甘美な百合には裏がある

ありきた

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42話 コンビニスイーツを楽しむ

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 今日は先輩たちと一緒に、学校から徒歩二分ほどのところにあるコンビニに立ち寄っている。

「私、期間限定ってフレーズに弱いんですよね」

 デザートコーナーで身を屈め、『期間限定!』というシールが貼られた商品を一通り見回す。

「うふふ❤ わたしも同じよ❤ それで気に入った商品の販売が終わると、悲しくなってしまうわよねぇ❤」

「分かりますっ。あと、今度買おうと思ってたらいつに間にかラインナップが変わってる、なんてこともありますよね」

「それじゃあさ、みんなで別々のを買って食べ比べしようよ! イートインもあるし、どうかなっ?」

「い、いいね、いま、おいしそうなデザート、お、多いから」

「あたしも賛成よ。お菓子作りの参考になりそうだわ」

 姫歌先輩と期間限定商品あるあるを話していると、葵先輩が素敵な提案を出してくれた。
 アリス先輩と真里亜先輩が即答で賛同。もちろん、私と姫歌先輩も同様にうなずく。
 五人とも誰かと被らないように気を付けつつ、興味を惹かれた商品を手に取る。
 次いでドリンクのコーナーに移動。私は口の中が甘ったるくなったときのために、無糖の紅茶を選んだ。
 思えば、真里亜先輩お手製のお菓子はいくら食べても飽きが来ないし、余計な甘さや物足りなさを感じたことがない。

***

 お会計を済ませ、イートインコーナーへ。
 奥の四人席に進み、他にお客さんがいなかったので隣の席からイスを一つ借りる。
 商品をテーブルに並べて容器の蓋を開けると、クリームやフルーツの甘い香りが広がった。
 この匂いを嗅いで平然としていられる女子高生なんて存在するのだろうか。少なくとも、私は尋常ならざる高揚感に襲われている。
 でもまぁ、先輩たちが身にまとう魅惑的な匂いと比べたら、さすがに劣ると言わざるを得ない。彼女たち以上のいい匂いなんて、それこそこの世に存在しないのだから。
 って、いつの間にかデザートじゃなくて先輩たちのことを考えてしまっていた。
 気を取り直して、デザートスプーンを袋から取り出す。
 いただきますと声をそろえ、五人ともまずは自分が選択した品にスプーンを伸ばした。

「悠理、あーん❤」

 自分で食べるより先に、姫歌先輩が柔らかな微笑みを浮かべながら私の口元にプリンを運んでくれた。
 せっかくの厚意なので、遠慮せず口内に受け入れる。
 滑らかな舌触りと濃厚な甘さ、バニラのほのかな香りが絶妙だ。なにより姫歌先輩に食べさせてもらったという事実が、感動のレベルを跳ね上げている。

「おいしいですっ。姫歌先輩も、あーん」

 お返しとして、一口分のフルーツタルトを姫歌先輩の顔に近付ける。
 姫歌先輩が最初の一口を私にくれたのだから、私も同じようにするのが礼儀というもの。

「あーん❤ うふふっ、すごくおいしいわ❤」

 姫歌先輩は頬に手を添え、満面の笑みで喜んでくれた。
 自分が作ったわけじゃないけど、こんなに喜んでもらえると私も嬉しい。

「いいな~っ、あーしもやりたい! 悠理っ、あーん!」

 私と姫歌先輩のやり取りを見ていた葵先輩が、スプーンの行き場を自らの口から私の口へと変えた。
 当然ながら断る理由はどこにもないので、ありがたくいただく。

「んんっ、これもおいしいですっ」

 レモン果汁をたっぷり使ったゼリーは、ぷるんとした質感とほどよい酸味が実に爽やか。
 今度は私の番だ。すかさずスプーンでタルトを切り分け、「あーん」と言いもって葵先輩の口元に運ぶ。
 姫歌先輩同様にとても喜んでくれて、思わずこちらまで笑顔になる。

「あ、アリスも、あ、あーん、したい」

「あたしのも食べなさい」

 アリス先輩はブルーベリーソースのかかったチーズケーキ、真里亜先輩はチョコレートケーキ。
 どちらも非常に美味であり、お返しをした際に向けられる笑顔がまた、デザート以上に私の心を満足感でいっぱいにしてくれる。

***

 ゴミを片付けてイスを元に戻し、お腹も心も満たされた状態で退店する。
 学校帰りの寄り道なんて特に珍しいことではないのに、先輩たちと一緒なら信じられないぐらい楽しめる。
 部室の外だから過激なスキンシップはしないけど、充分にイチャイチャできたと思う。
 あえて難点を挙げるなら、ちょっと食べ過ぎた。晩ごはん、全部食べられるかな……。
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