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98話 あったら怖い話

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 マルチエンディングのホラーゲームをクリアして、すぐには配信を終わらず背景を切り替えてエンディングトークに移る。
 合間に水分補給を挟み、再び口を開く。

「そこまで怖くないって噂だったけど、けっこう怖かったよね~。みんなは漏らしてない? 大丈夫だった? 念のため言っておくと、あたしはギリギリ漏らさずに済んだよっ」

『漏らしてないよ』
『ゲームよりユニコちゃんの声に驚いたかな』
『怖かったけど漏らすほどじゃない』
『ギリギリだったのか』

「ところで、夏休みってホラー系の特番が多いイメージだよね。実体験をもとにしたのとか、心霊スポットとか」

 自分では絶対に行こうと思わないけど、不思議と興味を惹かれてしまう。まさに怖いもの見たさというやつだ。

『分かる』
『昨日もやってた』
『子供の時よく見てたなー』

「配信を終わる前に、ちょっとだけ怖い話をしようと思うんだけど、いいかな?」

『もちろん』
『いいよ』
『大歓迎です』

「ありがと~! まぁ、怖い話って言っても実際にあった出来事とかじゃないんだけどね。あったら怖い話、って感じかな~」

 実体験ではなく想像の話であることを前置きして、あたしはさらに続ける。

「例えば、夜トイレに行く時、部屋を出た瞬間に暗い廊下で近くから『カサカサッ』って音が鳴ったら……うぅっ、考えただけでも寒気がしてきた」

『怖い話ってそっちか』
『確かに怖いw』
『それ最近あったわ』

「防音がしっかりしてるから仮に叫んでも近所迷惑にはならないけど、もし音が筒抜けだったらマンション全体に響き渡るぐらいの悲鳴を上げちゃうよ」

『そうなったら悲鳴が原因で身バレするまである』
『防音がしっかりしてるマンションでよかったね』
『ゴキブリじゃなくて蛾とかムカデかもしれないよ』
『角で突けば大丈夫でしょ(適当)』

「ひぃぃいいっ! やめてやめて! 蛾もムカデも想像するだけでゾワゾワしちゃうから! あと絶対に虫相手に角は使いたくない!」

『暗闇の中で虫の足音とか羽音が聞こえたら確かに嫌だな』
『ド田舎に住んでるから日常茶飯事だわ』
『悲鳴助かる』

「自分で言い出したことだけど、もしもの話とはいえ我ながら恐ろしいエピソードを語っちゃったな~。みんな、トイレは我慢せず早めに済ませておくようにしてね。そうじゃないと、恐怖体験に遭遇したら漏らすことになっちゃうよ!」

『はーい』
『言うほど恐ろしくはなかったよ』
『トイレを我慢するのはダメだね』
『常にオムツ穿いてれば平気っしょ』
『ユニコちゃんも気を付けてね』

「ところで……いま配信してるあたしが、本物じゃなくてドッペルゲンガーだって言ったら……みんなは信じる? ふふふ……それじゃあ、おつユニ~!」

 最後にほんのりホラーテイストなことを言い残して、あたしは配信を終了した。
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