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108話 夏休みの一大企画!⑥
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「失敗フラグを無事に回避して、おいしそうなカレーができたね~」
カメラの後ろから鍋の中を覗き込み、食欲を掻き立てる香りを吸い込みながらつぶやく。
他のみんなも同じように鍋の周囲に集まり、実食の時はまだかという思いを口にする。
途中から進行台本を見るのを忘れていたので、いまのうちにササッと確認。
カレーが完成したら……うん、後は食べるだけだ。
「さぁ、お待ちかねの実食タイムだよ~! スタッフさんが盛り付けてくれるから、お皿を――」
次のコーナーへ移る案内をしていると、不意にお腹が「ぐぅ~っ」と悲鳴を上げる。
「お、お皿を用意して並ぼう!」
さすがに恥ずかしかったので、何事もなかったかのように言葉を続けた。
『すごい音鳴った』
『お腹の音助かる』
『たくさん食べてね』
『ガッツリ音拾われてて草』
『照れてるのかわいい』
モニターを見ると、案の定お腹の音について触れられている。
逃げ場のない恥ずかしさを振り払うべく、あたしは無言でミミちゃんに抱き着いた。
おっぱいに顔を埋めたまま、深呼吸を繰り返す。
「よしっ、ミミちゃんのおっぱいのおかげで復活! 気を取り直して、実食に移るよ~!」
『!?』
『待て待て』
『いまなんて言った?』
『リスナーに隠れてなにやってんだ』
『詳しく説明してください』
『てぇてぇ』
『おっぱい!?』
『いったいなにが起きたんだ』
リスナーさんたちには悪いけど、あえて説明はしないまま進めていく。
ミミちゃんに抱き着いて柔らかいおっぱいに包まれながら甘い匂いを堪能することで、癒やされると同時に興奮を高めて羞恥心を追い払った――なんて、数万人が見ている配信で言うわけにはいかない。
スタッフさんに炊き立ての白米と熱々のカレーを盛り付けてもらい、転んだりしないよう慎重に食事用のテーブルへと移動する。
「それじゃあ、みんなで声を合わせていただきますって言うよ~」
音頭を取り、一斉に「いただきます」と声に出す。
料理番組だったらここで見た目や香りのコメントを残すべきなんだろうけど、カレーを前にして我慢できなかったのはあたしだけではなく、六人そろってすぐさま一口目を口に運んだ。
「ん~っ、おいしい! これはお腹の限界を超えても食べ続けたい!」
「具沢山のカレーって、見ているだけでも嬉しくなっちゃいます」
「ほのかに感じるトマトの酸味がいいわね」
「エリナが食レポっぽいこと言ってるー」
「猫舌だけど熱々の状態で食べるにゃ! あっつ!」
「無理せず少し冷ましなよ」
配信しているという意識を半分だけ残し、和気あいあいとした雰囲気の中、あたしたちはみんなで作ったカレーを存分に味わう。
慌てて食べるのはよくないと分かっていながらも、あまりのおいしさと空腹に後押しされて手と口が止まらない。
このテーブルにはカメラがないので、時折スマホで卓上の様子を撮影し、スタッフさんにお願いして配信画面に載せてもらう。
談笑したりコメントを拾ったりしながらカレーを食べ進め、およそ一時間かけて無事に完食。
「お腹いっぱいだけど、デザートは別腹だよねっ。冷蔵庫にグレープフルーツゼリーがあるから、ちょっと取ってくるよ~」
テーブルを離れ、部屋の隅にある冷蔵庫へ向かう。
「――あっ!」
扉を開けた瞬間、六人分のゼリーと共にとある品物が視界に飛び込んだ。
「ユニコちゃんっ、大丈夫ですか?」
「ご、ゴキブリでも出たのかしら」
「変な物でも入ってたのー?」
「間違って冷凍庫に入れてたパターンかにゃあ」
「まさか、異世界に繋がって……」
あたしが急に大きな声を上げたことで、心配に思ったみんなが一斉に駆け寄ってくれた。
そして視線が冷蔵庫の中に向くや否や、あたしとまったく同じ反応を示す。
冷蔵庫の中央で存在感を放つその品物とは――
「解凍したシーフードミックス、使うの忘れてた……」
『あーあ』
『ドンマイ』
『いまからもう一回作ろう』
『あらら』
『デザートにシーフードミックスも追加で』
おいしい夏野菜カレーを作るという企画としては大成功だったので、これは失敗にカウントしないでもらいたい。
「こほん。さ、さてと、ゼリーを食べながらのんびり感想を話して配信を締めよう!」
わざとらしく咳ばらいをして、何事も起きていないていで話を進める。
