甘美な百合には裏がある

ありきた

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101話 ガムの甘さ

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 コンビニで電池のついでに買ったガムを、二粒ほど口に放り込む。
 マスカットの風味が爽やかで、程よい甘さが舌を喜ばせる。
 テーブルの対面では作業に一区切りついたらしい姫歌先輩が、ノートパソコンをパタリと畳んだ。

「このガムおいしいですよ。姫歌先輩も食べますか?」

「うふふ❤ そうね、いただこうかしら❤」

 姫歌先輩はそう答えると、席を立って私のところに移動した。
 ガムぐらいテーブルの上で受け渡しできるのに、なんて思っていたら――

「あむっ❤」

「んぅっ!?」

 イスに座ったまま視線を向けた瞬間、身を屈めた姫歌先輩に唇を奪われる。
 ビックリして飛び跳ねそうになる私の動きを封じるように、後頭部と背中に手が回された。

「んっ❤ れるっ❤ ちゅっ❤」

「んんっ!? んーっ!」

 強引に挿入された舌が、蹂躙するように口内で動き回る。
 信じられないほどの快楽が生じ、動揺も相俟って心臓が早鐘を打つ。
 キスしてくれて嬉しいし、すごく気持ちいいけど、なんで急に?
 頭に浮かんだ疑問は、キスを終えると同時に解消された。
 私の口内からガムが消え、姫歌先輩の口がなにかを咀嚼するように動いている。

「うふふ❤ 確かにおいしいわ❤」

 さっきまで自分が食べていた物が、姫歌先輩の口の中にある。
 なんだろう、上手く言えないけど、すごくエッチなことのように思えてならない。

「でも……さ、さすがに照れちゃうわね❤ ご、ごめんなさいっ、ちょっと用事を思い出したわ❤」

 姫歌先輩は真っ赤になった顔を隠しながら、リビングを離れた。
 慌てて駆け出したせいで足の小指を廊下の角にぶつけ、その場にうずくまってプルプルと震える。
 あまりのかわいさに、目と心が釘付けにされてしまう。
 ガムを譲った私が言うことじゃないかもしれないけど――
 姫歌先輩、ごちそうさまです。
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