事だったの?
それから夜が白むまでジークに責め立てられ、最終的に気を失うように眠りに落ちた私は、朝目覚めてトイレに立とうとして足がガクガクしてまともに歩けないという人生初の経験をした。
……確かにまともに歩けるようになるまでは実家に顔は出さない方が良さそうだわ。
そのあとジークの4日間の休みは、ベッドにいるかお風呂かご飯かのローテーションで、超ご機嫌なジークがいそいそとお姫様抱っこで私の世話をしている姿を屋敷の使用人にアピールしまくる羽目になり、死ぬほど恥ずかしい思いをした。
アレを舐めたらいけない、という母様の言葉は重かった。
でも幸せそうなジークが可愛いので許してしまう自分も反省が必要だ。
高位貴族や隣国のお偉方がそこらじゅうにいる立食パーティーという戦場を何とか乗り越えて、私とジークはようやく新居となる屋敷へ帰って来た。
帰って来た、と言えるのが嬉しい。
ここはジークと私のマイホームだものね。
私との結婚後を考えてジークがこちらに来てから建てた屋敷だ。
シャインベック家からも遠くないし、町には歩いて10分ちょっとで行けるかなり利便性もいい。
別棟があり、そっちは住み込みでメリッサも入れて5人の使用人が住んでいるが、こちらの母屋自体は大きな寝室とそれぞれの個室、書斎、客室2つに広めのキッチンにリビングダイニング、ちょっと気が早いけど子供部屋も3部屋あり計10部屋。あとバスルームとトイレが2つずつ。
女性は主に美容の関係で長風呂の人が多いので、男性用と女性用にと複数ある屋敷が多いのだ。
正直ここまで広々とした屋敷に住むのは少し贅沢な気がしたのだが、子供が生まれて手狭になって建て直す方が贅沢だろう? とジークに言われてそれもそうかと考え直した。
母様のように旦那様の食事は私が作りたかったので、コックは雇っておらず、メイド3人に庭師兼雑用の男性、あと隣国から一緒に連れて来た執事のメイヤーと私たちの計7人がフェルーシー家……とと、もう王族じゃないからフェルーシーじゃなかったわね、アーデルハイド家の新しいファミリーだ。
でもアーデルハイドミレニアカリクバーン国からとってアーデルハイドを名乗れって国王陛下も無茶言うわよね。
王族絡みだって知らない人にもバレバレじゃないの。
「ギュンターお義兄様と呼んでくれないか」
とか言ってたけど当分陛下と呼ぶ事にしよう。
ジークもそれでいいって言ってたし。
「疲れただろうクロエ? あれでもかなり断ったんだけど……ごめんね」
溜め息が聞こえたのか、ジークが私の顔をすいっと下から覗き込んだ。
「一生に一度の事だもの、全然平気よ」
私はジークに抱きついた。
「ようやく私の旦那様ねジークも!」
「クロエも私の奥さんだ。長かったね本当に……」
ぎゅっと抱き締め返すと普段なら優しく頭を撫でていた手が私の顎をクイッと上げて、唇を奪った。
今まで経験した記憶がないほど情熱的で、舌を絡めてくるような濃厚さに呼吸のしかたも分からなくなって頭がぼうっとしてしまった。
「……ジ、ジーク」
ようやく唇が離れた時には息も絶え絶えだった。
別人のようなジークに少し驚いた。
「本当に……クロエが思っている以上に私には長かったんだ……こんなに年が離れてるんだから、いつか私から離れてもっと近い年頃の男に行ってしまうんじゃないかとずっと不安だった……私はそれでも仕方ないと思っていた。だって出会ったのが3歳と22歳の時だからね」
ジークが苦笑していつものように頭を撫でた。
「クロエは小さな頃から私の天使で、将来はリーシャさんのようにとんでもない美人になるのが分かりきっていた。
こんな私を慕ってくれただけでも御の字だ、一時的にでも素敵な女性に好意を持たれる喜びをくれたと思えばいいと。──だけど年々クロエは可愛くなるし、私への好意も変わらないし、私も本気になってもいいかもと思ったんだ。たとえ最後に傷ついたっていいじゃないか、お前は不細工な癖にこんな美人に好かれてたんだぞ、って未来の自分に自慢してやろうと思ってね」
「ジーク……」
「でも、本気になればなるほど他の男に持っていかれたくなくて、隣の国にいるのが辛くなってきた。
兄上に仕事で結果を出すからガーランド国に行かせてくれって土下座して頼み込んだ。
