上 下
34 / 211

34話 三人でコラボ①

しおりを挟む
「自己紹介も終わったところで、本番に行ってみようっ」

 若干の恥じらいを残しつつ、ミミちゃんがあたしになりきって話を進める。

「今日はコメントを多めに拾っていくので、どんどんコメントしてくださいね」

『何時間ぐらいやる予定?』
『今日いつもと声違くない?』

 あたしの発言を皮切りに、あいづちや要望、質問のコメントが増える。
 とりあえず、目に付いた質問から答えていこう。

「最低一時間で、場合によっては長くなりま――なるよっ。できれば最後まで見てほしいけど、眠たくなったら我慢せずに寝てね~」

 ミミちゃんは敬語を使う機会の方が圧倒的に多いから、ふとした拍子にポロッと敬語で話しそうになっている。
 慌てて修正する様子が、なんともかわいらしい。
台本の用意を冒頭の部分だけに限定したのは、我ながらいい判断だった。

「声が違うっていうコメントが見えましたけど、わたしたちはいつも通りですよ。そうですよね、ユニコちゃん?」

「うんうん、いつも通りだよねっ」

 今回は話し方だけを本人に寄せているけど、次に同じような企画をする際には声真似を取り入れるのも面白いかもしれない。

『なるほどー』
『気のせいだったか』
『睡眠より配信の方が大事だから寝ません』
『かわいい』

「それにしても、ユニコちゃんの慎ましやかなおっぱいは本当にかわいらしいですよね」

「ゔぇっ!?」

『!?』
『急にどうした』
『!?』
『え?』
『ミミちゃんはそんなこと言わない』
『まるでどこぞのユニコーンが乗り移ったような発言だ』

 あたしの唐突かつ突飛な発言に、ミミちゃんもリスナーさんも激しく動揺している。
 ミミちゃんが言いそうにないセリフであることは百も承知だけど、せっかくの機会だからあえて言わせてもらった。
 一応は闇神ミミが一角ユニコを褒めているという構図になるので、リスナーさんがこのワンシーンのファンアートを描いてくれることを心の中で祈っておく。

「みっ、みみみっ、ミミちゃんのおっぱいも、かわいいと思うよ!」

 あたしになりきって少しエッチなことを言おうとしたものの、恥ずかしさからか声がわずかに上ずっている。
 ミミちゃんには悪いけど、配信的には取れ高の一つとしてカウントしてもいいんじゃないだろうか。

『ユニコちゃんの照れ顔って何気にレアだよね』
『ミミちゃんニッコニコで草』

 いま流れたコメントにあったように、あたし――ユニコの照れ顔は普段の配信ではあまり見れない。
 せっかくかわいい表情なのだから、今日ぐらいはもっとリスナーさんたちに見てもらいたい。
 となれば、重ね重ねミミちゃんには悪いけど、もう少しだけ、いじらせてもらおうかな。

「ユニコちゃん、今日はなんだか様子が変じゃないですか?」

「そっ、そんなことないよっ、いつも通り元気だよ!」

「そうですか? 落ち着きがないように見えるんですけど」

「いつも通りだよ!」

 ミミちゃんっ!?
 そりゃ確かにあたしは比較的騒がしい方だと思うけど、落ち着きはあると思うよ!?

「ちょっ、ミ――じゃなくてユニコちゃん、普段はもっと落ち着いていますよね?」

『草』
『確かにいつも落ち着きがないかもw』
『なぜかミミちゃんが焦ってますね~』
『これは攻守交替かな』

「落ち着いてないもん! あたしは常に暴れ回ってないと気が済まないタイプだから!」

 まずい。いじるタイミングを誤ったかもしれない。
 おっぱいの件で恥ずかしがっているところに追い打ちをかけたから、あたしになりきろうとする意志と羞恥心が相乗効果を生んで、ミミちゃんがよく分からないテンションになっている。

「常に暴れ回っていたらすぐにスタミナ切れを起こしちゃいますよ。とりあえず、深呼吸をして落ち着いてください」

 まさかあたしが冷静になるよう促す立場になるとは、ほんの数秒前は考えもしなかった。

「平気平気、あたしのスタミナは無尽蔵だから! この前だって、ミミちゃんと――むぐぅっ!?」

 嫌な予感を覚え、あたしは反射的にミミちゃんの口を手で塞いだ。
 確証があったわけじゃないけど、この段階でミミちゃんの発言を封じたのは正解だったと思う。
 いまの文脈から推察するに、あのまま放っておいたらアーカイブに残せなくなる類の言葉が飛び出ていた可能性が極めて高い。

「す、すみません、いきなりなんですけど、お水を飲む時間を少しくださいっ」

『いいよー』
『ゆっくりどうぞ』
『水分補給しっかりね』
『お水飲んでえらい』

「ありがとうございます。ほらユニコちゃん、お水ですよ」

 この前エッチした時の話をリスナーさんたちに知られるわけにはいかないので、ひとまずミミちゃんが冷静さを取り戻すまで少し間を置かせてもらおう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...