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2話 いつもの朝
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あたしたちは昔から変わらず、毎朝家の前で待ち合せて一緒に登校している。
小学生時代は言わずもがな。いまも高校と中学が隣接しているから、通学路はほぼ同じだ。
例外があるとすれば、あたしが中学に上がってからの二年間。雫ちゃんはまだ小学生だったから、あの期間だけは一緒に登校できなかった。
「おはよう、雫ちゃん!」
「おはようございます」
家を出ると、ちょうど雫ちゃんも姿を現した。
いつも通りの仏頂面だけど、決して不機嫌なわけではない。
現に今朝も、家を出る前に『栞先輩、おはようございます! 今日もいっぱいイチャイチャしたいです!』とテンション高めのメッセージが送られてきた。
「雫ちゃんと付き合ってけっこう経つよね。そろそろキスしてみたいなぁ」
雫ちゃんが中学生になってすぐ告白してくれて、なんだかんだでもう一年が経過している。
ご飯に行ったりカラオケに行ったり、デートはたくさんしたけど、キスはまだ一度もしていない。
「私たちにはまだ早いです」
キッパリと断られてしまった。
クリスマスでもバレンタインでも断られたから、そんなに驚きはしない。
「じゃあさ、何歳になったらしてくれる?」
「社会人として胸を張って生きられるようになってからですね」
まさか学生のうちにチャンスがないとは思わなかった。
「それは残念……でも、前向きに考えれば嬉しいかも」
「なぜですか?」
「だって、大人になっても一緒にいてくれるってことでしょ?」
たとえキスができなくても、雫ちゃんと一緒にいられるなら充分に幸せだ。
あたしもそこまで欲求が強いわけじゃないから、我慢しすぎて爆発するってこともないと思う。
「と、当然です。私は初めから、栞先輩と添い遂げるつもりですから。栞先輩が心変わりしたら、話は別ですけどね」
「心変わりなんてしないよ。雫ちゃんが思ってるより、あたしの愛は強いし重いからね」
雫ちゃんが無表情でよかった。
もし笑みや恥じらいが顔に出ていたら、あたしの心は間違いなく限界を迎えていたはずだ。
冷めた表情というガードがあるからこそ、なんとかこちらも平常心を保てる。
「ふぅ……」
溜息を吐かれてしまった。
雫ちゃんは無言のままスマホを取り出し、とてつもない速度でなにかを入力する。
歩きながらは危ないと注意しようとすると、あたしのスマホから通知音が鳴り、雫ちゃんはスマホをカバンに仕舞った。
「ちょっとごめん」
道路の端によって立ち止まり、スマホを確認する。
タイミングからなんとなく察していた通り、送り主は雫ちゃんだった。
内容は以下の通り。
『栞先輩! 私も愛してます! 愛の強さでは負けませんよ! これからも末永く仲よくしてください! キスのことなんですけど……本当は私もしたいんです! でも勇気が出なくて……。遠くないうちに私からお誘いできるよう頑張りますから、もう少しだけ待っていてください!』
短時間で打ったとは思えない長文だ。あの尋常じゃなく素早い指の動きは、もはや達人の域に達していると言える。
私に合わせて足を止めてくれている雫ちゃんにチラリと視線を送ると、珍しく赤くなった顔を隠すようにそっぽを向いた。
あたしは思わず雫ちゃんを後ろから抱きしめ、問答無用で頭を撫で回す。
「や、やめてください、暑苦しいです」
「えへへ、かわいいなぁ。ほんとにかわいい!」
素気ない反応とは裏腹に、決して振りほどこうとはしない雫ちゃん。
だいたいの人は表情とか声に感情が出るけど、あたしの彼女は違う。
「はぁ」
雫ちゃんは再び呆れたような溜息を漏らしながらも、お腹に回したあたしの左手を自分の両手で優しく包んだ。
小学生時代は言わずもがな。いまも高校と中学が隣接しているから、通学路はほぼ同じだ。
例外があるとすれば、あたしが中学に上がってからの二年間。雫ちゃんはまだ小学生だったから、あの期間だけは一緒に登校できなかった。
「おはよう、雫ちゃん!」
「おはようございます」
家を出ると、ちょうど雫ちゃんも姿を現した。
いつも通りの仏頂面だけど、決して不機嫌なわけではない。
現に今朝も、家を出る前に『栞先輩、おはようございます! 今日もいっぱいイチャイチャしたいです!』とテンション高めのメッセージが送られてきた。
「雫ちゃんと付き合ってけっこう経つよね。そろそろキスしてみたいなぁ」
雫ちゃんが中学生になってすぐ告白してくれて、なんだかんだでもう一年が経過している。
ご飯に行ったりカラオケに行ったり、デートはたくさんしたけど、キスはまだ一度もしていない。
「私たちにはまだ早いです」
キッパリと断られてしまった。
クリスマスでもバレンタインでも断られたから、そんなに驚きはしない。
「じゃあさ、何歳になったらしてくれる?」
「社会人として胸を張って生きられるようになってからですね」
まさか学生のうちにチャンスがないとは思わなかった。
「それは残念……でも、前向きに考えれば嬉しいかも」
「なぜですか?」
「だって、大人になっても一緒にいてくれるってことでしょ?」
たとえキスができなくても、雫ちゃんと一緒にいられるなら充分に幸せだ。
あたしもそこまで欲求が強いわけじゃないから、我慢しすぎて爆発するってこともないと思う。
「と、当然です。私は初めから、栞先輩と添い遂げるつもりですから。栞先輩が心変わりしたら、話は別ですけどね」
「心変わりなんてしないよ。雫ちゃんが思ってるより、あたしの愛は強いし重いからね」
雫ちゃんが無表情でよかった。
もし笑みや恥じらいが顔に出ていたら、あたしの心は間違いなく限界を迎えていたはずだ。
冷めた表情というガードがあるからこそ、なんとかこちらも平常心を保てる。
「ふぅ……」
溜息を吐かれてしまった。
雫ちゃんは無言のままスマホを取り出し、とてつもない速度でなにかを入力する。
歩きながらは危ないと注意しようとすると、あたしのスマホから通知音が鳴り、雫ちゃんはスマホをカバンに仕舞った。
「ちょっとごめん」
道路の端によって立ち止まり、スマホを確認する。
タイミングからなんとなく察していた通り、送り主は雫ちゃんだった。
内容は以下の通り。
『栞先輩! 私も愛してます! 愛の強さでは負けませんよ! これからも末永く仲よくしてください! キスのことなんですけど……本当は私もしたいんです! でも勇気が出なくて……。遠くないうちに私からお誘いできるよう頑張りますから、もう少しだけ待っていてください!』
短時間で打ったとは思えない長文だ。あの尋常じゃなく素早い指の動きは、もはや達人の域に達していると言える。
私に合わせて足を止めてくれている雫ちゃんにチラリと視線を送ると、珍しく赤くなった顔を隠すようにそっぽを向いた。
あたしは思わず雫ちゃんを後ろから抱きしめ、問答無用で頭を撫で回す。
「や、やめてください、暑苦しいです」
「えへへ、かわいいなぁ。ほんとにかわいい!」
素気ない反応とは裏腹に、決して振りほどこうとはしない雫ちゃん。
だいたいの人は表情とか声に感情が出るけど、あたしの彼女は違う。
「はぁ」
雫ちゃんは再び呆れたような溜息を漏らしながらも、お腹に回したあたしの左手を自分の両手で優しく包んだ。
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