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第1章

第26話《すずめの帰宅》

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「まぁとりあえず見つかってよかったじゃん!そんな心配しなくても、白無垢なんて皆、白塗りにお化粧したら割と誰が誰だか分からないと思うよ?」
「え、そうかな?」
「そうそう!それにすずめちゃんはただ単に女性的な要素が薄いってだけで、刺さる人にはすっごい刺さる顔してると思う!」

試着したウェディングドレスを元のラックに戻しながら、シマちゃんが必死のフォローをしてくれる。衣装は文化祭当日のみ貸し出されているらしいので、俺も今日の所は白無垢を元の場所に戻しておいた。

(もしかして、俺が白無垢似合わなかったの相当落ち込んでると思ったのかな?)

シマちゃんは敵に回すと恐ろしいけど味方だと人当たりが良くて思ったより話しやすい。

(ひなもこの人を鬼のように変えるなんて、一体何やらかしたんだろうな。)
我が幼馴染ながら末恐ろしいやつだ。




「シマちゃん、今日は色々とありがとう。明日のオメコン、応援してるから頑張ってね!」
「ありがと!君達の方こそ明日応援に行くからファイトだよ!目指せ優勝!それじゃね~♪」

それから俺はシマちゃんと一緒に校舎を出て、ようやっと帰路についたのだった。



(今日は色々な収穫があったなぁ。)

帰りの電車の中で一日を振り返る。
たった一日総一郎の元を離れただけなのに沢山の良い出会いがあった。
なんだかんだ文化祭準備の手伝いも楽しかったし、青春を送りながら復讐するというのも案外可能なのかもしれない。



「総一郎君、ただいまー!」

自宅に到着し、るんるん気分で帰宅すると、総一郎が柔らかな笑顔で俺を迎え入れる。

「ああ、おかえり!」

日課のただいまのキスをハグとともにすると、やはりというかなんというか…ひなのお気に入りのコロンの移り香がした。
(ワンチャンひなが勝手に総一郎と出かけたんだと嘘をついてるだけの可能性もあったんだけど、本当に浮気デートしてたんだな。)

まぁ昨日と比べると家でHしてないだけマシだし別に今更驚きもしないけど。


「お疲れ様、今日は一日大変だったね。今夜はすずめが大好きなうどんを出前してあるから一緒に食べよう?」
「え!ありがとう!うわぁ美味しそうだね♪」

総一郎に腰を抱かれるがままリビングに連れていかれると、食卓の上にはラップのついた大きいどんぶりが2個乗っかっていた。

(あ!わかめうどんだ!食べ物には罪はないからな。沢山食べるぞ…ってあれ?なんか落ちてる。)

ぺらっ

「ん?なにこれ、ちゅんちゅんマン2?」

食卓付近の床に何かカードのようなものが落ちていたので、ふとそれを手に取ってみた。

『ちゅんちゅんマン(俺が好きなキャラ)』のイラストが印刷されていて、裏面には映画『ちゅんちゅんマン2』の初日限定入場者特典と書いてある。

(あ、これ、映画の特典カードだ。そっか、そういえばちゅんちゅんマンの続編、今日から上映だったんだっけ…。)

大好きな作品の続編でずっと前から見に行きたいと思っていたはずのに、色々ありすぎてすっかり忘れていた。
成程、ひなと総一郎は今日、これを見に出かけてたんだな…。


「あ、そのカード良かったら貰ってよ。欲しいんでしょ?」
「え、うん。ありがとう…総一郎君。」

カードをじっと眺める俺を微塵も動揺することなく後ろから抱きしめてくる総一郎に、今朝以来のイライラが再燃する。

確かにちょっと前、テレビで見た映画の宣伝でこのカードが紹介されたときに、「このカード欲しい」と言った覚えがある。
だが、それは総一郎と一緒に映画見に行きたいという誘い文句だったのであって、間違っても俺の知らない所でひなとの映画デートのおまけとして欲しいという意味ではない。


ということはあれか?俺には旧作をレンタルして見せようとしてる癖に、ひなとは新作映画をわざわざ初日に見に行ったって事?
お前…そんなに俺とひなに格差をつけるのが趣味なの?
それともマウント大好きなひながそうすると喜ぶからやっているのか?

(どちらにせよ、オメガローズのチョーカーといい、ちゅんちゅんマンといい、俺の大好きだったものを巻き込むなんて最悪だ。)


俺が二人の裏切りを知って物事を冷静に見れるようになった途端これとは…多分今まで俺が気づいてないだけで、こういう事は日常茶飯事だったんだろうな。

(…今日はうどん食べて風呂に入ったらすぐ寝よう。明日は早起きしないとだし。)

まぁいいさ。今日まではせいぜい俺の事を見下していればいい。
だが、明日からは俺がお前らを見下す番だ。
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