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第1章

第38話《相田長介の自己紹介タイム》

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「~…以上となりまーす!ではでは、出場者の皆様に自己紹介と意気込みをアピールしていただきたいと思います!!では、エントリーナンバー1番の鶴橋様からどうぞ!!」

色々とモヤっとしている間にとうとう自己紹介タイムが来たようだ。
相田君は上手い事やってくれるだろうか。
俺自身は出場者じゃない以上、後ろから見守っているだけなのがもどかしい。


「どうも~エントリーナンバー1番、鶴橋彰で~す。普段は読モやってるんだけど、多分観客にも知ってる人いるんじゃないかな?ファンの皆は俺に高得点入れてね~。趣味は~…」

『鶴橋くーん!』
『いつも応援してるよ~!!』

司会に促され、読モだという鶴橋君が自己紹介を始める。
観客にはファンらしき人もいて歓声があがるが、総一郎の時と比べると歓声が小さい。
やはり最大の敵は総一郎のようだ。


「…~ありがとうございました!では次、エントリーナンバー2番!相田長介さんお願いしまーす!」

一人目の自己紹介が数分程続き、やっと相田君の出番が来た。
(来た…!なんかこっちまで緊張してきた…。)
まるで子供の発表会を見守る母親のような気分だ。


「うす!!会場の皆さん!!こんちはーーす!!エントリーナンバー2番、相田長介!!略してだちょうくんと呼んでくれてもかまわないっす!!血液型はB型!バース性はβ!!ラグビー部所属で趣味は走り込みっす!!ダチョウのように素早く、ダチョウのように生命力に溢れ、ダチョウのようにつぶらでかわいいくりくりの目がトレードマークっす!!!」

相田君はハキハキといつも通りの大音声で自己紹介しながら、モニターに映るカメラの前でサングラスを取って、つぶらというにはあまりにも鋭すぎる目をぱちくりして見せた。仕草までは指示していなかったのでこれは相田君のアドリブだ。

『あはは、あんな人を視線だけで射殺せそうな人がつぶらな瞳だってww』
『あれはどうみても指名手配犯の目だろwツッコミ待ちかwwww』
『いいぞーーーー!!!!』
『ダチョウのようなポンコツの間違いなんじゃね?www』

先ほどまで女性の歓声が多かったのに対し、今度は男性の笑い声と歓声が聞こえる。
さっきまでの馬鹿にしたような笑い声は少しも起きていない、お笑いライブみたいな笑い声だ。

(よしよし、いいぞ相田君!掴みは完璧だ!!)

シュールな内容すぎて紹介文を考えた時は内心ウケるかどうか賭けだったが、とにかく初手で盛り上げないとインパクトを残せないままコンテストが終わってしまうからな。
更にダチョウというキーワードを繰り返し、強く相田君と関連付けて印象深くすることで客に覚えてもらいやすくしたいという意図もあった。


「意気込みに関してっすが、実は俺、今まで何をやっても二番手でうだつもあがらなくて、一位には一度たりともなったことがないんす!でもそんな負け犬…いや負けダチョウだった人生をここで変えたいと思って今回はこのコンテストに出場したっす!!そしてこのコンテストで俺はこんな平凡なβでも頑張ればαにだって勝てるということを証明みせるっす!!!」

相田君が自己紹介に続き、意気込みを語ると、会場から野太い雄たけびが轟く。

『うおおおおぉぉぉ!!ファイトだダチョウくーーーん!!!』
『応援してるぞ―――!!αなんかに負けるなーーー!!』
『頑張れ―――!!!』
『βの根性見せてやれーーー!!!』
『激アツ展開キタぜーーーーー!』
『よっ俺達の希望の星!!』

(おお!これは良い流れだぞ…!)

ここでβ男性客達を誘導してαVSβの構図を作り上げられたらβ性の母数的にも勝利はこっちのものだ。


一応、相田君が今まで一位を取ったことがないというエピソードは、昨日自己紹介文を考えるために彼に特技や趣味などを聞き出した時に教えてもらったので事実だ。


《…え、特技っすか?もちろんラグビーっす!!あと走るのも得意っすね!俺めっちゃ早いっすよ!!》
《へぇすごいね。それ自己紹介に入れよう!大会とかで優勝した事とかあるの?》
《それが何故か一度もないんす…。それどころか俺、今まで何をやっても一位を取れた事がないのがコンプレックスなんすよね…。》

とまぁ、こんな感じの会話だったのだが、俺はそれを聞いたときにパッとこの自己紹介文を思いついたのだった。
本当はコンテスト出場の理由はつばめとのお付き合いを兄に認めてもらうためなのだが、それを馬鹿正直に言うとリア充への嫉妬で応援票が貰えないので、そこは一旦伏せておいた。


「続いて3番の鳩島駿さんお願いしまーす!」
「エントリーナンバー3番、鳩島駿です。ボクの実家は大病院の院長で~…」

相田君の自己紹介タイムが終わった後、他の出場者達も次々と自己紹介を済ませて行ったのだが、皆似たり寄ったりでこれといった特徴はなかった。

まぁ皆揃って顔が良く、家柄もスペックも良いので女性やΩの客からの黄色い声は多少上がったが、男性の歓声が一切聞こえなくなった。
ついさっき相田君がβ男性の立場でα達に下剋上して見せた事で、他のαが家柄自慢したり、ハイスペックであればあるほど男性客は盛り下がってしまうのだ。


「続いては、我らがエントリーナンバー7!鷹崎総一郎様でーす!!!」


(!!総一郎の番だ。一体どんな事を言うんだろうか…。)

自分の彼氏ながらこういう場での彼の発言が想像できない。
俺は総一郎の発言を固唾を飲んで待った。

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