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第1章
第166話《総一郎、発狂》
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総一郎の言葉に、巧斗さんがまた急激に恐ろしい威嚇フェロモンを放出してしまい、強いαの総一郎は、「ぐっ!」と唸りながら、なんとか踏ん張っているものの、ようやく立ち上がって総一郎の背後に近づいていたひながまた腰を抜かして、地面を這いつくばってその場から慌てて離れた。
(…もしかしてひな、巧斗さんのフェロモンがトラウマになってないか?)
「……はぁ、色々ツッコミたいところはあるけど…なんで突然結婚なの?それに番になるっていうのも、俺にとっては一生が関わってくる問題だから、ちゃんとお互いの両親に挨拶してからじゃないと絶対嫌なんだけど。」
この一言に、巧斗さんの圧に睨み返して対抗していた総一郎は、こちらを振り返って一瞬言葉を詰まらせるも、すぐに肩をすくめて微笑んだ。
こいつにとっては番契約なんてなんてことはないイベントなのだろうが、俺にとっては違う。
番――それはΩにとって生涯一度きり、唯一無二の相手を選ぶ重要な決断だ。
αには無制限に番が作れる自由があるが、Ωは一度その相手と番うと、一生その相手と生涯を共にしなければならない。
だからこそ、軽々しく次の発情期に番おうなんて提案してくる総一郎が、どれだけ俺の存在を軽視しているか、この一言だけでも十分に伝わってくるのだ。
「はは…そんなに心配しなくても、すずめのご両親にはちゃんとご挨拶するよ。なんなら今日にでもすずめのご実家に伺おうかと思うんだけど、どうかな?」
「いや……何でうちの両親だけ?総一郎君のご両親は?というか何気に俺、実際に会った事も無いんだけど、いつ合わせてくれる?今日中に会わせてくれるの??」
俺の言葉に、総一郎はひゅっと息を飲んで黙り込む。
(やはりな。この様子を見るにこいつは自分の両親に俺の事を話してすらいない可能性が高い。なんせ家族ぐるみでひなとの縁談を進めるくらいだ。俺の存在をご両親に知られると面倒な事になるのだろう。)
「…………。それは…、追々ね?僕の父さんは仕事が忙しくて、出張で海外にいてさ…。すずめも分かってくれるよね?ああでも、メールやメッセージでのやり取りなら可能だと思うよ。」
「…………。」
ああ、また嘘か。
番という大事な契約の挨拶にメールかメッセージって…そんないくらでも偽装できるツールでやり取りだなんて普通有り得ないだろう。
例え、万が一の可能性で本当に海外にいたとしても、せめて電話とかテレビ電話とかいくらでも誠意を見せる方法があるはずだ。
「…まあいいや(どうせ別れるし)。それで?さっきの結婚がどうたらっていうしょうもない話で、嘘の告白は終わったってことでいいのかな?」
総一郎は先ほどまで、気まずそうに目を泳がせていたかと思うと、急に憤慨して俺を糾弾してくる。
「なっ!しょうもないって……!その言い方は一体なんなんだい?!すずめ…やはり今の君は変だよ!きっとこのストーカに洗脳されてるんだね?可哀そうに。今度精神病院に連れて行ってあげないと…。
…まぁ今はそれよりコンテストも近いことだし、別れ話ゲームはこれぐらいで勘弁してくれないか?どうしても気が収まらないなら、続きは今日僕たちのマンションに帰ってからにしよう?ね?」
物事を真剣に受け止めようとしない総一郎の言葉に、俺は眉をひそめる。
なんだか強制的に話を終わらせようとしているのが見え見えだし、そもそもいつから俺が彼のマンションに一緒に帰ることになったんだ?
「別れ話ゲームって…まさか俺の話が冗談だとでも思ってるの?…いっとくけど俺は本気だから。
…結局、総一郎君から嘘を打ち明けてくれなかったって事は、俺と別れるって事でいいんだよね?」
「は_____?」
冗談だと思わせない様に語気を鋭くさせた俺の声に、今度こそ総一郎の表情がピシりと固まる。
そして、チッと舌打ちしてこちらを物凄い形相で見下した後、圧をかけるような低い声で脅し?をかけてきた。
「あのさぁ…すずめ、僕が下手に出てあげたからって、いい加減ちょっと悪ふざけがすぎるよ??さっきから嘘、嘘、嘘って…はぁ、このままだと僕、すずめのことを本気で嫌いになってしまいそうだな。このままいくと本当に別れ話になっちゃうかもね?」
(?なんか逆ギレしだしたぞ、こいつ。)
嫌いになりそうだなんて、今まで表面上だけとはいえ、恋人として付き合ってきた俺に対して、随分な言い草だ。
「そっか。俺のほうこそ、そんなこと言う総一郎君なんて大嫌いだよ。お揃いだね。じゃぁ荷物は近日中に取りにくるからまとめておいてくれると嬉しいな。」
総一郎の脅し?に全く動じず、冷たく言い放った俺の言葉に、総一郎は大きく目を見開いてたじろいだ。
「はぁっ?!?!
ま、待て、待ってくれ!!お揃いじゃない!あってたまるか!!今のはほんの言葉の綾でっ………クソっ!!…なんでこんなことに……!!!嫌いなんて嘘だよね?すずめはそんな事言わない…言わない言わない言わない言わない言わない言わない言わない言わない言わない言わない!うあああぁあぁぁぁあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
自分の思い通りに事が運ばないのが気にくわないのか、苛立った総一郎は狂ったように頭をかきむしり、獣のような咆哮を飛ばした。
横目でその様子を蔑むように一瞥していた巧斗さんが、のたうちまわる総一郎の腕をすっと手放し、俺のほうへ歩み寄ってきた。
巧斗さんの目は酷く優しく、包み込むような温かさを帯びていて、そして、俺の肩をそっと抱きしめる。
(…もしかしてひな、巧斗さんのフェロモンがトラウマになってないか?)
