甘美な百合には裏がある

ありきた

文字の大きさ
上 下
116 / 124

115話 幸せな痛み

しおりを挟む
 何度深呼吸を繰り返しても、胸の高鳴りは収まらず、体はどんどん火照っていく。
 いまから先輩たちと、心と体を重ねる。
 妄想の中では数え切れないほど経験してきたけど、実際に体験するのは今日が初めてだ。
 平常心を保ったまま臨むなんて、いくらなんでも無理というもの。

「と、とりあえず、服を脱ぎます!」

 私は胸の前でグッと拳を握り、威勢よく宣言した。
 電気を消さなくてよかったのかな?
 最初は服を着たままでもいいのでは?
 言葉にせず黙って脱いだ方がよかった?
 後悔と不安が融合したような疑問が、脳内で膨らんでいく。
 正座したまま慌ててパジャマのボタンに手をかけるも、半ばパニック状態になって上手く外せない。
 そんな私を囲うようにして、先輩たちが集まる。

「うふふ❤ そんなに焦らなくてもいいのよ❤」

「せっかくの初体験なんだから、もっと心から楽しまないと!」

「じ、時間は、たくさんあるよ。ゆっくりで、だ、大丈夫」

「それに、気を張りすぎて途中でバテたらもったいないわ」

 先輩たちの温かな声が、複雑に絡んだ緊張の糸を優しく解いてくれた。
 愛の営みへ向けた期待と興奮はそのままに、変な焦りや恐怖だけがきれいさっぱり拭われる。

***

 気を取り直して、まずはゆっくりと口付けを交わす。
 唇だけじゃなく、額や頬、首筋や鎖骨にも。
 先輩たちもお返しとばかりにキスの雨を降らせてくれた。
 そうしているうちに、他の場所にもしてほしいという欲が生まれる。
 みんなで一斉にパジャマを脱ぎ、下着姿を晒す。
 私は先輩たちに押し倒され、唇の感触が脇腹や太ももにも刻まれていく。
 全身が性感帯になったかのように、先輩たちがキスしてくれた場所から強烈な快感が走る。
 もちろん、一方的にしてもらっているのでは気が済まない。
 私も負けじと先輩たちの体にキスを落とし、敏感な場所を下着越しにそっと撫でる。
 さほど面積があるわけでもない布の存在が、いまはこの上なく邪魔に感じてしまう。
 率先して下着を脱ぎ捨てると、先輩たちから自分の下着を脱がせてほしいとお願いされた。
 間違っても肌を引っかいたりしないよう、慎重にブラのホックを外し、ショーツを下ろす。
 いよいよ、この時が来た。
 私は大きく息を吸い込み、己の決意を伝えるために口を開く。

「実は、お願いがあるんです」

 神妙な面持ちで話を切り出したことで、先輩たちがゴクリと息を呑む。
 もしかすると、なにか不安を感じさせてしまったのかもしれない。
 一刻も早く安心してもらいたくて、すぐさま本題に移る。
 キスと同様、処女も四人に貰ってほしい。
 素直にそう告げた直後、先輩たちが一様に心配そうな表情を浮かべた。
 無理もない。確かに、自分でも無茶な提案だと思う。
 だけど、これだけは絶対に譲れない。

「お願いします!」

 心を込め、改めてお願いする。
 先輩たちは顔を見合わせてアイコンタクトを交わした後、コクリとうなずいた。

「……分かったわ❤ その代わり、条件を出させてもらうわね❤」

「ありがとうございますっ――って、条件?」

「うんっ。まず、絶対に無理な我慢はしないこと!」

「そ、そして、始める前に、じゅ、充分、ほぐすこと」

「この上なく念入りに愛撫するから、覚悟しなさい」

 条件と聞いてヒヤッとしたけど、内容は私の身を気遣うものだった。
 天井知らずの優しさに感動し、まだ愛撫を受ける前なのに体が反応してしまう。

「お、お手柔らかにお願いします」

 枕に頭を預けるや否や、先輩たちの手によって脚が左右に大きく開かれた。
 姿勢はもちろんのこと、秘所に集まる視線がより一層の羞恥をもたらす。

「うふふ❤ それはどうかしら❤」

「いっぱい気持ちよくなってね~」

「お、お漏らししても、い、いいよ」

「徹底的に感じさせてあげるわ」

 先輩たちが楽しそうに声を弾ませる。
 普段通りの明るさが、この上ない安心と元気を与えてくれた。

***

 私は決して、痛みが好きなわけじゃない。むしろ苦手だ。
 よく見ないと分からない程度の小さな擦り傷であっても、できることなら遠慮したい。
 だけど、例外もあるのだと知った。
 身を裂くような痛み、一生消えない傷。
 体の内側に刻まれたそれらは、言葉では表現できないほどに愛おしく、嬉し涙がこぼれるほどの幸せを感じさせてくれた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

犬猿の仲だけど一緒にいるのが当たり前な二人の話

ありきた
青春
犬山歌恋と猿川彩愛は、家族よりも長く同じ時間を過ごしてきた幼なじみ。 顔を合わせれば二言目にはケンカを始め、時には取っ組み合いにまで発展する。 そんな二人だが、絆の強さは比類ない。 ケンカップルの日常を描いた百合コメディです! カクヨム、ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...