うちの兄上は弟である私を便利に使っていたから、あのままだと無事結婚が出来るまではずっとアーデルに引き留められてたに違いなかったし」
「まあ……」
初めて聞いた。たまたまこっちに来られる仕事があったのだと思っていた。
「最後まで『もしクロエが他の男性と恋仲になってお前と結婚しなかったら、同じ国には居づらくないか』って言われたけど、もしそうであっても私はクロエの近くに居たかった。
……いい年して気持ち悪いと思われてもしょうがないけど、最初で最後の恋だと思ってたから」
私は思わずジークを強く抱き締めて告げた。
「私は浮気はしないタイプなのよ。
やあね知らなかったの?」
「うん、そうだね。知ってたけど、時は流れるから。
ほら、出会った頃は僕とか言ってた私ももう37になったし、クロエから見たら相当なオジサンだろ?」
「んー、小さな時から見てるから、年を取った感じは余りないのよね。私はずっと宝石のような瞳の王子様だと思ってたし、父様の次に格好いい男性だと思ってたもの。……あ、でも今は違うけど」
「違うって?」
「父様の次だと思ってたけど、父様よりイケメンだったのよね私の旦那様」
「クロエ……っっ!」
余りに力強い抱擁にむせた。力が強すぎる。
ゲホゲホいってる私にすぐ気づいて慌てて力を抜いてくれた。
「ごめんクロエ! ちょっと感極まって思いっきり……」
「だ、大丈夫」
ずっとエントランスにいる状況も何とかしたいのだけど、と思っていると、ジャストタイミングでメリッサが現れた。
「旦那様、奥様お二方ともお疲れかと思いましたので、私どもでお風呂の用意をしております。
すぐ入れますわ。
先ずは疲れを落としてからごゆっくりされるのがよろしいかと思われますが」
「ああ、そうだね! 私も家に入った途端に疲れた妻を労ることも忘れてた。クロエ、またあとで」
恥ずかしげに手を上げると、ジークもお風呂に入るべく去っていった。
「ありがとうメリッサ。寒くて体が冷えかけてたのよ」
「私はクロエ様専属メイドでございますから。
あの……それと呼び方ですが、クロエ奥様の方がよろしいですか? それとも若奥様ですとか」
「普通にクロエでいいわよ、体が痒くなるじゃない」
「かしこまりました。それではクロエ様バスルームへ。
私が腕によりをかけて磨かせて頂きますわ」
「……え? 自分でやるわよ」
「ルーシー先生が初夜には初夜なりの磨き方があるとしっかり教わりました」
「今度は師匠でなく先生なのね。まあいいわ。私には磨き方は分からないものね。メリッサにお願いするわ、ちょっと裸を見られるのは恥ずかしいけど」
シャインベック家でも小さな頃はルーシーにお世話になっていたが、流石に12、3歳位からは1人で入るか母様やアナと一緒にしか入っていない。ウチは自分の事は自分で出来るようにという家訓だったので、基本的にある程度の年になるとメイドに頼むことはなかったし。
以前同級生だった侯爵家や伯爵家の中には、自分で洗ったことなんてないわという女子もいたので、家によって違うのだろう。ウチはかなり庶民的らしい。
「慣れて下さいませ」
「慣れたくはないわねー。あ、いけない着替えを──」
「用意しております。ささ、お風呂へ」
急かされるようにバスルームへと促される。
そういえば他の部屋は何度か遊びに来たので見たことがあるがバスルームは見たことがなかったな。
私は楽しみにしつつ、ようやく張っていた気持ちが弛むのを感じた。
□■□■□■□■□■□■
「……」
何故だろう。
お風呂に入る前より疲れた気がする。
メリッサの念入りな全身マッサージと柑橘系の香りのトリートメントでお肌も髪も艶々ではあるのだが、この膝もろくに隠れない薄手のネグリジェは何とかならなかったのだろうか。
それにパンティーは圧倒的に布地が足りてない。
お尻が半分出てしまっているじゃないの。
それにブラジャーはどこブラジャーは。
「どうせ脱がされるんですから必要ありませんわ」
ホホホホ、とメリッサに笑顔で返されたが、せめて脱がされるまでは大きくない胸を寄せて上げておきたかったのに。
何故アナは結構大きく育ったのに、私は母様に似てささやかなのかしら。
双子なのに成長が違うってずるいわよね。
母様は、
「……大きすぎない方が老後垂れないからいいのよ。
それにルーシーが言ってたけど、大きいと肩こりがひどいんですって」
