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194話 夏の大型コラボ!⑦
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あたしたちは以前に一期生と二期生の対決で使った社内スタジオへと場所を移し、次の企画に備えていた。
服にピンマイクを付け、調理台のそばに置かれたイスに腰を下ろす。
ここには配信用の機材や調理台だけでなく、冷蔵庫と冷凍庫もしっかり備わっている。
普段は空っぽの冷蔵庫と冷凍庫だけど、いまはメンバーが前日までに持ち込んだ品々が並ぶ。
リスナーさんたちを待たせてしまっているので、全員の準備が整うと同時に第二部の配信を開始。
「みんな、お待たせ! 泳いだ後って無性にカレーとかラーメンを食べたくなるよね~」
特になにも考えず話し始めた結果、かき氷企画が始まるとは思えないワードが飛び出した。
『分かる』
『そ、そうだね』
『あれ? かき氷は?』
『かき氷はどうしたw』
『焼きそばもいいよね』
「それはそれとして、かき氷パーティー始めちゃうよ! 改めて簡単に説明すると、これはメンバーのみんなが自分流のかき氷を作ってシェアして食べるって企画だね!」
リスナーさんが困惑しているところを、強引に軌道修正して本来の流れに持って行く。
ちなみに、あたしがカレーとラーメンの名前を出した瞬間、同席しているみんなからも驚きの視線を向けられた。
「一応確認しておきたいんだけど、ゲテモノ系を作ろうとしてるバカはいないわよね?」
向かい側に座るエリナ先輩が不安そうな視線で一同を見回す。
「あははっ」
あたしはエリナ先輩と目が合った瞬間、この状況では不安を煽るだけだと分かった上で満面の笑みを浮かべた。
「いざとなったら、エリナに任せるよー」
「はぁ!?」
エリナ先輩の隣に座るシャテーニュ先輩が、ニヤッと口角を上げながらエリナ先輩の肩をポンと叩く。
「さすが先輩、頼りににゃるにゃ~っ」
「勇者として名を刻まれるべきだね」
ネココちゃんがキラキラとした目を、スノウちゃんが尊敬の眼差しを、それぞれエリナ先輩に向ける。
そして、最後の希望にすがるかのようにガールズパーティの良心ことミミちゃんへと視線を動かすエリナ先輩。
「え、エリナ先輩、ゲテモノが体に悪いとは限りませんよ。健康にいい食材もたくさんあります」
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ! もしかして本当にゲテモノ系作るつもり!?」
罪悪感を捨てきれないながらも悪ノリに便乗したミミちゃんの言葉に、エリナ先輩が本格的な焦りを見せた。
『エリナちゃん頑張れー』
『応援してます』
『先輩の意地を見せる時ですよ』
『ゲテモノ系は意外とおいしいってパターンもある』
『エリ虐助かる』
「え? え? これ、本当にそういう感じ? というか、いくらなんでも有り得ないとは思うけど……アタシ以外全員ゲテモノ系ってこと、ないわよね……?」
いつになく不安げな様子で周囲を見回すエリナ先輩に、あたしたちは視線を逸らして沈黙するという反応を返した。
動揺するエリナ先輩もかわいいけど、さすがにこれ以上はかわいそうだ。
「はいっ、エリ虐はここで終わり! エリナ先輩、からかってごめん!」
「じょ、冗談? はぁ……よかったぁ」
「これで実はエリナ先輩がゲテモノ系を用意してた、ってオチにはならないよね?」
「そんなわけないじゃない。自分も食べるのに、そんな無謀なことしないわよ。あっ、ところで――」
エリナ先輩はここで間を置き、全員の視線が自分に集まったのを確認してから続きを口にする。
「シュールストレミングって、ゲテモノ系に入らないわよね?」
その瞬間、エリナ先輩を除く全員が顔面蒼白となり、言葉を失う。
