上 下
164 / 169
第1章

第164話《ついにすずめに別れ話を持ちかけられて発狂の総一郎》

しおりを挟む
「は…?嘘……?………はは、一体何のことだか…。」
「…またすっとぼけるつもりなの?俺、総一郎君が嘘をついている事は分かってるんだからね。全部正直に白状するまでは絶対に許さないから。」

この期に及んで嘘の一つも認めようとしない総一郎に呆れながらも、俺は更に追及を続ける。
まぁ、俺に許されなかったところで総一郎には何の痛手もないだろうけど、俺だって一度くらいドラマみたいに決め台詞を言ってみたかったんだ。


「…はあ……。すずめってば、僕に向かってそういう言い方しちゃうんだ?大方このストーカー野郎に唆されているんだろうけど、あまりハメを外し過ぎると、僕が本当にすずめの事を嫌いになっちゃうかもしれないよ?」


俺如きに嘘つき呼ばわりされたことが、余程腹が立ったらしい総一郎は、一旦は顔面蒼白になりながらも、すぐに高圧的な鋭い顔つきになって俺を脅してくる。

(…嫌いになるかもしれないって、俺は元からその覚悟で復讐しているんだから、今更その脅しに屈するはずが無いだろうに。)

どうやら、総一郎の頭の中での俺は未だに数日前までの総一郎を中心に世界が回っていた脳内お花畑の俺のままなのだろう。



…このままだと、100%別れ話に発展するんだろうけど、振るのは絶対に総一郎に先を越されたくないので、我先にと俺の方から別れ話を持ちかける。


「うん…総一郎君がそういうなら別に嫌いになってもいいよ。なんならもう、今ここで俺達別れようか?……俺だって嘘つきは嫌いだし。」

「…………………………へ?」



俺が別れを告げた途端、総一郎から聞いた事も無いような間抜けな裏返ったような声が聞こえた。
まさか総一郎にベタ惚れだった俺からそういう言葉が出てくるだなんて思ってもみなかったのだろう。


「……??…いま……なん、て……?」

「だから、もう俺達別れようかって。コンテストまであまり時間ないんだから何回も言わせないでよ。」


俺の言葉が上手く飲み込めなかったらしく、総一郎は顔から表情をなくしながら俺に何と言ったかを聞き返してくる。

それに対し、俺がもう一度答えてやると、総一郎はバッグを床にボトっと落としてふらついて、総一郎の腕を掴んでいた巧斗さんが、それを王子様みたいに咄嗟に支える………訳もなくあっさりと膝から崩れ落ちた。



(………???なんか反応が大袈裟じゃないか…?

いや、でも良い気味だな。ははは!総一郎め。どうせ振るのは自分の方からだと思っていて、公衆の面前で俺から別れると言われてショックを受けたんだろう。もし自分が冴えないΩから振られた等という噂が広まれば大恥をかくからな。)


正直な所、俺からの別れ話で総一郎がここまで動揺するとは思っていなかったので、予想外にダメージを食らわせたことに快感を覚えてしまう。そういえばプライドの塊だったなこいつ。



「別れる……?俺と…すずめが……??は、嘘だ…。ははははは。すずめは絶対にそんな事を言わない。俺…僕達はそんな事で別れられるような関係性じゃないだろう……?!いや待て…そうか…!このストーカー野郎がすずめを脅迫して無理やり言わせてるんだね?!ははは…!×してやる×してやる×してやる×してやる×してやる×してやる×してやる×してやる×してやる×してやる×してやる×してやる…。」


「!?!?ちょっ、巧斗さんは関係ないでしょ!もう、分かったから一旦落ち着いて話し合…『すずめ?俺の事は《一切》気にせず続けてください。^^』…あ、う、うん…?」



俺が総一郎を振ることが余程信じられないのか、今度は巧斗さんのせいにし出して、《×す》等と殺意を持って呟きはじめたので、焦って別れ話を中断して落ち着かせようとすると、巧斗さんがまたあの綺麗すぎて圧を感じるような笑顔で続きを促した。

(…巧斗さんがそういうなら…申し訳ないけど総一郎への追撃を続行させてもらおう。)






ただ、ここでちょっと総一郎をもっと揺さぶる案を思い付いた俺は、咳ばらいをして敢えて総一郎に優しい言葉をかけてやる。


「えっと…じゃぁ…コホン…、まぁでも俺としても総一郎君の事は本当に大事に思ってきたからさ、出来る事なら別れたくはないよ?」


「!!すずめ…!そうだよね、僕達はあんなにも愛し合って…!!」



俺の甘い対応に巧斗さんの方からまた『すずめ?』と笑顔の圧がかかってきそうだが、ここは一旦許してほしい。





「_____だからさ、総一郎くんも俺達が別れなくてもいいようにさっさと全て洗いざらい嘘を話してよ?今ここで。」

「え……?」



「嘘つきは嫌いだって言ったでしょ?だから思いつく限りの嘘を全部打ち明けて正直者になって。もしそれが俺の知ってる嘘と一致したら俺からはもう別れ話はしないようにする。大丈夫!《浮気》だとか大きな裏切り以外だったら、なんだって許してあげるから。」


ま、俺の知っている総一郎の最大の嘘は《浮気》なので、例え総一郎が嘘を隠しても、正直に告白しても、どちらにせよ別れ話になるんだけどな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

ひとりぼっちの180日

あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。 何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。 篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。 二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。 いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。 ▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。 ▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。 ▷ 攻めはスポーツマン。 ▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。 ▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

竜人の王である夫に運命の番が見つかったので離婚されました。結局再婚いたしますが。

重田いの
恋愛
竜人族は少子化に焦っていた。彼らは卵で産まれるのだが、その卵はなかなか孵化しないのだ。 少子化を食い止める鍵はたったひとつ! 運命の番様である! 番様と番うと、竜人族であっても卵ではなく子供が産まれる。悲劇を回避できるのだ……。 そして今日、王妃ファニアミリアの夫、王レヴニールに運命の番が見つかった。 離婚された王妃が、結局元サヤ再婚するまでのすったもんだのお話。 翼と角としっぽが生えてるタイプの竜人なので苦手な方はお気をつけて~。

Tally marks

あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。 カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。 「関心が無くなりました。別れます。さよなら」 ✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。 ✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。 ✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。 ✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。 ✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません) 🔺ATTENTION🔺 このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。 そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。 そこだけ本当、ご留意ください。 また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい) ➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。 ➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。 ➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。 個人サイトでの連載開始は2016年7月です。 これを加筆修正しながら更新していきます。 ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

婚約者は運命の番(笑)を見つけたらしいので俺も運命の番を見つけます

i
BL
俺の婚約者であるオリオ・オフニス侯爵令息は、浮気をしていた。しかもその相手は平民のオメガだった。俺はオリオに問い詰めようとしたが、偶然にも平民のオメガとオリオが関係を持っている現場を目撃してしまった。 翌日、俺は婚約破棄の手紙を受け取った。 俺はどうしても彼を許すことが出来ず、彼に小さな復讐をしてやろうと決意する──。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

気付いたら囲われていたという話

空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる! ※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。

処理中です...