と唇を噛みながら悔しそうに教えてくれたけど、肩こりがあっても大きい方が色気があって良かったんじゃないかと切なくなった。
くよくよ悩んでいると、寝室のドアがノックされた。
「入っていいかなクロエ?」
私はサッと毛布に潜り込み、どうぞと返事をした。
……ああ、ジークは本当にセクシーだわ。
大人の色気とパジャマからも分かる筋肉質な体つき。その上完璧に私好みな顔立ちである。
未だに父様やジークが何故不細工と言われるのか分からないけれど、母様が言うには人の好みは十人十色だし、私やクロエみたいなアッサリした顔がたまたまこの国の流行りみたいだから、ジークライン王子や父様みたいな彫りの深いイケメンは残念ながら受けが悪いのよね、と苦笑していた。
「でも、逆に言えばライバルが現れる可能性も少ないし、私たちの好きな人をほぼ独占出来るんだから、これはこれでアリよね。
ダークなんか未だに腹筋割れてる位鍛えてるし、顔は20年位ほぼ変化ないのよ? 年々滴る色気が増量して恐ろしいわ。私なんてどんどん体力落ちるし体もたるんできてるのに。全くふざけてるわよね神様も」
と途中からぷんぷん怒っていた。
でもそんな母様もとても40には見えないんだけど。
まあジークがイケメンだとあちこちの女性が認識してしまったら、モテまくって私のようなお子様は相手にされなくなるかも知れないから、申し訳ないけど内心ではモテないでくれてありがとうと思っている。
「ん? なんだい? 何か変かな?」
私がじっと見ていたのでジークが首を傾げた。
「いえ、旦那様がいい男だなぁ、って思って」
「クロエぐらいだからねそんな事言ってるのは」
ベッドに腰を下ろすと頭を撫でる。
「でも、ずっとそう思っててくれるように努力するから、嫌いにならないでくれるといいな」
「ならないわよ。もう15年の付き合いでしょう? 嫌になる所があればとっくになってるわよ」
カチリ、とサイドランプが一番小さな灯りになって、ベッドにジークが入ってきた。
「……ありがとう。それじゃ私の可愛い奥さん」
「はい……?」
「夫として、新妻を襲ってもいいかな?」
そういうと返事も待たずに抱き寄せられた。密接してジークの心臓の音がすごく早いのが分かる。私もだけど。
「よ、よろしくお願いいたします」
「ん……」
優しいキスをしながら、胸に手を置かれるとゆっくり揉まれる。
「ごめんなさいね、その、余り大きくなくて」
「え? いや別に大きい方が好きとかないけど。
好きな女性の胸が一番だから」
ちゅ、ちゅ、とついばまれるようなキスをしている内にネグリジェがいつの間にか脱がされていた。ブラジャーあっても確かに意味はなかったかも知れない。
「あ」
胸の頂をくわえられ吸われると、ちょっと変な感じになった。
「痛い?」
「……え、んと、痛くはなくて、その、何と言うか感じた事がない……ぞわぞわする感じ?」
「それは気持ちいいんだよ。ほら、乳首が立ってる」
「ひゃぅんっ」
ピンッ、と弾かれて思わずのけ反る。
「ああクロエが可愛い……出来るだけ痛くないようにするからね。私も初めてだけど男は気持ちいいだけだから、クロエにも気持ちよくなって欲しい」
愛撫をつづけるジークの台詞に素通りできない言葉があった。
「ジーク、ジークが初めてって嘘よね? だって37にもなってたら娼館とかにも……」
「──行ってないよ。
自分でずっと処理してたから。愛のないセックスは私には無理だから……まあこの顔だし、行ったとしても嫌々相手されるのは目に見えてたし」
「じゃ、お互い初めての人になるのね」
「私は最初で最後の人だけどねクロエが」
するりとパンティーが下ろされる。本当に初めてなのかと思うほどの手際のよさだ。
「ああ良かった濡れてる」
にゅるっ、と大事なところに指が這わされ思わず電気が流れたような刺激がありビクッとする。
「ここにね、私のモノが入るんだよ? ああでもまだ狭すぎてこれじゃ無理だ。1回はイかないと」
くにゅくにゅと柔らかく刺激され、何だかとても気持ちいい。
「んんんっ」
「気持ちいい所は教えて。覚えるから」
指を1本挿れられて、あちこち動かされる。自分の中からぬるりとした液が溢れている気がする。
どうしてだろう。最初はすごく痛いと聞いていたけど、ジークが慎重なのか気持ちいいだけで痛くない。
