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179話 童心に帰った話
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窓の外が夕焼け色に染まり始めた頃、あたしは麦茶とかりんとうを手元に置いて配信を開始した。
「こんユニ~! 今日も暑かったけど、そろそろ気温も落ち着いてくる時間だね!」
いつものあいさつをして、気温について触れる。
連日の猛暑にみんなも苦しめられているようで、エアコン事情や暑さ対策などのコメントが多く流れてきた。
クーラーをフル稼働させている人もいれば、うちわだけで凌いでいるという人もいる。
「ここでは言えないけど、あたしとミミちゃんには特別な納涼方法があるんだよ~」
『内緒にするから教えて』
『いまなら誰も聞いてないよ』
『ここだけの秘密にするから小声で言って』
言いたい。
裸になって解放感を味わい、密着してスキンシップを重ねて汗だくになってから、二人で一緒に冷たいシャワーを浴びる。
これがものすごく気持ちいいんだと自慢したい。
でも、ここは我慢。
自分から言い出しておいて申し訳ないけど、ミミちゃんの汗ばんだ体の感触や温もりや匂いも含め、配信で語るわけにはいかない内容だ。
「勢いに流されて言っちゃいそうで怖いから、話題変えるね。朝方のことなんだけど、ミミちゃんと公園で散歩してたんだ~。それで、ぐるっと一周してるうちに女子小学生が六人ぐらい集まってたの」
小学生という言葉にコメント欄が少しザワザワしてきたので、断じて危ない話ではないと数回にわたって念を押してから続きを口にする。
「あたしとミミちゃんが近くを通りがかった時に、ドッジボールするからよかったら一緒にやってほしいって言われてね。お姉さんとしては、子どもたちのお願いを断るわけにはいかないな~って」
『お姉さん?』
『きっと片方が同年代に見えたから頼みやすかったんだね』
『ドッジボール懐かしい』
「言っておくけど、あたしも名前に『お姉ちゃん』って付けて呼んでもらったからね? ミミちゃんだけお姉さん扱いされてたわけじゃないからね? そこのところしっかりきっちり理解してね? みんな分かった?」
『は、はい』
『いつになく圧が強い』
『いい子たちだね』
『最近の小学生は空気読み上手いなぁ』
みんなも察しつつあるように、実際にあたしは同い年ぐらいだと思われていた。
詳しく言うなら、夏休みに親戚の家に遊びに来ている子どもだと思っていたらしい。
声をかけられた時も、あたしには『一緒にドッジやらない?』だったけど、ミミちゃんに対しては『よかったらお姉さんも一緒に遊びませんか?』だった。
ミミちゃんより一つ年上の立派な大人だと説明してもなかなか信じてもらえなかったけど、全然気にしてないよ。
さて、この事実をリスナーさんたちに伝えるべきか否か。
プライドを守るため黙っていろと主張する大人としての自分と、おいしいエピソードだから話してしまえとそそのかす配信者としての自分が脳内で熾烈な争いを繰り広げている。
「あと、これはここだけの話なんだけど――」
勝敗は早々に決した。
ユニコーンでも成人女性でもなく本当は現役の小学生なんじゃないかと疑われたりもしつつ、童心に帰って子どもたちと遊んだ話を嬉々として語る。
大人としてスポーツドリンクをみんなに買ってあげたことも話したけど……これを自分から言っちゃうあたり、あたしはまだまだ立派な大人ではないのかもしれない。
それはそれとして、大人のお姉さん然とした振る舞いを見せるミミちゃんにムラムラしてしまった時の昂ぶりが未だに冷めやらない。
今夜にでも、いろんな意味でミミちゃんに甘えさせてもらおうかな。
「こんユニ~! 今日も暑かったけど、そろそろ気温も落ち着いてくる時間だね!」
いつものあいさつをして、気温について触れる。
連日の猛暑にみんなも苦しめられているようで、エアコン事情や暑さ対策などのコメントが多く流れてきた。
クーラーをフル稼働させている人もいれば、うちわだけで凌いでいるという人もいる。
「ここでは言えないけど、あたしとミミちゃんには特別な納涼方法があるんだよ~」
『内緒にするから教えて』
『いまなら誰も聞いてないよ』
『ここだけの秘密にするから小声で言って』
言いたい。
裸になって解放感を味わい、密着してスキンシップを重ねて汗だくになってから、二人で一緒に冷たいシャワーを浴びる。
これがものすごく気持ちいいんだと自慢したい。
でも、ここは我慢。
自分から言い出しておいて申し訳ないけど、ミミちゃんの汗ばんだ体の感触や温もりや匂いも含め、配信で語るわけにはいかない内容だ。
「勢いに流されて言っちゃいそうで怖いから、話題変えるね。朝方のことなんだけど、ミミちゃんと公園で散歩してたんだ~。それで、ぐるっと一周してるうちに女子小学生が六人ぐらい集まってたの」
小学生という言葉にコメント欄が少しザワザワしてきたので、断じて危ない話ではないと数回にわたって念を押してから続きを口にする。
「あたしとミミちゃんが近くを通りがかった時に、ドッジボールするからよかったら一緒にやってほしいって言われてね。お姉さんとしては、子どもたちのお願いを断るわけにはいかないな~って」
『お姉さん?』
『きっと片方が同年代に見えたから頼みやすかったんだね』
『ドッジボール懐かしい』
「言っておくけど、あたしも名前に『お姉ちゃん』って付けて呼んでもらったからね? ミミちゃんだけお姉さん扱いされてたわけじゃないからね? そこのところしっかりきっちり理解してね? みんな分かった?」
『は、はい』
『いつになく圧が強い』
『いい子たちだね』
『最近の小学生は空気読み上手いなぁ』
みんなも察しつつあるように、実際にあたしは同い年ぐらいだと思われていた。
詳しく言うなら、夏休みに親戚の家に遊びに来ている子どもだと思っていたらしい。
声をかけられた時も、あたしには『一緒にドッジやらない?』だったけど、ミミちゃんに対しては『よかったらお姉さんも一緒に遊びませんか?』だった。
ミミちゃんより一つ年上の立派な大人だと説明してもなかなか信じてもらえなかったけど、全然気にしてないよ。
さて、この事実をリスナーさんたちに伝えるべきか否か。
プライドを守るため黙っていろと主張する大人としての自分と、おいしいエピソードだから話してしまえとそそのかす配信者としての自分が脳内で熾烈な争いを繰り広げている。
「あと、これはここだけの話なんだけど――」
勝敗は早々に決した。
ユニコーンでも成人女性でもなく本当は現役の小学生なんじゃないかと疑われたりもしつつ、童心に帰って子どもたちと遊んだ話を嬉々として語る。
大人としてスポーツドリンクをみんなに買ってあげたことも話したけど……これを自分から言っちゃうあたり、あたしはまだまだ立派な大人ではないのかもしれない。
それはそれとして、大人のお姉さん然とした振る舞いを見せるミミちゃんにムラムラしてしまった時の昂ぶりが未だに冷めやらない。
今夜にでも、いろんな意味でミミちゃんに甘えさせてもらおうかな。
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