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第四章 夜明けの神殿
第四十四話 逆行~聖女視点~
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道の真ん中で倒れ、僅かも動かない狼の腹部には傷が見える。
そこに虫がたかるように――――青色の光が蠢いているのだ。
不気味だ。
青色の光を単体で見れば神秘的な輝きを持っているのだが、それが血液の流れる傷に集っているという事実は――――不気味さに拍車をかける印象しかもたらさない。
「これが……試練なのかな」
まずは……少し離れた位置から観察する。
青の光は意思を持っているようにどろどろと動き続けている。生命を食べ尽くそうともがいているように見える。
貪欲で奇怪。
こんなに気持ちの悪い魔力の塊は見たことがない。
杖に手を伸ばす。
杖をかざし、魔法を発動する。
「【清め給え。御心のままに――――】」
その瞬間。
胸の中心を貫かれるような痛みが身体に走る。
「――――痛っ」
干渉するために一瞬繋いだ魔力を通して――――私の身体に通路を作った?
体内で騒ぐ奇怪な魔力に意識を集中する。
これ、は――――。
魔物が発する魔力とは性質が全く違う。
どちらかと言うと――――これは――――。
「聖紋の魔力に近い……?」
言葉に出した瞬間、その形容は自分の中で妙にしっくり来た。
”魔”が放つ雰囲気とはかけ離れている。
しかし――――不気味だ。”聖”なるもののオーラとは言えない。
私の中で動いていた魔力は――諦めたのかなんなのか――外に出て行った。そして狼の血液を吸い尽くしたことに気づくと、空中に浮遊して霧消した。
「私の試練、アレ関連だよなぁ……絶対」
邪悪な気配は感じないのに――――絶望的に気味の悪い光。
「……よし。進もう」
聖女に課される試練なんだから――――私にしかできない事なはずだ。
ユキヤとリーシャ……二人の足を引っ張るわけにはいかない。
進み続けて……向き合い続ける。
今私にできることはそれだけなんだから。
杖を握り直し、先の見えない道を歩き始める。
十分ほど歩き続けると、また道の中央で動物が倒れていた。
立派な角を持つ鹿。まだあの青い光は集まってきていないようだ。
「……あれ?」
この子……まだ息がある。
さっきと同じように腹部に深い傷があるけど――――聖女の”役割”で増強された私の治癒魔法だったら……まだ助けられる。
「【癒えよ】」
杖を向けて魔法を発動する。
白色の光が鹿の腹部に宿り、修復を始める。
治癒魔法の本質は書き換えられた情報の復元だ。
欠損の情報が加えられた部位に細工をして、流れを逆行させる。
それは一種の時間遡行。
これが、幼い私が初めて手にした奇跡の形だった。
そこに虫がたかるように――――青色の光が蠢いているのだ。
不気味だ。
青色の光を単体で見れば神秘的な輝きを持っているのだが、それが血液の流れる傷に集っているという事実は――――不気味さに拍車をかける印象しかもたらさない。
「これが……試練なのかな」
まずは……少し離れた位置から観察する。
青の光は意思を持っているようにどろどろと動き続けている。生命を食べ尽くそうともがいているように見える。
貪欲で奇怪。
こんなに気持ちの悪い魔力の塊は見たことがない。
杖に手を伸ばす。
杖をかざし、魔法を発動する。
「【清め給え。御心のままに――――】」
その瞬間。
胸の中心を貫かれるような痛みが身体に走る。
「――――痛っ」
干渉するために一瞬繋いだ魔力を通して――――私の身体に通路を作った?
体内で騒ぐ奇怪な魔力に意識を集中する。
これ、は――――。
魔物が発する魔力とは性質が全く違う。
どちらかと言うと――――これは――――。
「聖紋の魔力に近い……?」
言葉に出した瞬間、その形容は自分の中で妙にしっくり来た。
”魔”が放つ雰囲気とはかけ離れている。
しかし――――不気味だ。”聖”なるもののオーラとは言えない。
私の中で動いていた魔力は――諦めたのかなんなのか――外に出て行った。そして狼の血液を吸い尽くしたことに気づくと、空中に浮遊して霧消した。
「私の試練、アレ関連だよなぁ……絶対」
邪悪な気配は感じないのに――――絶望的に気味の悪い光。
「……よし。進もう」
聖女に課される試練なんだから――――私にしかできない事なはずだ。
ユキヤとリーシャ……二人の足を引っ張るわけにはいかない。
進み続けて……向き合い続ける。
今私にできることはそれだけなんだから。
杖を握り直し、先の見えない道を歩き始める。
十分ほど歩き続けると、また道の中央で動物が倒れていた。
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治癒魔法の本質は書き換えられた情報の復元だ。
欠損の情報が加えられた部位に細工をして、流れを逆行させる。
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これが、幼い私が初めて手にした奇跡の形だった。
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