上 下
32 / 47

俺のモノ

しおりを挟む
「よう、どうだ……? Mのお前にはご褒美のシチュエーションだなあ」


 ヒロトはまだあの恥ずかしい恰好のままで手足を拘束されている。ポッカリと顔を覗かせる窄まりを、ジッと見つめる時貞は、太股の正の字を数えた。


「二〇回って何だ? 二〇回突っ込まれたのか?」

「んぁ……、ちげえよ……。ど、ドライでイッたかず……だ」


 ブルッと震えるヒロトを見て「ドラッグを喰わされたな」と時貞は冷たく呟く。しかし一向にヒロトの拘束を解かない時貞は、上からヒロトを見下ろしているだけだった。


「な、なに……してんだよ! 早く解いてくれ……って」

「……そのままでいいだろう? 解いたら、お前はまた逃げ出すんじゃないのか? そのまま若い衆に頼んで運んで貰う」


 それを聞いて時貞ならやりかねないと思ったヒロトは、「や、やだ……!」と悲痛な声を上げる。その様子を見て嗜虐心が擽られてゾクゾクする時貞は、ヒロトの後孔を靴でグリグリと踏むのだ。そんな屈辱的な刺激でさえも、セックスドラッグで敏感になっているヒロトにはご褒美だった。


「んぁ……! やぁ……。うぅぅ」


 腰をくねらせるヒロトは熱の籠もった瞳で時貞を見つめる。時貞は「お前は俺のモノだ! 二度と逃げんじゃねえぞ……」と言いながら、結束バンドをポケットに入っていたサバイバルナイフで切り落とす。


 ようやく手足が自由になったヒロトは、男根に付けられていたリボンを外し、震える手で近くに置いてあった下着を身につける。


 まだ腰がガクガクして起き上がれないヒロトに、「手間掛けさせやがって!」と時貞が引っ張って起こしてやる。足下がふらつくヒロトを支えて歩く時貞は、ヒロトの臀部を鷲掴みにしてニヤついていた。その様子を見てヒロトは「エロオヤジの顔だ」と溜め息を吐いていたが、ギュッと時貞の腕に掴まり無意識に身体をすり寄せていた。


「なんだ? 今、突っ込んで欲しいのか? ちょっとぐらい待てよ……」

「はあ? ちげえし! そんなんじゃ、ねえよ……。身体が熱いから。アンタの身体が冷たくて気持ちいいんだ……」


 じゃれ合う二人が玄関のドアから出ようとした時に、グサッと肉を刺す鈍い音が響く。ゆっくりと痛みの先を見る時貞は、「……そうきたか」と吐き捨てる様に言った。

 
 時貞の太股に包丁が突き刺さったのだ。二人の背後にはタカが立っており、「やった! 刺してやった!」と声を上げてフラついた脚で遠ざかる。


「時貞!」

「イテえじゃねえか? すっかり気絶してると思ってたよ。俺が甘かったな……」


 刺さっている包丁を引き抜いた時貞は、包丁を顔の横に持ってきて、包丁から垂れる自分の血をペロリと舐めた。


「ヤクザを刃物で刺すってことは、タマ取りに来たっつうことだ。その落とし前はちゃんとつけさせてもらう!」


 時貞から放たれる威圧は、横で立っているヒロトにも伝わり顔色が青ざめていく。既に顔色が悪いタカは震えながら時貞を見ていた。死を覚悟したのか何か分からないが、諦めたように口をダラリと開けて立っているのだ。


 パーン


 乾いた衝撃音と火薬の匂いがヒロトの周囲に漂う。その音の後にはドーンと大きな音と共にタカが地面に沈んでいく。ヒロトの目前に見える黒い鉄の塊は、サプレッサーが先端に取り付けられた銃だったのだ。血飛沫が飛び散る中で、ヒロトはその情景を呆然と見ている。


