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14話 同志は意外なところに
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部室に行くと、姫歌先輩が席を外していた。
ノートパソコンが置かれているので、欠席じゃないことは一目で分かる。おそらくトイレだろう。
「葵先輩、それって誰かをモチーフにしてます?」
席に着くと同時に、視界の隅に移るアニメ調のイラストに目を引かれる。
異様なまでの上目遣いや、ぎこちないダブルピースはともかく、髪型や胸の大きさなど、妙に親近感を覚えてしまう。
「ん? もちろん悠理だよ! 実際にやってもらうわけにはいかないから、イラストの中でアへ顔ダブルピースしてもらおうと思ったんだ~!」
「ですよね」
出来れば否定してほしかったけど、あっさり認められてしまった。
イラストとしてデフォルメされているとはいえ、なんとも複雑な気分だ。
というか、女子高生の会話でアヘ顔という単語が出るのはどうなんだろう。知ってる私もどうかと思うけど。
エッチな百合画像の守備範囲を広げすぎて、普通の女の子とは無縁の知識まで身に着いてしまった。
「あ、葵……そ、その、よ、よかったら、悠理が足を、こっちに向けてる、イラスト、か、描いて、ほしい」
アリス先輩がテーブルの下からではなく、テーブルに身を乗り出して葵先輩に話しかける。
視線は泳ぎまくっているし声も震えているけど、相当な勇気を振り絞っているのは明白。
そこまで必死になって頼むようなことかな?
「いいよ~! 表情はどうする? せっかくだから、『足を舐めなさい』って女王様っぽく命令してる感じにしとく? あっ、恥じらい顔の差分も描こうか!」
「う、うん、お願い。それと、足は、ものすごく、む、蒸れてそうなのが、いい」
「いいね~、任せて!」
「あ、ありが、とう。た、楽しみ」
「……アリス先輩。以前、べつに臭いのが好きなわけじゃないって言ってませんでした?」
「にゅ、ニュアンスが、ちょっと、違う。臭いから、好きなわけじゃないけど、臭いのは、好き、だよ。悠理が発するなら、いい匂いも、嫌な臭いも、全部好き」
なるほど、よく分からない。
「悠理、あんたも大変ね。ストレス発散したくなったら、いつでもあたしをボコボコにしなさい」
「気持ちだけありがたく受け取っておきます」
そんな他愛のないやり取りを交わしていると、不意に部室の扉が開かれた。
「あらあら❤ 悠理、今日もかわいいわねぇ❤」
「ありがとうございます。姫歌先輩もかわいいですよ」
開口一番に褒められてしまい、こちらも褒め返す。
社交辞令にも思える返事だけど、当然ながら内容に一切の虚偽はない。
温厚な雰囲気や反則級の爆乳から大人びた印象を受けがちとはいえ、現実離れして整った容姿は『妖艶』というよりは『可憐』と称するのがしっくりくる。
「悠理にそんなこと言われたら、嬉しすぎて濡れてきちゃうわ❤」
「いろんな意味で危ないですね」
決して悪い気はしないけど、いまの話が本当なら迂闊に褒めることもできない。
「先輩、どこに行ってたんですか?」
ポケットからUSBメモリを取り出すのが見えて、反射的に疑問が口を滑る。
「職員室よ❤ 先生に頼まれて、小説のデータをコピーしていたの❤」
「わざわざデータをコピーって……もしかして、非公開の方ですか?」
サイトで公開されている作品なら、ネット環境さえあれば自由に閲覧できる。
それをしないということは、年齢の問題で公開不可能であるエッチな小説ということなんじゃないだろうか。
「ええ、そうよ❤ あまり大声では言えないけど、先生たちには以前から熱烈な支持をいただいているわ❤」
たちってことは、一人じゃないんだ。
意外すぎる。
百合カップルが多いことといい、やっぱりこの学校はかなり特殊らしい。
