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23 一緒にお勉強

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「マスター、これは大事な本だ。これを使ってマスターに奉仕することができる」

 猥本を片手に持ったディアマンテは、それを上下に振って熱心に伝えてくるが、ルーチェにしてみたら「ただのエロ本」だ。

「そ、そんなエッチな本は私には必要ないもん! ディアマンテだって、本物のお○んちんが無いんだから要らないでしょう?」
「……アイツらから魔女は性欲旺盛だと聞いた。マスターは性欲が有り余っているのだろう? 俺はこの本を使って、どうすればマスターが喜ぶか研究する」
「酷い偏見! 私は性欲旺盛じゃないので……しなくてもいいです!」

 恥ずかしさから少し震えるルーチェは、目の前にいるディアマンテをドンッと押して自室に逃げ込む。しかしディアマンテもその後を追って、部屋へとズカズカと入り込んできた。

「マスター、嘘はいけない……。貴方の身体は毎夜、熱く熱をもって震えている。その滾りを発散したくて、いつも泣きそうな顔をしているじゃないか!」
「ディアマンテがエッチなことをするからでしょ! じゃあ、止めてよ!」

 ルーチェは側にあったクッションを掴んでディアマンテに向かって投げる。しかしディアマンテは身体を倒して簡単に避けた。そんな小さなことにも腹が立つ。更に数を増やして投げていくが、ことごとく華麗に避けられてしまう。

 散々物を投げて落ち着いたルーチェの側に寄り、ソッと頬を撫でるディアマンテは、額に優しいキスを落とす。

「マスター、俺は貴方に生かされている。貴方がいなければこうして動くことも叶わない。また、ただの粘土人形に逆戻りだ……。どうか怒らないでほしい。俺は貴方の為にここにいるのだから――」

 ディアマンテのキラキラと光る瞳に見つめられ、ルーチェは口を開いて吐息を漏らす。その吐息は何故出てくるのか分からないが、身体が熱く火照っているのは理解出来た。

 身体をルーチェを押しつけるディアマンテは「クックック」と微かに笑う。ルーチェはなすがままで抱き寄せられる。ディアマンテの口元はルーチェの耳の側にあり、あの甘い重低音の囁きがルーチェを見えない鎖で拘束した。

「……ほら、マスター。貴方の身体は欲情している。俺を欲しているんだ」
「ち、ち……がう。ていうか、どこでそんな知識を?」
「……本だ」

 普通の成人男性並みの淫猥な知識を得ているかのような口ぶりのディアマンテに、驚きを隠せないが、きっとあの猥本からなのだろうかと内心疑う。

 ――アノ本は絶対に焼却よ!

 頭の中で固く決意する。するとディアマンテが、ルーチェにその気があるかどうかを試すように、ソッと優しくなでるようなキスを唇に落としてきた。初めは啄むようなキスだったが、次第に舌を口内へ滑り込ませ、ルーチェの舌に絡ませて深く繋げていく。

 口で繋がったまま、ディアマンテはルーチェの臀部に手を回して持ち上げる。軽々と持ち上げられたルーチェは自然に脚をディアマンテの胴に絡ませた。その恰好のまま移動して、二人はベッドの側へとやって来る。

 ベッドの上にルーチェをソッと載せたディアマンテは、ようやく唇を離して再度あの瞳で見つめてきた。ルーチェは身体がゾクゾクと震えるのを感じ取り、両手で自分の身体を抱き寄せる。

 視線を交差させたままで、ディアマンテがルーチェの服の裾から手を忍ばせ、小刻みに震えている暖かい胸を触る。その温かみはディアマンテが持っていない、血が通った生身の人間のもの。嫉妬なのか羨望なのか分からないが、ディアマンテは少し荒っぽく肌を撫でる。人肌より明らかに低い温度で敏感な所を触られたルーチェは、ビクッと大きく身体を震わせた。

「マスターは暖かい……。この温度は俺を安心させる」

 ルーチェの可愛らしいフリルの付いたブラウスのボタンを一つ一つ外し、優しく脱がせたディアマンテは、白いシュミーズからはみ出すほど大きい胸を再度撫でる。指で形をなぞるようにして突起の部分で止まり、ギュッとそこを摘まんだ。

「あぁぁぁ!」
「マスター、痛いのか?」

 声を出さずに頭を上下に振るルーチェ。ディアマンテが「そう……?」と低く耳元で囁く。
 
「抓ったときにマスターのココから甘い匂いがした。この匂いは発情の匂い、男を惑わす匂いだと知った。マスターは俺を誘っているのだろう?」

 昨日までとは違うディアマンテの性への知識に驚くが、もちろんルーチェが答えを知っているわけもなく、只々恥ずかしさから否定するしかなかった。

「ディアマンテ、怖いよ……。どうしてそんなにエッチなことに詳しくなっているの? 何だか不公平、ずるい!」
「ずるい? では貴方も学べばいい……。ちょうど、ここに本があるのだから」

 年頃のルーチェは口では「エッチなこと」と拒否していても、何処かで興味はあった。しかし周りにそれを教えてくれる者はおらず、どうすることもできなかった。しかし、今目の前に「エッチの教本」がある。それは本心を言えば喉から手が出るほど知りたかったこと。

「ん……、わかったよ。一緒に勉強するわ」

 ルーチェが言った言葉を、表情に乏しい筈のディアマンテが妖しく微笑んで「ああマスター、一緒にだ」と耳元で甘く囁くのだった。 
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