上 下
11 / 67

11話 幼い頃の恥ずかしい思い出

しおりを挟む
 今日は学校でスポーツテストが実施された。

 学年が違うから時間帯は別だけど、放課後になって合流するや否や、私と彩愛先輩は結果が記されたシートを取り出して自分の方が上だと競い合う。

 家に着くまでずっと幼稚な言い争いを繰り広げ、帰ってからも私の部屋に集まってギャーギャーと騒ぎ続けた。

 陽が沈んだ頃にはさすがに落ち着きを取り戻し、お母さんの提案で彩愛先輩も一緒に晩ごはんを食べる。

 家族団らんの場に彩愛先輩が同伴するのは昔から見慣れた光景で、逆もまた同様。ついこの前も、彩愛先輩のご両親と一緒に食卓を囲んだ。

 部屋に戻ると、彩愛先輩は開け放った窓から身を乗り出し、向かいにある自分の部屋の窓を開けて滑るように入室。

 今日はもう帰ってしまうのだろうか。

 というか、ここから行き来されたら後で靴を届けに行く手間が増えるんだけど……。

 そんなことを考えていると、着替えを脇に抱えた彩愛先輩が、先ほどと同じ方法で私の部屋に戻る。


「今日も泊まって行くんですか?」


「そうよ、ありがたく思いなさい」


「なんで偉そうなんですか……」


***


「お風呂って最高ですよね~」


「まったくもってその通りだわ~」


 私と彩愛先輩は向かい合って湯船に浸かり、一日の疲れが抜けていくのを感じながら恍惚の溜息を漏らす。

 意見が一致し、些細な口論すら起こらない。

 二人にしては珍しい平和なひと時が、幼少期の思い出をよみがえらせる。

 いま思うと信じられないけど、仲がよかった頃――小学生ぐらいまでは、毎日のようにキスしてたなぁ。

 しかも、頬や額じゃなく、唇と唇で。

 もちろん深い意味はない。あれは多分、海外でのあいさつみたいなノリだったはずだ。

 微笑ましい思い出だと懐かしんでいると、彩愛先輩がツンツンと胸を突いてきた。


「なにボーッとしてんのよ。お風呂で無理は禁物、のぼせる前に上がりなさい」


「すみません、子供の頃を思い出してました」


「ふーん。子供の頃……そう言えば、お風呂で見せ合いっこしたわね」


「確かに、そんなこともありましたね」


 彩愛先輩に言われて、当時の光景が頭に浮かぶ。

 幼さゆえの好奇心から、お風呂の洗い場で恥ずかしげもなくお股を開き、お互いのアソコをまじまじと観察し合った。

 キスもそうだけど、わりと大胆かつ過激なことをしている。

 子供って怖い。これが俗に言う黒歴史なのかな。


「あと、歌恋があたしの部屋に泊まるたびにおねしょしてた」


「そ、それは忘れてくださいっ」


「忘れたくても忘れられないわ。毎度毎度、マーキングかってぐらいベッドをおしっこまみれにされたのよ? 隣で寝てるあたしまで歌恋のおしっこで水浸しになるし、当の犯人は大泣きするし。あの頃は優しく慰めてたけど、いまだったら殴り飛ばしてるわよ」


「いっ、いまはおねしょなんてしませんから! それに、彩愛先輩だってエレベーターの中で漏らしたことあるじゃないですか! お化け屋敷でも漏らしてましたし、観覧車でも盛大に漏らしてましたよ!」


「うっ、うるさいわね! 子供の頃の話を蒸し返すんじゃないわよ!」


「それはこっちのセリフです!」


 双方ケンカ腰になったものの、この話題はここで打ち切りとなった。

 これ以上続ければ二人のメンタルがただでは済まないことを、お互いに確信している。

 思い出すだけで恥ずかしい出来事は、まだまだ数え切れないほどにあるのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

処理中です...