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第1章

第68話《オメコン第一次審査:観客の声》

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ひなが得意げな顔でランウェイを軽やかに歩ききり、やっとステージに登壇したところで、端に寄って控えていた司会が、漫才師が《はいど~も~》と登場する時のような大きな拍手をしながら、前に出てきた。


『いやはや、なんと美しいのでしょう…!!この艶やかさはまさしく芸術としかいいようがありませんね…!!!それでは、花嫁全員の入場が終わりましたところで、今から全出場者のアップの映像をモニターに映させていただくので、観客席の皆様の採点の参考にしていただければと思います…!!…それではカメラさんよろしくお願いします!』

司会がマイクを通してそう宣言すると、モニターがエントリーナンバー1番のシマちゃんの顔のアップを映し出し、それを見た観客が歓声と拍手を送っている。


『シマちゃん頑張れ~!』
『ランウェイ良かったよー!!』

『なぁなぁ江永シマって普通に可愛くね?』
『あの司会が自薦だの《自称:〇×大学の白百合》だの言うから、ちょっと勘違いちゃんなのかなって思ったけどこうしてみると結構レベル高いよな?』
『司会の酷いイジリにもにこやかに対応出来るあたり性格も良さそうだし、この中だったら俺シマちゃん派かな~』
『俺8点つけた!』
『清潔感のある雰囲気がテーマにもピッタリ当てはまってていいよね。私は満点入れた~。』


シマちゃんのアップは薄めのメイクや、清楚感も相まって観客に好印象を与えたようで、先程ひなの入場によって若干冷えてしまった観客達がまたにぎやかになった。

コンテスト前にひなの事を絶賛していた俺の後ろ座席の男性客達も、シマちゃんに対して好意的な声をあげているあたり、シマちゃんの人を惹きつける魅力は相当なものだ。


(いいぞいいぞ。シマちゃん、第一次審査は良い所までいくかも!)

シマちゃんの第一次審査の成功を確信する事でほっと息もつけたところで、俺は次の出場者がピックアップされている間にサッと投票用紙に目を通す。


(えーと、点数に関しては審査ごとに10点をつけられるから観客一人が出場者一人に対してつけられる点数は合計30点…と。これは説明にもあったな。一番最後の欄には、《一番印象に残った出場者の名前と、良かったところもしくはアドバイスしたい所を記入してください》…と書いてある。)

成程、ミスターコンの時の結果発表の時に、AIが観客のコメントもモニターに出力していたけれど、ここからデータを読み込んでたのか。

観客一人あたりに、出場者一人の良い所or悪い所を一つしか書けないというシステムだと、敵がいないシマちゃんに対してはそこまでキツいコメントは出てこないだろうけど、一部に根深い恨みを買ってたり、アンチがいたりするひなには相当きついコメントが集まりやすそうだな。

ミスターコンの結果発表時のAIコメントの様子を見るに、あのAIには酷いコメントをはじく良心的な機能が無いことが分かっているので、ひなの時にはどんな酷評コメントが表示されるか楽しみだ。


俺が投票用紙に目を通している間に、エントリーナンバー6番までの出場者のアップが終わり、とうとうひなの顔がアップになる。


(うわー、これまたすごいドヤ顔だな…。)

自信に満ち溢れた表情はひなの美貌を更に際立たせているが、それが皆に好印象を与えるかと言えばまた別の話だ。


聞こえてくる観客のひなに対する評価としてはまさしく賛否両論と言ったところで、美人だから好きだ!と寛容に捉える人もいれば、若干ひいている人もいる様子だった。


『愛野ひな、マジで美人だよなぁ。ここまでくると芸能人レベルだわ。』
『すげえ…人前に出るプロって感じだ。もう表情からして違うよ。…なんか腹立つけど。』

『つか、それよりも衣装にすごい違和感を覚えるのは俺だけか…?』
『あの白無垢、ミスターコンで一番評判良かった花嫁からパクってるっぽいしな。自分に似合ってるかどうかは二の次で着てるくさいっつーか…。』
『普通に黒い露出の高いドレスとか着てセクシーな路線で行けばよかったんじゃね?』
『いや、それどんな花嫁だよwww』
『でも分かる!そもそもあの子、白自体が合わないんだと思う。』

『まぁこれはテーマと相性が悪かったよ…。』
『そう?私は性格が悪いのが災いしてると思うけどね。』


俺の周囲の観客達には、ひなの花嫁姿に違和感を持つ人が少なくなく、美人だけれど……といったように、困惑の方が勝ってしまっている人が多い気がした。
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