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43 大浴場って、こういう事なの?
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「いや~、ごめんね。うちのパブロがお邪魔しちゃって」
宿屋の一階の食堂で、ルーチェとディアマンテにお詫びのために朝食を奢るパブロの前に、何食わぬ顔をしたカルロスが現れる。
「お前が酒場の女と盛り上がっているから入れなかったんだろ! お前の性欲の所為だ! ここはお前が払え!」
「そんな……! 俺はパブロに混ざってもいいよって伝えたよ。遠慮しないで入ってくればよかったのに」
「お前のプレイは特殊なんだよ! あんな変態行為に混ざれるか!」
「あ、あのう……。視線が痛いのでその辺で」
ルーチェが二人の間に立って言い合いの仲裁をする。一行の周囲のテーブルは、突如始まった猥談に興味津々でジロジロとこちらを見ているのだから。その視線が辛いルーチェは「本当に止めて」と小声で呟く。
「パブロから聞いたよ。優しい女神様が昨晩は部屋に泊めてくれたって。何て可愛い子なのだろうね。フワフワしたドレスが本当に似合っているよ」
ルーチェを見てウインクをするカルロスは、本当に女性慣れをしているのだろうと思う。何だか少し居心地が悪い。モジモジしながら顔を伏せて視線をかわした。
――私はこんな感じの誰にでもいい顔をする人が苦手だわ。どちらかと言えば自分だけを見てくれる人のほうが……。
ルーチェの視線は自然とディアマンテへと移動する。その視線に気が付いたような彼は、ソッとルーチェの手を取りチュッと手の甲に唇を落とす。
「……ねえ、君たちは恋人同士?」
「えっ! ち、違います……。そう言うのじゃないのです」
「そうなのか? でもお前ら昨日の晩ヤッてただろう?」
「は、はい? ちょと、な、何を言っているんですか……!」
明らかに動揺するルーチェは、手をパタパタと動かして火照った顔を冷まそうとしているが、全く役に立っていない。
「あ、私は大浴場に入りたいので、この辺で……。朝食ありがとうございました。さあ、ディアマンテ行くわよ」
まだ途中だった朝食だが、これ以上はこの場にいたくないルーチェは、側にいるディアマンテの腕を掴んで足早に食堂から去っていく。そんな二人の様子をジッと見つめているカルロスは、横で何食わぬ顔で食べ物を口に運ぶパブロに「なあ……」と声を掛ける。
「あれって、依頼の探し人じゃないの? 上手く取り入ったよね……。流石パブロ」
「別に取り入ってねえよ……。偶然、昨日会っただけだ。それにお前に言われるまで魔女だと解らなかったしな。ゴーレムなんか、どうみても本物の人間じゃないか! どうなってんだ、ありゃ……」
驚いているパブロを冷めた目で見ているカルロスは、一切手を付けられていないディアマンテの皿の上の食事を少し摘まむ。
「こんな美味しそうな食事を目の前にしても、一切手を付けないんだよ。どう考えても可笑しいだろう?」
「……ああ、本当にそうだな」
「しかも大浴場に行きたがる……」
パブロは持っていたフォークで、その皿の上で鎮座する手つかずの肉の塊を突き刺し、大きな口を開けて口内にほり込む。クチャクチャと大きく口を動かして咀嚼し、ゴクリと飲み込んだ。
「さて、どうすっかな……」
****
「え……? 大浴場って、こういうことなの?」
昨日から楽しみにしていた宿の大浴場にやって来たルーチェは、口をあんぐりと開けて驚いている。それもその筈、大浴場は混浴であり、裸の男女が人目を気にせずに交わり合っているのだから。普通に身体を洗っているように見える男性も、側に半裸の女性を連れており、身体を洗ってもらっている。女性も半裸の男性に身体をマッサージしてもらっているが、どうやら熱っぽい声を上げていた。
