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91話 収録のお手伝い
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夏休み目前というだけあって、今日も朝から暑かった。
部活を終えてもまだ外は蒸し暑く、みんな顔や胸元をパタパタと仰ぎながら帰宅する。
姫歌先輩と葵先輩がリビングで作業の続きに取り掛かり、真里亜先輩は市販のルーを使わない本格的なカレーを作るべくキッチンへ。
私がトイレから出ると、アリス先輩が小走りで駆け寄ってきた。
「ゆ、悠理、お、お願いがあるんだけど……」
「なんですか?」
「あ、新しい、歌ってみた動画を作るから、あ、合いの手、入れてほしい」
「えっ、合いの手!? 無理ですよ! 私なんかが合いの手を入れたら、せっかくの神動画が炎上しちゃいます!」
意外な内容に驚き、萎縮する。
アリス先輩の歌唱力は素人のレベルを逸脱している。お世辞や冗談ではなく、プロのアーティストと比べてもなんら遜色はない。
デュエットやコーラスと比べたらハードルが低いかもしれないけど、恐れ多いにもほどがある。
「そ、そんなこと、ないよ。それに、別々に録音するから、し、失敗しても、録り直せばいい」
「うーん…………分かりました。その代わり、ダメだと思ったら気を遣ったりせず、ハッキリ言ってくださいね」
「う、うん、分かった。あ、ありがとうっ」
アリス先輩が嬉しそうに微笑み、私の手を引いて二階の防音室へと移動する。
「あ、あと、靴下とパンツを、じ、じっくり、嗅がせてほしい」
パタンと扉が閉まるのと同時に、追加のお願いが告げられた。
部室でも日常茶飯事に行われていることだけど、『じっくり』という部分がどうにも引っかかる。
「お、お願いっ、こ、この通りっ」
扉を背に立つ私がなにかを言うよりも早く、アリス先輩は渾身の土下座を披露した。
「アリス先輩、土下座はやめてくださいっ。嗅いでいいですからっ」
その場で慌てて膝をつき、アリス先輩の肩を掴んで強引に顔を上げてもらう。
「ほ、ほんと? そ、それじゃあ――」
それからポーズ指定を受け、私は壁にもたれかかって腰を下ろす。
引き受けた以上はきちんと応えようと覚悟を決め、羞恥に耐えつつ脚を大きく開く。
まるでアリス先輩にパンツを見せつけているような恰好。この時点ですでに恥ずかしいけど、これだけでは終わらない。
腰の横に手を付いてバランスを取り、開脚したまま左右のかかとをくっつける。
脚を少し上げると、アリス先輩が足裏に顔を近付けてきた。
事前の打ち合わせ通りとはいえ、想像を絶する羞恥に襲われる。
アリス先輩はおもむろに足首をそっと掴み、靴下に顔を擦り付ける。
「すぅぅぅぅ……」
そして、ゆっくりと息を吸い始めた。
深く、深く、常人離れした肺活量を存分に発揮して、ひたすらに息を吸い続ける。
「せ、先輩、もうやめた方がいいですよ。蒸れてて臭くて汚いですし、体に悪いですっ」
いつまで経っても終わる気配がなく、恥ずかしさがピークを迎えた私は眦に涙を浮かべながら中止を促した。
すると、アリス先輩がピタリと動きを止める。
足首から手を放し、息を吐き出す。
「最っっっっ高! やっぱり悠理の足裏を嗅ぐと力が出るよ! いまなら初対面の人と目を合わせてあいさつするのだって簡単にできる気がする! ハァハァ、自分でも怖いぐらいに興奮してて、やる気と元気が無限に溢れてくる! 本当にありがとう!」
この状態のアリス先輩は久しぶりに見た。
でも、アリス先輩がここまでハイテンションになるということは、それだけ私の足が蒸――ううん、これ以上は考えちゃいけない。自分の心を守るためにも。
「ま、満足してもらえてよかったです。次はいよいよ収録ですよね。終わるまで外に出ていた方がいいですか?」
「ここで聞いててくれて大丈夫! だけど、収録はもうちょっと先だよ! パンツも嗅がせてもらわないと! じゅるり。想像するだけでますます興奮してきちゃった!」
「ど、どうしても嗅ぐんですか?」
「もちろんっ! うぇへへ、すっごく楽しみ♪ 悠理のパンツ、心行くまで嗅がせてもらうからねっ♪」
満面の笑みを浮かべるアリス先輩。
あぁ、ダメだ。
恥ずかしいけど、こんな笑顔を見せられたら、もう……。
私は観念して、アリス先輩を脚の間へと受け入れた。
***
翌日。アリス先輩の歌ってみた動画は、投稿間もなくして過去最大の反響を呼んだ。
再生数や高評価がどんどん増え続け、惜しみない賞賛のコメントが多数寄せられている。
「ゆ、悠理が、靴下とパンツを、か、嗅がせてくれた、おかげだね」
アリス先輩は優しい声音でそう言い、ニコッと柔らかく微笑む。
役に立てて嬉しいし、光栄なんだけど……素直に喜んでもいいのかな?
