ギリギリセーフ(?)な配信活動~アーカイブが残らなかったらごめんなさい~

ありきた

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24話 ちょっとした企画②

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「ミミちゃん、口でドラムロールよろしく!」

 お題箱であるティッシュの空き箱に指を突っ込み、中身をガサガサとかき回しながら要求する。

「えっ? わたし、巻き舌できないんですけど……」

「それっぽい雰囲気を作るためだから、口で言ってくれるだけでも大丈夫っ」

「わ、分かりました。でゅ、どぅるるるるる――」

 できないなりに巻き舌を意識するミミちゃんのドラムロール。
 計画通り!

『か、かわいい……』
『かわいい』
『なんだこのかわいい生き物』
『切り抜き師さん、お願いします』
『これは万病に効きますね』
『ユニコちゃん、これを狙ったのか』
『ミミちゃんのドラムロールかわいすぎ』

「ふへぁ……ミミちゃん、かわいい……」

 リスナーさんたちはもちろん、あたしも大喜び。
 苦手でも頑張ってくれる健気さに心癒され、美しくかわいい声に脳が蕩ける。
 できればこのまましばらく堪能していたいけど、それはさすがに申し訳ない。
 あたしは絶え間なく動かしていた指をピタリと止め、メモ用紙を一枚取り出した。

「それではっ、記念すべき最初のお題を発表するよ~!」

 リスナーさんたちの期待を煽るために数秒ほど間を置き、二つ折りにしたメモ用紙を開いてその内容に目を通す。

「じゃん! 『熱血キャラになる』!」

 あたしが書いたお題だ。
 一発目としては、なかなか無難な内容なんじゃないだろうか。

「熱血キャラですか、了解ですっ」

「それじゃあ、さっそく始めるよ。熱血キャラに対する偏見が混じってるかもしれないけど、細かいところには目をつぶってね」

『了解です!』
『おっけー!!』
『どうなるんだろう!!!!』
『楽しみ!!』

 お題に合わせてくれているのか、コメント欄の『!』がさっきより明らかに多くなっている。
 ミミちゃんとアイコンタクトを交わした後、スマホを操作してストップウォッチを起動し、スタートボタンを押す。

「ミミちゃん! ミミちゃん! ミミちゃーんっっ!」

「な、なんですかー!」

「おっぱい揉みたい!」

「いまですか!?」

 勢いに任せて素直な欲求を叫んでみた。
 それに対するミミちゃんの反応は、熱血キャラを意識したというより、素でビックリした感じだ。

「うん! 闇の民さんたちには恨まれるかもしれないけど! 炎上すらも覚悟の上で揉みたい!」

 と、ここでコメント欄をチェック。

『熱血か分からんけど面白いw』
『いいぞもっとやれ!』
『ミミちゃん逃げてー!』
『てぇてぇ』
『私たちに構わずもっとイチャイチャしてください!』
『うおおおおおお!』

 いろんな意味で盛り上がっている。

「BANされたら嫌なのでいまはダメです!」

「分かった! 配信後に揉む!」

「はい! って、え? あれ?」

 いつの間にか要望が確定事項に変わり、困惑するミミちゃん。

「ミミちゃんっ、勢いが足りないよ! もっと熱くなって!」

「えっ、あっ、はい!」

『勢いで押し切りやがった!』
『後で感想聞かせて!』
『誰かファンアート頼む!』

「盛り上がってきたー! さらにテンション上げていくよ!」

「はいっ、頑張ります!」

「だけど無理はダメだよ! のどを痛めないように気を付けてね!」

「分かりました! ユニコちゃんも無理しないでくださいね!」

「うんっ! ありがとう!」

 他愛のない会話を一言一言叫びながら続け、あっという間に五分が経過した。
 ストップウォッチを止め、テーブル上のペットボトルに手を伸ばす。

「ぷは~っ、たくさん叫んだ後のお水は格別だねっ。はい、ミミちゃんもどうぞ」

「ありがとうございますっ」

 ミミちゃんが飲み物を用意していることは承知の上で、あたしは自分が口を付けたペットボトルを渡した。
 自然な流れで間接キスを成立させ、心の中でガッツポーズを決める。
 さぁ、配信はまだ始まったばかり。
 次はいったい、どんなお題が来るのだろうか。
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