「どうした、マスター? 貴方が好きな大浴場だろう? さあ、楽しもう……」
ディアマンテは意気揚々と入り口で立ち尽くすルーチェの手を引いて、大浴場の中にある脱衣所へと連れて行く。日本のように脱衣所が別にあるわけではなく、扉を開けるともう浴場で、端っこに荷物を置くような脱衣所があるだけだ。
呆然としている彼女を余所に、甲斐甲斐しく衣服を脱がしていくディアマンテは、あっという間にルーチェを大浴場用の薄い布一枚にする。自身も躊躇しないで服を脱ぎ、大きな逸物を周囲に晒す。浴場には嫉妬の声と、羨望の声が入り交じって響いた。
幾ら周囲の女達がディアマンテに合図を送ろうと、ディアマンテにはルーチェしか映っていない。まだ唖然としているルーチェをそっと抱き上げて、大浴場の中を歩き洗い場で簡単に汚れを落とした後は、大きな楕円形の樽の前にお姫様抱っこのまま進んでいく。
「これは空いているのか?」
「へい、ちょうど掃除が終わりました」
樽の前にいた湯男に声を掛けたディアマンテは「これを使う」と伝える。湯男はそれを聞いて即座に側から離れていく。
何が起こっているのかまだ理解に苦しむルーチェだったが、その大きな二人用の風呂にディアマンテと入っていくと、身体がポカポカと温まっていくことに気が付いた。いつもの簡易お風呂と違って、温泉成分が入っているようだ。
泡風呂のようにブクブクと泡が立ち上がり、甘い匂いがルーチェの鼻に付く。泡のおかげで周囲には身体が見えなくなっており、それもルーチェを安心させる。
しかしその安心も束の間で、ディアマンテの長い手がルーチェの身体に纏わり付く。そして、その手は直ぐに彼女の下半身へと移動していたのだ。
「この泡は周囲からの目隠しの為……。恥ずかしがるマスターにお勧めの風呂だ」
その言葉から、この場所で今から何をされるのか気が付いたルーチェは、即座に立ち上がり「私には露出趣味はないの!」と、大声を上げて風呂から飛び上がるように逃げていくのだった。
宿屋の一階の食堂で、ルーチェとディアマンテにお詫びのために朝食を奢るパブロの前に、何食わぬ顔をしたカルロスが現れる。
「お前が酒場の女と盛り上がっているから入れなかったんだろ! お前の性欲の所為だ! ここはお前が払え!」
「そんな……! 俺はパブロに混ざってもいいよって伝えたよ。遠慮しないで入ってくればよかったのに」
「お前のプレイは特殊なんだよ! あんな変態行為に混ざれるか!」
「あ、あのう……。視線が痛いのでその辺で」
ルーチェが二人の間に立って言い合いの仲裁をする。一行の周囲のテーブルは、突如始まった猥談に興味津々でジロジロとこちらを見ているのだから。その視線が辛いルーチェは「本当に止めて」と小声で呟く。
「パブロから聞いたよ。優しい女神様が昨晩は部屋に泊めてくれたって。何て可愛い子なのだろうね。フワフワしたドレスが本当に似合っているよ」
ルーチェを見てウインクをするカルロスは、本当に女性慣れをしているのだろうと思う。何だか少し居心地が悪い。モジモジしながら顔を伏せて視線をかわした。
――私はこんな感じの誰にでもいい顔をする人が苦手だわ。どちらかと言えば自分だけを見てくれる人のほうが……。
ルーチェの視線は自然とディアマンテへと移動する。その視線に気が付いたような彼は、ソッとルーチェの手を取りチュッと手の甲に唇を落とす。
「……ねえ、君たちは恋人同士?」
「えっ! ち、違います……。そう言うのじゃないのです」
「そうなのか? でもお前ら昨日の晩ヤッてただろう?」
「は、はい? ちょと、な、何を言っているんですか……!」
明らかに動揺するルーチェは、手をパタパタと動かして火照った顔を冷まそうとしているが、全く役に立っていない。
「あ、私は大浴場に入りたいので、この辺で……。朝食ありがとうございました。さあ、ディアマンテ行くわよ」