ちなみに、このシーフードミックスは後ほど配信外でアヒージョの食材として使い、みんなでおいしく食べました。
カメラの後ろから鍋の中を覗き込み、食欲を掻き立てる香りを吸い込みながらつぶやく。
他のみんなも同じように鍋の周囲に集まり、実食の時はまだかという思いを口にする。
途中から進行台本を見るのを忘れていたので、いまのうちにササッと確認。
カレーが完成したら……うん、後は食べるだけだ。
「さぁ、お待ちかねの実食タイムだよ~! スタッフさんが盛り付けてくれるから、お皿を――」
次のコーナーへ移る案内をしていると、不意にお腹が「ぐぅ~っ」と悲鳴を上げる。
「お、お皿を用意して並ぼう!」
さすがに恥ずかしかったので、何事もなかったかのように言葉を続けた。
『すごい音鳴った』
『お腹の音助かる』
『たくさん食べてね』
『ガッツリ音拾われてて草』
『照れてるのかわいい』
モニターを見ると、案の定お腹の音について触れられている。
逃げ場のない恥ずかしさを振り払うべく、あたしは無言でミミちゃんに抱き着いた。
おっぱいに顔を埋めたまま、深呼吸を繰り返す。
「よしっ、ミミちゃんのおっぱいのおかげで復活! 気を取り直して、実食に移るよ~!」
『!?』
『待て待て』
『いまなんて言った?』
『リスナーに隠れてなにやってんだ』
『詳しく説明してください』
『てぇてぇ』
『おっぱい!?』
『いったいなにが起きたんだ』
リスナーさんたちには悪いけど、あえて説明はしないまま進めていく。
ミミちゃんに抱き着いて柔らかいおっぱいに包まれながら甘い匂いを堪能することで、癒やされると同時に興奮を高めて羞恥心を追い払った――なんて、数万人が見ている配信で言うわけにはいかない。
スタッフさんに炊き立ての白米と熱々のカレーを盛り付けてもらい、転んだりしないよう慎重に食事用のテーブルへと移動する。
「それじゃあ、みんなで声を合わせていただきますって言うよ~」
音頭を取り、一斉に「いただきます」と声に出す。
料理番組だったらここで見た目や香りのコメントを残すべきなんだろうけど、カレーを前にして我慢できなかったのはあたしだけではなく、六人そろってすぐさま一口目を口に運んだ。
「ん~っ、おいしい! これはお腹の限界を超えても食べ続けたい!」
「具沢山のカレーって、見ているだけでも嬉しくなっちゃいます」
「ほのかに感じるトマトの酸味がいいわね」
「エリナが食レポっぽいこと言ってるー」
「猫舌だけど熱々の状態で食べるにゃ! あっつ!」
「無理せず少し冷ましなよ」
配信しているという意識を半分だけ残し、和気あいあいとした雰囲気の中、あたしたちはみんなで作ったカレーを存分に味わう。
慌てて食べるのはよくないと分かっていながらも、あまりのおいしさと空腹に後押しされて手と口が止まらない。
このテーブルにはカメラがないので、時折スマホで卓上の様子を撮影し、スタッフさんにお願いして配信画面に載せてもらう。
談笑したりコメントを拾ったりしながらカレーを食べ進め、およそ一時間かけて無事に完食。
「お腹いっぱいだけど、デザートは別腹だよねっ。冷蔵庫にグレープフルーツゼリーがあるから、ちょっと取ってくるよ~」
テーブルを離れ、部屋の隅にある冷蔵庫へ向かう。
「――あっ!」
扉を開けた瞬間、六人分のゼリーと共にとある品物が視界に飛び込んだ。
「ユニコちゃんっ、大丈夫ですか?」
「ご、ゴキブリでも出たのかしら」
「変な物でも入ってたのー?」
「間違って冷凍庫に入れてたパターンかにゃあ」
「まさか、異世界に繋がって……」
あたしが急に大きな声を上げたことで、心配に思ったみんなが一斉に駆け寄ってくれた。
そして視線が冷蔵庫の中に向くや否や、あたしとまったく同じ反応を示す。
冷蔵庫の中央で存在感を放つその品物とは――
「解凍したシーフードミックス、使うの忘れてた……」
『あーあ』
『ドンマイ』
『いまからもう一回作ろう』
『あらら』
『デザートにシーフードミックスも追加で』
おいしい夏野菜カレーを作るという企画としては大成功だったので、これは失敗にカウントしないでもらいたい。
「こほん。さ、さてと、ゼリーを食べながらのんびり感想を話して配信を締めよう!」
わざとらしく咳ばらいをして、何事も起きていないていで話を進める。
ちなみに、このシーフードミックスは後ほど配信外でアヒージョの食材として使い、みんなでおいしく食べました。
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