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13 マスターの体液が燃料
しおりを挟む浴室から追い出されたディアマンテは、濡れたままジオンの部屋、いや今はディアマンテの部屋に入っていく。そのまま部屋の中で、床を見てジッとしていたが、急に電池が切れたかのように、頭から勢いよく床に落下していく。
ドーン! と地響きがしたのではないかというくらいの音がし、ルーチェは「え? 何?」と慌てて浴室から飛び出す。もちろん慌てすぎてタオルも巻かないで全裸のまま、音のした方へ走り出した。
「ディアマンテ、どうしたの!」
音のした方、つまりはディアマンテの部屋に駆け込んだルーチェは、床に大の字で転がっている彼を発見する。側に寄って頭を持ち上げるが、眼は開いていても身体は動きはしない。
「もしかして燃料切れ? そうよね、御飯食べられないのだもん。他の燃料が――」
ルーチェはディアマンテの言葉をふと思い出す。『ゴーレムを動かすにはマスターの体液が必要だ』と言っていた。
「そうか。魔法を完成させる為だけではなくて、燃料として体液がいるってことなのね……。ということは、血液を……」
部屋の中を見渡し、机の上に置いてあったペーパーナイフに目を向けたルーチェは、それを手に取って左手人差し指にソッと宛がう。ペーパーナイフの先は鋭く尖っており、少し力を入れるだけで人差し指から血が滲み出す。
「さあ、ディアマンテ。これを飲んで――」
人差し指をディアマンテの口に押し当てたルーチェは、少し開いている唇の間に指を滑り込ませる。口の中で円を描くように指を動かせば、ニュルッと生ぬるいディアマンテの舌がルーチェの指に絡みついてきた。
艶めかしい舌の動きは、少しルーチェの頬を赤らめさせる。赤子が親の指を吸うというよりは、それは淫猥な行為の途中に繰り広げられる愛撫のようで、ディアマンテの舌はルーチェの指を舐めて吸う。その一挙一動をウットリとした顔で見ていたルーチェは、下半身に疼きを感じて太股をモジモジと動かしていた。もちろん全裸のままなので、ディアマンテの瞳には、ルーチェの少しピンクに染まっていく肌が丸見えだった。
そんなルーチェの様子を、キラキラと光るダイヤモンドの瞳で全てを見透かすように見ているディアマンテは、ゆっくりとルーチェの指から唇を離していく。
「……マスター? 脚を動かしてどうしたのだ?」
「え? え……、な、何でもないから……」
バッと立ち上がるルーチェは、恥ずかしそうに顔を下に向けて部屋から出て行く。すると動けるようになったディアマンテは、雛が親鳥の後に付いていくようにルーチェの後に付いてきた。
「マスター。俺の燃料は貴方の体液だ……。先ほど食卓で言おうと思ったが、機会を逃してしまった」
「そ、そう……。わかっ、キャーーーー!」
足早に自室に向かうルーチェは、濡れている床に脚を滑らせて派手に転ぶ。しかし床に派手に頭を打ち付ける寸前で、ディアマンテがルーチェの身体を背後から支えた。再度、ディアマンテの麗しい胸板に抱き寄せられたルーチェは、ボンッと音がするかと言うほどに瞬時に顔を真っ赤にする。
「マスター、気を付けてくれ。俺がいなかったら危なかった」
「だって床が濡れているのだもの……、って私が悪いのか」
「いや、俺が濡らしたのもある……。マスター、申し訳ない」
ディアマンテはルーチェを胸の前で横に抱いて立ち上がる。その状況に「お、お姫様抱っこ!」と少し興奮気味のルーチェは、自分が全裸なのが嫌でも視界に入り更に顔を赤くした。
「危ないので部屋まで俺が運ぶ」
「いや、いいから! 下ろして……」
「……マスター、熱でもあるのか? 顔が赤い。本によると――」
「裸が恥ずかしいからです!」
ルーチェは声を荒らげるが、ディアマンテは首を少し横に傾けて黙っている。羞恥心を理解していないのか、それとも……。
「マスター、生まれたままの姿というのは神聖なものらしい。それにマスターの一糸纏わぬ姿は美しい。何も気にしなくていいと思う。特にその豊満な胸――」
「キャー! 本当にそれ以上は言わない!」
ルーチェはディアマンテの唇を両手で押さえる。するとディアマンテは言おうとした言葉を飲み込んだが、その代わりにチョロッと舌を出し、ルーチェの指を淫らに舐めだした。驚いて手を引っ込めようとしたルーチェだが、またディアマンテの美しい瞳がルーチェを射貫いて離さない。
――この瞳は駄目……。こんなふうにみられると……!
「マスター、もう寝る時間だ」
低いが甘い声でディアマンテが囁き、ルーチェは「……うん」と弱く返事をする。そっと目線を外したルーチェは、静かにディアマンテの胸板に顔を埋めるのだった。
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