体感にして数分、現実時間で数秒が経過した時点でエリナ先輩が「冗談よ」と言ったことで、場に平和な空気が戻った。
服にピンマイクを付け、調理台のそばに置かれたイスに腰を下ろす。
ここには配信用の機材や調理台だけでなく、冷蔵庫と冷凍庫もしっかり備わっている。
普段は空っぽの冷蔵庫と冷凍庫だけど、いまはメンバーが前日までに持ち込んだ品々が並ぶ。
リスナーさんたちを待たせてしまっているので、全員の準備が整うと同時に第二部の配信を開始。
「みんな、お待たせ! 泳いだ後って無性にカレーとかラーメンを食べたくなるよね~」
特になにも考えず話し始めた結果、かき氷企画が始まるとは思えないワードが飛び出した。
『分かる』
『そ、そうだね』
『あれ? かき氷は?』
『かき氷はどうしたw』
『焼きそばもいいよね』
「それはそれとして、かき氷パーティー始めちゃうよ! 改めて簡単に説明すると、これはメンバーのみんなが自分流のかき氷を作ってシェアして食べるって企画だね!」
リスナーさんが困惑しているところを、強引に軌道修正して本来の流れに持って行く。
ちなみに、あたしがカレーとラーメンの名前を出した瞬間、同席しているみんなからも驚きの視線を向けられた。
「一応確認しておきたいんだけど、ゲテモノ系を作ろうとしてるバカはいないわよね?」
向かい側に座るエリナ先輩が不安そうな視線で一同を見回す。
「あははっ」
あたしはエリナ先輩と目が合った瞬間、この状況では不安を煽るだけだと分かった上で満面の笑みを浮かべた。
「いざとなったら、エリナに任せるよー」
「はぁ!?」
エリナ先輩の隣に座るシャテーニュ先輩が、ニヤッと口角を上げながらエリナ先輩の肩をポンと叩く。
「さすが先輩、頼りににゃるにゃ~っ」
「勇者として名を刻まれるべきだね」
ネココちゃんがキラキラとした目を、スノウちゃんが尊敬の眼差しを、それぞれエリナ先輩に向ける。
そして、最後の希望にすがるかのようにガールズパーティの良心ことミミちゃんへと視線を動かすエリナ先輩。
「え、エリナ先輩、ゲテモノが体に悪いとは限りませんよ。健康にいい食材もたくさんあります」
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ! もしかして本当にゲテモノ系作るつもり!?」
罪悪感を捨てきれないながらも悪ノリに便乗したミミちゃんの言葉に、エリナ先輩が本格的な焦りを見せた。
『エリナちゃん頑張れー』
『応援してます』
『先輩の意地を見せる時ですよ』
『ゲテモノ系は意外とおいしいってパターンもある』
『エリ虐助かる』
「え? え? これ、本当にそういう感じ? というか、いくらなんでも有り得ないとは思うけど……アタシ以外全員ゲテモノ系ってこと、ないわよね……?」
いつになく不安げな様子で周囲を見回すエリナ先輩に、あたしたちは視線を逸らして沈黙するという反応を返した。
動揺するエリナ先輩もかわいいけど、さすがにこれ以上はかわいそうだ。
「はいっ、エリ虐はここで終わり! エリナ先輩、からかってごめん!」
「じょ、冗談? はぁ……よかったぁ」
「これで実はエリナ先輩がゲテモノ系を用意してた、ってオチにはならないよね?」
「そんなわけないじゃない。自分も食べるのに、そんな無謀なことしないわよ。あっ、ところで――」
エリナ先輩はここで間を置き、全員の視線が自分に集まったのを確認してから続きを口にする。
「シュールストレミングって、ゲテモノ系に入らないわよね?」
その瞬間、エリナ先輩を除く全員が顔面蒼白となり、言葉を失う。
体感にして数分、現実時間で数秒が経過した時点でエリナ先輩が「冗談よ」と言ったことで、場に平和な空気が戻った。
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