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142話 同時視聴オフコラボの役得②

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 犠牲者が出るたび、意思とは無関係に悲鳴が上がり体が震える。
 あたしとミミちゃんは時に冗談めいたことを言ってみたりコメントを読んだりして、どうにか適度に気を散らすことで恐怖を堪えていた。

「リスナーさんたち、トイレに行きたくなったら我慢せずに行った方がいいよ! 続きが気になるのは分かるけど、ビックリして漏らしちゃったら後悔するからね!」

「そ、そそ、そうですよ、我慢はダメですよ」

「あれ? ミミちゃんもしかして漏らした?」

「漏らしてませんっ」

 ハッキリと否定しつつも、声に覇気がない。
 この先どうなるか分からないという不安からか、それともすでに……?

「――ミミちゃん、ほんとに大丈夫? あたしのパンツでよければ渡すよ?」

 リスナーさんたちに聞かれないよう、マイクをミュートにしてから改めて訊ねる。

「は、はい、いまのところはまだ漏らしてないです」

「パンツの話はさておき、どんなに怖くてもあたしが隣にいるから安心してね」

 そう言いもって腰に手を回して抱きしめると、ミミちゃんは嬉しそうに「はいっ」とうなずいた。
 かっこいいことを口にしてみたものの、あたしとしてもミミちゃんが隣にいてくれるから恐怖に負けずに済んでいる。
 もし一人だったら、今頃は悲鳴のラッシュでリスナーさんたちの鼓膜に惨状をもたらしていたかもしれない。
 ここでミュートを解除し、再びコメントを拾いながら映画の世界に没入していく。

「唐突なんだけど、序盤の方から時々映り込んでくる虫が地味に怖くない?」

「いきなり出てくるとビクッとしちゃいますよね」

 ミミちゃんの言う通り、あたしたちは前触れなく虫がフレームインするたびに体を強張らせていた。
 山奥の雰囲気を出す演出の一つではあるんだろうけど、個人的にはホラーに負けない恐怖要素だと思う。

『分かる』
『これぐらいなら日常茶飯事』
『実際に見たら多分気絶する』
『あれより大きい蛾がさっきから窓に居座っとる』

 ホラー要素より怖いという人もいれば虫に恐怖心の欠片も抱いていない人もいて、まさに十人十色の意見がコメント欄に飛び交う。
 この場に先ほど映画内に登場した人間の顔サイズの虫が現れた場合、あたしならどうするだろう。
 リスナーさんたちには悪いけど、配信を放棄してミミちゃんを抱えて慌てて逃げ出すだろうなぁ。
 まぁ、いくらなんでもそんなことにはならないだろうけども。
 この考えがフラグになったり……しないよね?
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