廊下で堂々と話題にするのはまずいけど、姫歌先輩の作品を心待ちにする同志として、いつかこっそり感想を語り合ってみたい。
ノートパソコンが置かれているので、欠席じゃないことは一目で分かる。おそらくトイレだろう。
「葵先輩、それって誰かをモチーフにしてます?」
席に着くと同時に、視界の隅に移るアニメ調のイラストに目を引かれる。
異様なまでの上目遣いや、ぎこちないダブルピースはともかく、髪型や胸の大きさなど、妙に親近感を覚えてしまう。
「ん? もちろん悠理だよ! 実際にやってもらうわけにはいかないから、イラストの中でアへ顔ダブルピースしてもらおうと思ったんだ~!」
「ですよね」
出来れば否定してほしかったけど、あっさり認められてしまった。
イラストとしてデフォルメされているとはいえ、なんとも複雑な気分だ。
というか、女子高生の会話でアヘ顔という単語が出るのはどうなんだろう。知ってる私もどうかと思うけど。
エッチな百合画像の守備範囲を広げすぎて、普通の女の子とは無縁の知識まで身に着いてしまった。
「あ、葵……そ、その、よ、よかったら、悠理が足を、こっちに向けてる、イラスト、か、描いて、ほしい」
アリス先輩がテーブルの下からではなく、テーブルに身を乗り出して葵先輩に話しかける。
視線は泳ぎまくっているし声も震えているけど、相当な勇気を振り絞っているのは明白。
そこまで必死になって頼むようなことかな?
「いいよ~! 表情はどうする? せっかくだから、『足を舐めなさい』って女王様っぽく命令してる感じにしとく? あっ、恥じらい顔の差分も描こうか!」
「う、うん、お願い。それと、足は、ものすごく、む、蒸れてそうなのが、いい」
「いいね~、任せて!」
「あ、ありが、とう。た、楽しみ」
「……アリス先輩。以前、べつに臭いのが好きなわけじゃないって言ってませんでした?」
「にゅ、ニュアンスが、ちょっと、違う。臭いから、好きなわけじゃないけど、臭いのは、好き、だよ。悠理が発するなら、いい匂いも、嫌な臭いも、全部好き」
なるほど、よく分からない。
「悠理、あんたも大変ね。ストレス発散したくなったら、いつでもあたしをボコボコにしなさい」
「気持ちだけありがたく受け取っておきます」
そんな他愛のないやり取りを交わしていると、不意に部室の扉が開かれた。
「あらあら❤ 悠理、今日もかわいいわねぇ❤」
「ありがとうございます。姫歌先輩もかわいいですよ」
開口一番に褒められてしまい、こちらも褒め返す。
社交辞令にも思える返事だけど、当然ながら内容に一切の虚偽はない。
温厚な雰囲気や反則級の爆乳から大人びた印象を受けがちとはいえ、現実離れして整った容姿は『妖艶』というよりは『可憐』と称するのがしっくりくる。
「悠理にそんなこと言われたら、嬉しすぎて濡れてきちゃうわ❤」
「いろんな意味で危ないですね」
決して悪い気はしないけど、いまの話が本当なら迂闊に褒めることもできない。
「先輩、どこに行ってたんですか?」
ポケットからUSBメモリを取り出すのが見えて、反射的に疑問が口を滑る。
「職員室よ❤ 先生に頼まれて、小説のデータをコピーしていたの❤」
「わざわざデータをコピーって……もしかして、非公開の方ですか?」
サイトで公開されている作品なら、ネット環境さえあれば自由に閲覧できる。
それをしないということは、年齢の問題で公開不可能であるエッチな小説ということなんじゃないだろうか。
「ええ、そうよ❤ あまり大声では言えないけど、先生たちには以前から熱烈な支持をいただいているわ❤」
たちってことは、一人じゃないんだ。
意外すぎる。
百合カップルが多いことといい、やっぱりこの学校はかなり特殊らしい。
廊下で堂々と話題にするのはまずいけど、姫歌先輩の作品を心待ちにする同志として、いつかこっそり感想を語り合ってみたい。
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