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第1章

第33話《あくまで復讐は一人でやりたいすずめ》

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「え?二人とも何怒ってるの。別に、あんなの普通でしょ?」

ここは俺は何も気にしてないのに、二人が邪推しすぎなだけだという体でいこう。


「いーや!普通じゃないね!だっておんぶだよお・ん・ぶ!!人混みに酔ったからって恋人でもない他人にいきなりおんぶはありえない!」
「そうだそうだ!あの空気感は絶対なんかあるぞ。」

妹が歯ぎしりしながら地団駄を踏み、兄も拳を握りしめてそれに乗じている。
やはりすんなり納得してはくれないよな…。

俺があの二人を庇う構図になるのは非常に腹立たしいけど、一人での復讐の完遂のために徹底的に反論させてもらおう。

「でも、つばめの彼氏だって、もし総一郎君と同じ立場だったら、人助けとして同じ事してたかもしれないよ?」
「それはない!だって彼ピとはうち以外の女に密着したら殺すって契約してるから。天地がひっくり返ってもありえないよ?」
「あっ、そうだったね…」

さっきまで可愛げのある地団太を踏んでいたかと思うと、急に瞳孔をかっぴらいて物騒なことを言う妹に軽く後ずさる。
(怖!契約とか言ってるよ…。)

そういえば妹は彼氏に対しての束縛癖が激しいんだった。
相田君も昨日女と密着するとつばめに殺されるとか言ってたけど、あれ全然話盛ってなかったのか。


「まぁつばめは置いといて俺もあの二人はかなり怪しいと思うけどな。あの空気感は100%裏でデキてる奴らにしか出せない奴だ。兄ちゃんには分かる!」

(流石はお兄ちゃん、大正解だ…。モテモテαなだけあるな。)


それにしても、兄も妹もこんなに頑固だったっけ…
さっきから全然丸め込まれてくれない。
いつもは俺がこうだと言えば『『だよね!』』で済ます二人なのに。


「まぁ確かにお兄ちゃんは恋愛経験豊富だろうから、そういうのに人一倍鋭いのかもしれないけど、あの二人はちがうと思うよ…?二人ともサークル仲間だからそう見えるだけじゃない?」

「ぐっ…!!」

もうこれ以上取り繕うのは無理だと半ばあきらめ、一応苦し紛れに言い訳してみたら、先ほどまで頑なな態度だった兄が何故か胸をおさえてたじろいだ。

(えっどうしたんだろ。俺何か変な事言った?)


「あ、すずめちゃんってば知らなかったの?お兄ちゃん恋人いたことないし童貞だよ?」
「え。」
「わ!この、言うなバカつばめ!!」
「いひゃいいひゃいいひゃいww」

慌てて口をふさごうと妹の両頬をつまむ兄をよそに、俺は思わず固まってしまった。
(え?童貞?あのモテモテで毎年沢山のΩからバレンタインチョコを貰っていた兄が?)

でも言われてみれば確かに兄に女性の影は見たことが無い。
休日でも大抵予定が空いてるし、基本ずっと家にいる気がする。


「え。だったら尚の事デキてる人の空気感なんて分からないんじゃ…。」
「そうだな…。兄ちゃんの早とちりだ…」

変わり身早っ。
鷲田タクトのライブで男としての自信を無くし、挙句の果てに妹に童貞だとバラされた兄はがっくりと肩を落としている。

別に彼女出来た事ないからってそんなにしょぼくれなくてもいいのに…。
まぁ、でもそれであいつらが浮気してないって一旦納得してくれるんなら、そのまま放置しとこう。



(なんか可哀そうだけど、ごめんお兄ちゃん。俺は絶対に一人で復讐がやりたいし、できるだけ家族も巻き込みたくないんだ。)


「ってちょっと!なに納得しかけてるのお兄ちゃん!さっきのおんぶはどう説明するの!うちは今まで沢山の男と付き合ってきたけど、一度たりとも他の女におんぶとか必要以上の密着を許したことないんですけど!!」


急に意見を翻した兄に妹が怒って、また地団駄を踏みながら話をおんぶの件に蒸し返してくる。
さて、次はこっちの説得だな。

「つばめはもうちょっと彼氏を信じてもいいと思うよ。これまではともかく、今はせっかく世界一やさしくて一途な彼氏が出来たんだから。相田君、浮気するようなタイプじゃないでしょ?」

「え、世界一?えへへ、そうだよね!うちの彼ピ本当に一途で浮気なんて絶対しないしー。でも、そっか!彼ピが一途だったらおんぶくらいで浮気疑うのもちょっと可哀そうだよねー。」

こっちもちょっと彼氏褒めただけでころっと意見を変えたな…。
あれだけぶちギれてたのに、切り替えが早い所が兄とそっくりでよかった。
 

(全く…冷や冷やした。なんで俺は何もしてないのにあいつらの方から浮気がバレるような事をしてくるんだよ。)

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