「……はぁ、色々ツッコミたいところはあるけど…なんで突然結婚なの?それに番になるっていうのも、俺にとっては一生が関わってくる問題だから、ちゃんとお互いの両親に挨拶してからじゃないと絶対嫌なんだけど。」
この一言に、巧斗さんの圧に睨み返して対抗していた総一郎は、こちらを振り返って一瞬言葉を詰まらせるも、すぐに肩をすくめて微笑んだ。
こいつにとっては番契約なんてなんてことはないイベントなのだろうが、俺にとっては違う。
番――それはΩにとって生涯一度きり、唯一無二の相手を選ぶ重要な決断だ。
αには無制限に番が作れる自由があるが、Ωは一度その相手と番うと、一生その相手と生涯を共にしなければならない。
だからこそ、軽々しく次の発情期に番おうなんて提案してくる総一郎が、どれだけ俺の存在を軽視しているか、この一言だけでも十分に伝わってくるのだ。
「はは…そんなに心配しなくても、すずめのご両親にはちゃんとご挨拶するよ。なんなら今日にでもすずめのご実家に伺おうかと思うんだけど、どうかな?」
「いや……何でうちの両親だけ?総一郎君のご両親は?というか何気に俺、実際に会った事も無いんだけど、いつ合わせてくれる?今日中に会わせてくれるの??」
俺の言葉に、総一郎はひゅっと息を飲んで黙り込む。
(やはりな。この様子を見るにこいつは自分の両親に俺の事を話してすらいない可能性が高い。なんせ家族ぐるみでひなとの縁談を進めるくらいだ。俺の存在をご両親に知られると面倒な事になるのだろう。)
「…………。それは…、追々ね?僕の父さんは仕事が忙しくて、出張で海外にいてさ…。すずめも分かってくれるよね?ああでも、メールやメッセージでのやり取りなら可能だと思うよ。」
「…………。」
ああ、また嘘か。
番という大事な契約の挨拶にメールかメッセージって…そんないくらでも偽装できるツールでやり取りだなんて普通有り得ないだろう。
例え、万が一の可能性で本当に海外にいたとしても、せめて電話とかテレビ電話とかいくらでも誠意を見せる方法があるはずだ。
「…まあいいや(どうせ別れるし)。それで?さっきの結婚がどうたらっていうしょうもない話で、嘘の告白は終わったってことでいいのかな?」
総一郎は先ほどまで、気まずそうに目を泳がせていたかと思うと、急に憤慨して俺を糾弾してくる。
「なっ!しょうもないって……!その言い方は一体なんなんだい?!すずめ…やはり今の君は変だよ!きっとこのストーカに洗脳されてるんだね?可哀そうに。今度精神病院に連れて行ってあげないと…。
…まぁ今はそれよりコンテストも近いことだし、別れ話ゲームはこれぐらいで勘弁してくれないか?どうしても気が収まらないなら、続きは今日僕たちのマンションに帰ってからにしよう?ね?」
物事を真剣に受け止めようとしない総一郎の言葉に、俺は眉をひそめる。
なんだか強制的に話を終わらせようとしているのが見え見えだし、そもそもいつから俺が彼のマンションに一緒に帰ることになったんだ?
「別れ話ゲームって…まさか俺の話が冗談だとでも思ってるの?…いっとくけど俺は本気だから。
…結局、総一郎君から嘘を打ち明けてくれなかったって事は、俺と別れるって事でいいんだよね?」
「は_____?」
冗談だと思わせない様に語気を鋭くさせた俺の声に、今度こそ総一郎の表情がピシりと固まる。
そして、チッと舌打ちしてこちらを物凄い形相で見下した後、圧をかけるような低い声で脅し?をかけてきた。
「あのさぁ…すずめ、僕が下手に出てあげたからって、いい加減ちょっと悪ふざけがすぎるよ??さっきから嘘、嘘、嘘って…はぁ、このままだと僕、すずめのことを本気で嫌いになってしまいそうだな。このままいくと本当に別れ話になっちゃうかもね?」
(?なんか逆ギレしだしたぞ、こいつ。)
嫌いになりそうだなんて、今まで表面上だけとはいえ、恋人として付き合ってきた俺に対して、随分な言い草だ。
「そっか。俺のほうこそ、そんなこと言う総一郎君なんて大嫌いだよ。お揃いだね。じゃぁ荷物は近日中に取りにくるからまとめておいてくれると嬉しいな。」
総一郎の脅し?に全く動じず、冷たく言い放った俺の言葉に、総一郎は大きく目を見開いてたじろいだ。
「はぁっ?!?!
ま、待て、待ってくれ!!お揃いじゃない!あってたまるか!!今のはほんの言葉の綾でっ………クソっ!!…なんでこんなことに……!!!嫌いなんて嘘だよね?すずめはそんな事言わない…言わない言わない言わない言わない言わない言わない言わない言わない言わない言わない!うあああぁあぁぁぁあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
自分の思い通りに事が運ばないのが気にくわないのか、苛立った総一郎は狂ったように頭をかきむしり、獣のような咆哮を飛ばした。
横目でその様子を蔑むように一瞥していた巧斗さんが、のたうちまわる総一郎の腕をすっと手放し、俺のほうへ歩み寄ってきた。
巧斗さんの目は酷く優しく、包み込むような温かさを帯びていて、そして、俺の肩をそっと抱きしめる。
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