まだ途中だった朝食だが、これ以上はこの場にいたくないルーチェは、側にいるディアマンテの腕を掴んで足早に食堂から去っていく。そんな二人の様子をジッと見つめているカルロスは、横で何食わぬ顔で食べ物を口に運ぶパブロに「なあ……」と声を掛ける。
「あれって、依頼の探し人じゃないの? 上手く取り入ったよね……。流石パブロ」
「別に取り入ってねえよ……。偶然、昨日会っただけだ。それにお前に言われるまで魔女だと解らなかったしな。ゴーレムなんか、どうみても本物の人間じゃないか! どうなってんだ、ありゃ……」
驚いているパブロを冷めた目で見ているカルロスは、一切手を付けられていないディアマンテの皿の上の食事を少し摘まむ。
「こんな美味しそうな食事を目の前にしても、一切手を付けないんだよ。どう考えても可笑しいだろう?」
「……ああ、本当にそうだな」
「しかも大浴場に行きたがる……」
パブロは持っていたフォークで、その皿の上で鎮座する手つかずの肉の塊を突き刺し、大きな口を開けて口内にほり込む。クチャクチャと大きく口を動かして咀嚼し、ゴクリと飲み込んだ。
「さて、どうすっかな……」
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「え……? 大浴場って、こういうことなの?」
昨日から楽しみにしていた宿の大浴場にやって来たルーチェは、口をあんぐりと開けて驚いている。それもその筈、大浴場は混浴であり、裸の男女が人目を気にせずに交わり合っているのだから。普通に身体を洗っているように見える男性も、側に半裸の女性を連れており、身体を洗ってもらっている。女性も半裸の男性に身体をマッサージしてもらっているが、どうやら熱っぽい声を上げていた。
「どうした、マスター? 貴方が好きな大浴場だろう? さあ、楽しもう……」
ディアマンテは意気揚々と入り口で立ち尽くすルーチェの手を引いて、大浴場の中にある脱衣所へと連れて行く。日本のように脱衣所が別にあるわけではなく、扉を開けるともう浴場で、端っこに荷物を置くような脱衣所があるだけだ。
呆然としている彼女を余所に、甲斐甲斐しく衣服を脱がしていくディアマンテは、あっという間にルーチェを大浴場用の薄い布一枚にする。自身も躊躇しないで服を脱ぎ、大きな逸物を周囲に晒す。浴場には嫉妬の声と、羨望の声が入り交じって響いた。
幾ら周囲の女達がディアマンテに合図を送ろうと、ディアマンテにはルーチェしか映っていない。まだ唖然としているルーチェをそっと抱き上げて、大浴場の中を歩き洗い場で簡単に汚れを落とした後は、大きな楕円形の樽の前にお姫様抱っこのまま進んでいく。
「これは空いているのか?」
「へい、ちょうど掃除が終わりました」
樽の前にいた湯男に声を掛けたディアマンテは「これを使う」と伝える。湯男はそれを聞いて即座に側から離れていく。
何が起こっているのかまだ理解に苦しむルーチェだったが、その大きな二人用の風呂にディアマンテと入っていくと、身体がポカポカと温まっていくことに気が付いた。いつもの簡易お風呂と違って、温泉成分が入っているようだ。
泡風呂のようにブクブクと泡が立ち上がり、甘い匂いがルーチェの鼻に付く。泡のおかげで周囲には身体が見えなくなっており、それもルーチェを安心させる。
しかしその安心も束の間で、ディアマンテの長い手がルーチェの身体に纏わり付く。そして、その手は直ぐに彼女の下半身へと移動していたのだ。
「この泡は周囲からの目隠しの為……。恥ずかしがるマスターにお勧めの風呂だ」
その言葉から、この場所で今から何をされるのか気が付いたルーチェは、即座に立ち上がり「私には露出趣味はないの!」と、大声を上げて風呂から飛び上がるように逃げていくのだった。
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