甘美な百合には裏がある

ありきた

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プロローグ

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 放課後。中学時代からの友人でもあるクラスメイトに、こんなことを言われた。

「創作部でハーレム状態なんでしょ? 入学早々、羨ましいなぁ」

 創作部とは、絶世の美少女が四人も在籍していることで有名な部活である。
 この春から、平凡な生徒こと私――露原つゆはら悠理ゆうりが加わった。
 ハーレム状態なのは否定できないけど……まぁ、うん。
 秘められた真相を考えると、手放しには喜べない。

「ご、ごめん、遅れるとマズいから、もう行くね」

 逃げるように席を立つと、友人は「はいよー」と手を振りながら見送ってくれた。
 一階まで下りて昇降口を横目に廊下を進み、部室棟につながる渡り廊下を駆け抜ける。
 部室棟の突き当たりに見えるのが、創作部の部室だ。
 深呼吸をして、覚悟を決めてからドアノブを回す。

「うふふ、待っていたわよ❤」

 扉を開けて中に入ると、黒髪の美少女が突如として目の前に現れた。

「ひゃああぁああああぁぁああぁぁあっっ!」

「しーっ❤ 周りの迷惑になるから、扉を開けたまま叫んじゃダメでしょう?」

 口を手で塞がれ、コクコクとうなずきつつドアノブから手を離す。
 創作部の防音性は非常に優秀だ。扉が閉まれば、絶叫しても外に響かない。
 つまり、いまなら私が先ほどと同程度の悲鳴を上げたところで、誰にも気付かれないということだ。

「脅える悠理もかわいい❤ 大丈夫よ、すぐに食べたりはしないから❤」

「い、いつかは食べるつもりなんですか?」

 彼女は春名はるな姫歌ひめか先輩。
 腰まで届く艶やかな黒髪。幼さの残る顔立ちは極めて端正で、対面すると思わず見惚れてしまう。
 スラリとした手足や見事な腰のくびれが、ただでさえ目立つ爆乳をさらに際立たせる。
 幼さの残る甘い声質ながら、発音や息遣いは尋常じゃなく色っぽい。

「独り占めはズルいよ姫歌~! あーしだって悠理のおっぱい揉んだりしたいのに!」

 中央のテーブルから離れて姫歌先輩を押しのけるように私の前に立つのは、夏見なつみあおい先輩。
 緩く波打つサイドテールは明るい茶色。
 スレンダーな体型で、胸は私と同じぐいらの手のひらサイズ。
 第一印象はギャルだったけど、怖い先輩ではない。むしろ気さくでとても優しい。

「ゆ、悠理のパンツ、あ、温かくて……いい、香り」

 秋川あきかわアリス先輩が、いつの間にか私の股下にうずくまってスカートの中に顔を突っ込んでいた。
 きめ細やかなプラチナブロンドの長髪。宝石のような紺碧の瞳。
 耳が蕩ける激甘ボイスに、小学生と見紛う小柄な体。童話から飛び出たかのような愛らしさだ。
 コミュ障ゆえに目を合わせられないのは仕方ないとして、お股に顔を埋められるのはさすがに恥ずかしい。

「あたしたちみたいなド変態に囲まれるなんて、同情するわ。さぁ悠理、腹いせにあたしを痛め付けなさい! そして口汚なく罵ってちょうだい!」

 冬木ふゆき真里亜まりあ先輩。
 アリス先輩の従姉妹で、髪と瞳の色は同じ。やや吊り目気味で、強気な印象を受ける。
 高身長というわけではないけど、私たちの中では一番背が高い。
 グラビアモデル体型とでも言うべきか、ボンキュッボンを体現した体つき。
 口調や雰囲気は女王様っぽいけど、ことあるごとに被虐的なことを要求してくる。

「と、とりあえずカバンを置かせてくださいっ」

 包囲網を半ば強引にくぐり抜け、テーブルに着く。
 テーブルの上には、ノートパソコン、タブレット、収録機材、竹製のバスケットが置かれている。
 創作部で起きる出来事は新鮮かつ刺激的で、誰もが見惚れる魅力的な美少女たちに囲まれるという夢のような環境だ。
 ただ、まぁ。
 部室の外では単純に『四人もの美少女をはべらす新入生』だと言われていても、実際はそう単純な話ではないわけで……。

「悠理の部屋に侵入すれば、髪の毛を拾えたりするのかしらぁ❤」

「おっぱいもいいけど、お尻も捨てがたいよね~!」

「む、蒸れた足の裏、想像しただけで、こ、興奮する」

「ゴミを見るような目で踏まれるのもいいわね。ついでに唾も吐き捨ててもらおうかしら」

 うーん。
 やっぱり、素直には喜べない。
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