部活を終えてもまだ外は蒸し暑く、みんな顔や胸元をパタパタと仰ぎながら帰宅する。
姫歌先輩と葵先輩がリビングで作業の続きに取り掛かり、真里亜先輩は市販のルーを使わない本格的なカレーを作るべくキッチンへ。
私がトイレから出ると、アリス先輩が小走りで駆け寄ってきた。
「ゆ、悠理、お、お願いがあるんだけど……」
「なんですか?」
「あ、新しい、歌ってみた動画を作るから、あ、合いの手、入れてほしい」
「えっ、合いの手!? 無理ですよ! 私なんかが合いの手を入れたら、せっかくの神動画が炎上しちゃいます!」
意外な内容に驚き、萎縮する。
アリス先輩の歌唱力は素人のレベルを逸脱している。お世辞や冗談ではなく、プロのアーティストと比べてもなんら遜色はない。
デュエットやコーラスと比べたらハードルが低いかもしれないけど、恐れ多いにもほどがある。
「そ、そんなこと、ないよ。それに、別々に録音するから、し、失敗しても、録り直せばいい」
「うーん…………分かりました。その代わり、ダメだと思ったら気を遣ったりせず、ハッキリ言ってくださいね」
「う、うん、分かった。あ、ありがとうっ」
アリス先輩が嬉しそうに微笑み、私の手を引いて二階の防音室へと移動する。
「あ、あと、靴下とパンツを、じ、じっくり、嗅がせてほしい」
パタンと扉が閉まるのと同時に、追加のお願いが告げられた。
部室でも日常茶飯事に行われていることだけど、『じっくり』という部分がどうにも引っかかる。
「お、お願いっ、こ、この通りっ」
扉を背に立つ私がなにかを言うよりも早く、アリス先輩は渾身の土下座を披露した。
「アリス先輩、土下座はやめてくださいっ。嗅いでいいですからっ」
その場で慌てて膝をつき、アリス先輩の肩を掴んで強引に顔を上げてもらう。
「ほ、ほんと? そ、それじゃあ――」
それからポーズ指定を受け、私は壁にもたれかかって腰を下ろす。
引き受けた以上はきちんと応えようと覚悟を決め、羞恥に耐えつつ脚を大きく開く。
まるでアリス先輩にパンツを見せつけているような恰好。この時点ですでに恥ずかしいけど、これだけでは終わらない。
腰の横に手を付いてバランスを取り、開脚したまま左右のかかとをくっつける。
脚を少し上げると、アリス先輩が足裏に顔を近付けてきた。
事前の打ち合わせ通りとはいえ、想像を絶する羞恥に襲われる。
アリス先輩はおもむろに足首をそっと掴み、靴下に顔を擦り付ける。
「すぅぅぅぅ……」
そして、ゆっくりと息を吸い始めた。
深く、深く、常人離れした肺活量を存分に発揮して、ひたすらに息を吸い続ける。
「せ、先輩、もうやめた方がいいですよ。蒸れてて臭くて汚いですし、体に悪いですっ」
いつまで経っても終わる気配がなく、恥ずかしさがピークを迎えた私は眦に涙を浮かべながら中止を促した。
すると、アリス先輩がピタリと動きを止める。
足首から手を放し、息を吐き出す。
「最っっっっ高! やっぱり悠理の足裏を嗅ぐと力が出るよ! いまなら初対面の人と目を合わせてあいさつするのだって簡単にできる気がする! ハァハァ、自分でも怖いぐらいに興奮してて、やる気と元気が無限に溢れてくる! 本当にありがとう!」
この状態のアリス先輩は久しぶりに見た。
でも、アリス先輩がここまでハイテンションになるということは、それだけ私の足が蒸――ううん、これ以上は考えちゃいけない。自分の心を守るためにも。
「ま、満足してもらえてよかったです。次はいよいよ収録ですよね。終わるまで外に出ていた方がいいですか?」
「ここで聞いててくれて大丈夫! だけど、収録はもうちょっと先だよ! パンツも嗅がせてもらわないと! じゅるり。想像するだけでますます興奮してきちゃった!」
「ど、どうしても嗅ぐんですか?」
「もちろんっ! うぇへへ、すっごく楽しみ♪ 悠理のパンツ、心行くまで嗅がせてもらうからねっ♪」
満面の笑みを浮かべるアリス先輩。
あぁ、ダメだ。
恥ずかしいけど、こんな笑顔を見せられたら、もう……。
私は観念して、アリス先輩を脚の間へと受け入れた。
***
翌日。アリス先輩の歌ってみた動画は、投稿間もなくして過去最大の反響を呼んだ。
再生数や高評価がどんどん増え続け、惜しみない賞賛のコメントが多数寄せられている。
「ゆ、悠理が、靴下とパンツを、か、嗅がせてくれた、おかげだね」
アリス先輩は優しい声音でそう言い、ニコッと柔らかく微笑む。
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