「……ごめんね、どうしても舐めたい」
ふわふわした高揚感で反応が遅れていたら、ジークが足の間に顔を入れて何とアソコを舐めている。
「やめてジーク、汚ないわっ」
「汚なくないよ。クロエの蜜が甘くて美味しい」
「あっ、っ」
舌での刺激と指の刺激でぶわっと毛が逆立つような衝撃が来て一気に体が浮き上がったような気がした。
息が上がり心臓がばくばくする。
「……すごい指が締め付けられてる。多分イけたんだね。でもまだ無理かな。もう1回位イっておこうか」
また動き出した指と舌に翻弄されて、よく分からない内に2度も同じようにイかされた。
「ジーク、も、もう無理、私……」
これ以上イかされたら気を失いそうだ。
「そうだね。私ももう無理かも知れない。そろそろ挿れていいかい?」
先程から太ももに感じた熱いモノが、私から流れ出た愛液をまとわせて入口を往き来する。視界に入ったジークのアレを思わず二度見してしまった。
待って待って、ちょっと話に聞いてたより大きいんじゃないかしら。あれ絶対無理じゃない? 指なんか比べ物にならない太さなんだけど。
グイッと挿入される雄は私の中をメリメリとこじ開けるように進んで来る。苦しい。
「……痛っ……」
「ごめん、もう少しだから」
まだ挿入るの? とおののいた。
「──ほら、全部挿入ったよ。まだ動かないから力を抜いてクロエ」
ジークの方も額から汗が流れ、眉間にシワが寄っている。
ものすごい圧迫感と異物感。
これがジークののアレなのね……。
でも、すごく痛いと聞いていたけど、耐えられる痛みだ。きっとジークが色々してくれたからだろう。
「ゆっくり動いていいかい?」
「だ、大丈夫」
じれったいほど気遣われた速度で抽送が始まる。
「どうしよう……気持ち良すぎてすぐ出そうだ……」
と焦ったようなジークの呟きが聞こえた。
「ジーク、私平気だから……好きなようにして?
私も沢山気持ち良くして貰ったから、ジークが気持ち良くなってくれないと不公平だもの」
「……っ、ああもうクロエはっ!」
「んぁっ!」
ガツンッ、と最奥に当たるような衝撃で目がチカチカした。そのままジークはガツガツと早い動きで抽送し、
「くっ……」
最後に最奥まで突き入れたと思ったら、ジークの雄はビクビクとするのを感じて、お腹の中に熱い何かが広がった。
「……ジークも、イったの?」
「うん。──どうしよう」
「何が?」
「……全然足りない。いや、こんな直ぐじゃなくて、もっと頑張れるんだ私は。初めてであっという間だったけど、違うんだ」
……イヤな予感がした。
あの、私初めてで。もうちょっと無理と言うかぐったりな感じで。充分お腹いっぱい……だから何でまた動き出すの。
どうしてまだ大きいままなの。
「クロエッ、死ぬまで愛してる。ここで私の形を覚えて。というか他の男に挿れさせる訳ないけど」
ていうか何だか痛みが薄れて私も少し動かれると気持ち良かったりする事もあるんだけど、いや、でも。
「ダメだ! クロエの中が気持ち良すぎる……」
ほどなくして再度吐精したジークが荒い息をついた。
「あ、あの……終わったのなら抜いてく……」
「こんなんじゃクロエに中イキなんて教えられないじゃないか! 大丈夫だからねクロエ、まだ全然萎えないから。何しろ覚えたての若造と同じだからね!
経験を積めばクロエももっと気持ち良くなれるから。私も力の限り頑張るから」
──あの、私は全然大丈夫じゃないんだけど。
母様の言ってたアレって童貞って事だったの?
それから夜が白むまでジークに責め立てられ、最終的に気を失うように眠りに落ちた私は、朝目覚めてトイレに立とうとして足がガクガクしてまともに歩けないという人生初の経験をした。
……確かにまともに歩けるようになるまでは実家に顔は出さない方が良さそうだわ。
そのあとジークの4日間の休みは、ベッドにいるかお風呂かご飯かのローテーションで、超ご機嫌なジークがいそいそとお姫様抱っこで私の世話をしている姿を屋敷の使用人にアピールしまくる羽目になり、死ぬほど恥ずかしい思いをした。
アレを舐めたらいけない、という母様の言葉は重かった。
でも幸せそうなジークが可愛いので許してしまう自分も反省が必要だ。
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