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58話 受けとか攻めとか
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「うーん……」
授業中、私は眉をひそめて真剣に頭を悩ませていた。
理由はゴールデンウィーク明け早々に行われている数学の小テスト――ではなく、極めてプライベートなこと。
彩愛先輩との関係、という表現では語弊を招きそうだ。付き合い方、というのも少し違う。
言葉を選ばずに言ってしまうと、エッチなことをする際の主導権について。
初体験の時は気にしていなかったけど、昨日の一件を経て、引っかかりを覚えてしまった。
なんだかんだで、彩愛先輩が主導権を握っている気がする。
もちろん嫌ではない。むしろ嬉しい。
ただ、なんとなく疑問に思ってしまっただけだ。
***
というわけで、思い切って本人に訊いてみることにした。
下校中、辺りに人がいないのを確認してから口火を切る。
「エッチの時に彩愛先輩が主導権を握ってる気がするんですけど、彩愛先輩はどう思います?」
「なっ、えぇ!? い、いきなりなに言ってんのよ!」
私の質問を受け、彩愛先輩は尋常じゃないほどに動揺した。
無理もない。自分の言葉を反芻してみると、とても道すがら口にする内容ではないと軽く反省させられる。
「ちょっと気になったんです。別に無理やり襲われてるわけでもないのに、気付けば彩愛先輩にリードされてるなぁ、って」
「下校中にする話じゃないと思うんだけど……まぁいいわ」
彩愛先輩は念のため周囲に視線を巡らせ、人目がないことを確認してから改めて口を開いた。
「要は本質的にあたしが攻めで、あんたが受けってことよ」
「そうですか? 私の方が攻めに向いてると思うんですけど」
普段は強気な彩愛先輩が私に組み敷かれている姿を想像するだけで、電流にも似たゾクッとした感覚が背筋に走る。
そういった妄想を膨らませる私は、攻め気質だと言えるのではないだろうか。
「甘いわね。向いてるとか向いてないとか、そういうのは関係ないわ」
経験値で言えばまったくの互角なのに、やたらと上から目線だ。
「じゃあ、次にエッチする時は私に攻めさせてください。どっちが本当の攻めなのか、体に教えてあげます」
私が自信ありげにそう言うと、彩愛先輩は余裕を感じさせる声音で「楽しみにしてるわ」と答えた。
いざ本番になって、容易く攻守逆転されてしまったらどうしよう。
昨夜みたいに、激しくも優しく責められてしまったら……。
かすかな不安が脳内にイメージ映像を生み出し、再び背中にゾクッとしたものを感じる。
それは先ほどの似たような感覚と比べて、明らかに鮮烈だった。
授業中、私は眉をひそめて真剣に頭を悩ませていた。
理由はゴールデンウィーク明け早々に行われている数学の小テスト――ではなく、極めてプライベートなこと。
彩愛先輩との関係、という表現では語弊を招きそうだ。付き合い方、というのも少し違う。
言葉を選ばずに言ってしまうと、エッチなことをする際の主導権について。
初体験の時は気にしていなかったけど、昨日の一件を経て、引っかかりを覚えてしまった。
なんだかんだで、彩愛先輩が主導権を握っている気がする。
もちろん嫌ではない。むしろ嬉しい。
ただ、なんとなく疑問に思ってしまっただけだ。
***
というわけで、思い切って本人に訊いてみることにした。
下校中、辺りに人がいないのを確認してから口火を切る。
「エッチの時に彩愛先輩が主導権を握ってる気がするんですけど、彩愛先輩はどう思います?」
「なっ、えぇ!? い、いきなりなに言ってんのよ!」
私の質問を受け、彩愛先輩は尋常じゃないほどに動揺した。
無理もない。自分の言葉を反芻してみると、とても道すがら口にする内容ではないと軽く反省させられる。
「ちょっと気になったんです。別に無理やり襲われてるわけでもないのに、気付けば彩愛先輩にリードされてるなぁ、って」
「下校中にする話じゃないと思うんだけど……まぁいいわ」
彩愛先輩は念のため周囲に視線を巡らせ、人目がないことを確認してから改めて口を開いた。
「要は本質的にあたしが攻めで、あんたが受けってことよ」
「そうですか? 私の方が攻めに向いてると思うんですけど」
普段は強気な彩愛先輩が私に組み敷かれている姿を想像するだけで、電流にも似たゾクッとした感覚が背筋に走る。
そういった妄想を膨らませる私は、攻め気質だと言えるのではないだろうか。
「甘いわね。向いてるとか向いてないとか、そういうのは関係ないわ」
経験値で言えばまったくの互角なのに、やたらと上から目線だ。
「じゃあ、次にエッチする時は私に攻めさせてください。どっちが本当の攻めなのか、体に教えてあげます」
私が自信ありげにそう言うと、彩愛先輩は余裕を感じさせる声音で「楽しみにしてるわ」と答えた。
いざ本番になって、容易く攻守逆転されてしまったらどうしよう。
昨夜みたいに、激しくも優しく責められてしまったら……。
かすかな不安が脳内にイメージ映像を生み出し、再び背中にゾクッとしたものを感じる。
それは先ほどの似たような感覚と比べて、明らかに鮮烈だった。
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