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第1章

第149話《シマちゃんとひながオメコンに出場した理由》

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「…という訳で、今年オメコンに出場したのだって、きっかけの半分はひなちゃんがエントリーしてたからなんだよねぇ。あの子ってば自分が当然優勝するものだと思ってるから、あの子が散々年増だなんだと馬鹿にしてきた僕が優勝したら超面白そうだなって♪」

指の慣らすのを止めて大きく伸びをしたシマちゃんは、そう言うと、まっすぐにこちらを見て小悪魔っぽく微笑む。


「なるほど、それで実際に昨日の結果発表で1位を取ったんだからシマちゃんも相当すごいよね…?」
「ふふ♪まぁそこはすずめちゃんが協力してくれたから、ね?」

シマちゃんは呆気に取られている俺にくすくすと面白そうに笑いながら、オムライスをもう一口、口に運んだ。


(そうか…。シマちゃんがオメコンに積極的だった理由も俺とほぼ同じだったんだ。でも、『ひなを優勝から引きずりおろしてやる!』と思うだけじゃなく、『自分が優勝してやる!』って思えるのは本当に尊敬するなぁ。)

その一方で俺はというと、裏切り発覚が文化祭間近だったっていうのもあるけど、多分準備時間があったところで自分自身がオメコンに参加しようとはしなかっただろう。
復讐に燃える身としては、シマちゃんのマインドを少しでも見習っていきたいものだ。



「それでね?一番面白いのが、今回のオメコンの優勝賞品って大手事務所のQjack芸能プロダクションへの所属権なんだけどさ、そこってひなちゃんがだ~い好きなアイドルが在籍してる所らしいんだよねぇ♡」
「ええっ!!そんな偶然あるの?!。」

シマちゃんがニヤニヤしながら出してきた新情報に俺は驚いて、つい声を上げてしまった。

ひなが好きなアイドルがいる事務所がタイミング良く文化祭に来ることも奇跡だし、Qjack芸能プロダクションって、確か巧斗さんが所属している事務所じゃないか?


「う~ん、どうだろうね?僕的にはまぁ必然かなって思うけど。ひなちゃんの家って権力者?みたいだし、芸能事務所側に声をかけた可能性も全然ありそう~。」
「あ!そう、なのかな?」


そう言われてみれば確かにそれも有り得るかもしれない。

実際ひなは《パパ》に電話してコンテストの事に口出ししてコンテストのルールを自由自在変えていたみたいだし、今思えばあの全国で大人気な《ちゅんちゅんマン》と大学の文化祭のコラボも怪しいものだ。

ひなは総一郎と一緒にわざわざ、ちゅんちゅんマンの続編映画の公開初日に見に行っていたくらいのファンみたいだから、この件もパパにお願いしたのかもしれない。まぁ…これはただの憶測だけど。

(う~ん。もうここまでくれば、ひなの家が芸能事務所の社長と繋がっていてもなんら違和感が無いような気もしてきたな…。)


俺もシマちゃんの意見に肯定したい所だが、同事務所の巧斗さんの手前なのでどう反応すればいいのか分からない。

__とりあえず相槌を打つ程度に控えていると、今までオムライスと格闘していた筈の巧斗さんがようやく口を開いた。
自分の所属している事務所の名前が出てきたから、さすがにこちらの話に興味を持ったのだろう。



「確かにあの孔雀川社長だったらそれもあり得るかもしれないですね。彼は良くも悪くも《人脈》を大切にする人ですから…。」

傍観者だった巧斗さんがまさかの肯定をしてきたので俺もシマちゃんも一瞬目を見開く。
おそらく事務所の稼ぎ頭で社長さんとも交流のある巧斗さんがそう言うなら間違いが無いだろう。

しかし…良くも悪くもという所に哀愁を感じるのは気のせいだろうか?


「あ~!鷲ノ宮さんもやっぱそう思う??というか社長さんの事を知ってそうな口ぶりだけど知り合いだったり~?」
「コホン、いえ、あくまでも人づてに聞いた話ですよ?」


シマちゃんの鋭い指摘に巧斗さんは咳払いをしながら、するっと交わした。




「でもそれなら、ひなちゃんが直接社長さんに頼んで事務所に入れてもらえばいいのに、なんでこんなまわりくどいやり方をするのかな?」


巧斗さんも話に加わったところで、俺も気になったことを質問する。

幼馴染の俺から言わせれば、あのひなが、いくら自信があったにしてもコンテストの優勝者に事務所に入る権利をくれと正々堂々とお願いしたというのはどうにも考えづらいのだ。

社長とひなが接触したとすれば、十中八九直接自分を売り込みに行ったとしか思えない。


「ああ、それに関しては社長は事務所に入れる人材の選考にはかなり厳しい人…らしいので、条件を出したのだと思いますよ。」
「あ!それがオメコン優勝って事?」

「そうだと思います。」

巧斗さんが苦々し気にそう呟くと、シマちゃんが納得したように大きくうなずいた。
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