「おい! 入ってこい!」

 
 時貞のその声を聞いて、外で待っていた組員が室内にドカドカと入ってきた。どうやら時貞の命令を受けて外で待っていたらしい。


組長おやじ! 大丈夫ですか」

「……ああ、これぐらいいつもの事だ。後は任せた……。ヒロト、行くぞ!」


 時貞はヒロトの肩を抱き寄せる。しかしヒロトは「え? こ、殺した……のか?」とうわずった声で時貞に尋ねる。


「殺しちゃいねえよ……。まあ、この後の落とし前の結果、そうなっちまうかもなあ」

「だ、駄目だ……。そんなことすんなよ……! アイツは時貞を刺した。だから警察に突き出せばいいだろ?」


 歩いていた時貞はピタリと止まってヒロトの顔を見る。その表情は月明かりに照らされて、背筋が凍る程に美しく恐ろしかった。瞳には何も映っていないかのように、ユラユラと揺れている気がする。ヒロトは「あ……」と小さく声を漏らし、この後に自分に起こる事を想像してしまう。少し震える身体を片手で押さえているヒロトは、身体の奥深くで疼き出す「何か」の存在に気が付く。それはヒロトの身体を熱く滾らせた。


「てめえ……。あの男に惚れてるのか?」

「ち、ちげえよ……。と、友達だったから……。あぁぁぁ! やめぇろ……」


 時貞はヒロトの長い金髪の髪を引っ張りヒロトを地面に投げる。髪を引っ張られてバランスを崩していたヒロトは、無様に地面に転がるのだ。そのヒロトを更に蹴る時貞の表情は怒りに満ちているようだった。蹴られて痛い筈のヒロトだったが、時貞が見せる嫉妬に仄暗い嬉しさを湧き上がらせる。


「俺以外の男の心配なんかするな! いいか! お前は俺のモノだ……!」


 時貞の声は暗闇に響いていく。すると暗闇の先から、カツンカツンと革靴の足音が聞こえてくるのだった。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

華落つること知る多少

ましましろ
BL
親の借金のせいでヤクザに身を買われた主人公 鳴海蕾華は穂積璃葉に出会う。 蕾華は自分の願いを叶えられるのか⁈ ヤクザの残虐非道な行動に果たして蕾華は耐えていくことが出来るのか⁈ 『ドキドキ溺愛BL』 ヤクザなので途中過激な表現等が含まれます 生々しい表現や明らかにR-18なシーンが含まれる話にはタイトルに※が付きます。 第1〜2話修正いたしました。

アムネーシス 離れられない番

山吹レイ
BL
諸富叶人は十七歳、高校生二年生、オメガである。 母親と二人暮らしの叶人はオメガという呪われた性に負けずに生きてきた。 そんなある日、出会ってしまった。 暴力的なオーラを纏う、ヤクザのような男。 その男は自分の運命の番だと。 抗おうとしても抗えない、快感に溺れていく。 オメガバースです。 ヤクザ×高校生の年の差BLです。 更新は不定期です。 更新時、誤字脱字等の加筆修正入る場合あります。 ※『一蓮托生』公開しました。完結いたしました。 

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

【完結】なぜ、王子の僕は幽閉されてこの男に犯されているのだろう?

ひよこ麺
BL
「僕は、何故こんなに薄汚い場所にいるんだ??」 目が覚めた、僕は何故か全裸で拘束されていた。記憶を辿るが何故ここに居るのか、何が起きたのかが全く思い出せない。ただ、誰かに僕は幽閉されて犯されていたようだ。ショックを受ける僕の元に見知らぬ男が現れた。 なぜ、王子で最愛の婚約者が居たはずの僕はここに閉じ込められて、男に犯されたのだろう? そして、僕を犯そうとする男が、ある提案をする。 「そうだ、ルイス、ゲームをしよう。お前が俺にその体を1回許す度に、記憶のヒントを1つやろう」 拘束されて逃げられない僕にはそれを拒む術はない。行為を行う度に男が話す失われた記憶の断片。少しずつ記憶を取り戻していくが……。 ※いままでのギャクノリと違い、シリアスでエロ描写も割とハード系となります。タグにもありますが「どうあがいても絶望」、メリバ寄りの結末の予定ですので苦手な方はご注意ください。また、「※」付きがガッツリ性描写のある回ですが、物語の都合上大体性的な雰囲気があります。

ご主人様に調教される僕

猫又ササ
BL
借金のカタに買われた男の子がご主人様に調教されます。 調教 玩具 排泄管理 射精管理 等 なんでも許せる人向け

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

処理中です...