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70話 ほくろの場所

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 いまはゲームの実況を終え、配信を終了するまでのエンディングトークの最中だ。
 感想を語っていると、ゲームの内容とまったく関係のない話題が頭に浮かんできた。
 忘れないうちに話してしまおうと思い、あたしは深く考えずに口を開く。

「いきなりなんだけど、ほくろって自分じゃ分からない場所にあったりするよね~」

『確かに』
『うなじとか気付きにくいよね』

 突然の話題変更にもかかわらず、すぐさまほくろの話に乗ってくれるリスナーさんたち。
 共感の言葉や具体例など、いろんなコメントを送ってくれる。

「実はね、ミミちゃんにもあるんだよ! 小さなほくろが一つ、自分ではまず絶対に気付かない場所に!」

 目元や口元にあると色っぽいとか、ほくろの話でひとしきり盛り上がった後、あたしは自分でも分かるほど楽しそうに言い放った。

『ほう』
『なんか急にテンション高くなった』
『どこにあるんだろ』
『気になる』

「知りたい? 知りたいよね? でも内緒~!」

 場所が場所なので、本人の許可なく勝手に口外することはできない。
 ましてや、配信に乗せるなんてもってのほかだ。

『は?』
『は?』
『イラッ』
『かわいいけどムカつく』
『殴りたいけどかわいいから許す』

「ごめんごめん、お詫びにかわいいアイドルソングを子守唄として歌ってあげるから許してっ」

『……え?』
『ゲリラ生歌嬉しいけど……童謡じゃないの?』
『ちょっと待って、鼓膜の準備する』
『もったいないけど鼓膜が惜しいので退席します』
『アイドルソングならそれなりに軽傷で済むと信じたい』
『下手したら永眠するんだが』
『鼓膜を犠牲にしてでも聞きたいです』

 あたしが唐突に歌うと言い出したことで、リスナーさんたちがあからさまにざわつき始めた。
 多大なリスクを承知の上であたしの歌を聞きたいと言ってくれるのは嬉しいんだけど、誰一人として歌唱力についてのフォローを入れてくれないのが地味に悲しい。

「それじゃあ最近流行りのあの曲、歌っちゃうよ~!」

 カラオケ音源を流し、エコーをかけて元気に歌う。
 二番に入った時点で鼓膜うんぬんといったコメントが溢れかえったものの、気にせず歌い続けた。
 歌い終わった後にいつものあいさつを添え、配信を切る。

***

 配信中のほのめかしたミミちゃんのほくろは、あたしが見付けるまで本人すら知らなかった。
 どんなに薄着で外を歩いていたとしても、絶対に誰も気付かない。
 それが仮に水着だったとしても、同じことが言える。
 ならば、いったいどこにあるのか。

「ミミちゃん、今日は和室で寝ない?」

「えっ!? は、はい、いいですよ」

 あたしの急な誘いに、ミミちゃんは赤面しながらうなずいた。
 つい最近もたっぷり愛し合ったばかりだけど、ミミちゃんと一つになりたい欲は決して尽きることがない。

「朝まで寝かせないからねっ」

「望むところですっ」

「ところで、さっきの配信でほくろの話をしたんだけど」

「い、言ってないですよね?」

「もちろん。お尻の穴とアソコのちょうど真ん中ぐらいにあるなんて、たとえ拷問されても言わないよ!」

 あたしはトンッと自分の胸を叩き、誇らしげに宣言した。

「恥ずかしいからわたしにも言わなくていいですっ」

「むぐっ」

 さっきよりさらに顔を赤くしたミミちゃんに口を塞がれてしまう。
 誰にも言わないという対象の中には、本人も含まれていたらしい。
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