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第二章 華炎龍ファレイヴィス
第十五話 夢に浮かぶ聖女の微笑
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――これは夢だ。
長い旅の途中――その微かな記憶の断片。
「シルヴィア。なに書いてるんだ?」
宿屋の机に向かって筆を走らせている背中に、そんな問いを投げた。
「友人への手紙。長らく文通でしか交流できてないから、必然的に文章が長くなっちゃう」
「……一個聞きたいんだけど」
「ん?」
「手紙ってどういう風に書けばいいか未だに分からないんだが……決まりとかあるのか?」
「最低限のマナーさえ守っていれば、あとは心が伝わるように書くだけ。あなたの事を大事に思っている、って伝わるように」
「……なるほどな」
あなたの事を大事に思っている……か……。
「ユキヤも誰かに手紙を?」
「いや……家族に書きたいところなんだけど、いくぶん遠すぎてな……」
「自己紹介の時に言ってたね、遠方から来たって」
遠く。
同じ星の光を見ることもできないくらい――遠く。
「――ユキヤ」
「……ん?」
シルヴィアが椅子から立ち上がり、こちらに向かって歩いてくる。
何をする気だろうと不思議に思いつつも、ぼうっと眺めていると――。
「ちょ、シルヴィア?」
背中に手を回され、ぎゅっと抱き締められる。
温かくて。
泣き出したいくらいに――温かくて。
「――なんですか?」
「なんですかじゃなくて……何してるのこれ……」
「んー? ユキヤが寂しそうに見えたので、抱き締めてほしいのかなって」
「二つ間違いがある。抱き締めてほしいなんて思ってないし、なんなら寂しくもない」
「そうですか? うーん……。じゃあ、私が抱き締めたかったので」
こういう理由だったらいいですか? と、シルヴィアは頭一個分下から俺を見上げた。
「見栄を張らなくても……背伸びしなくてもいいんだよ?」
「……なに、を……」
「ゼクルもルージュも、もちろん私も……あなたのことを大切に思ってる」
「……」
「愛しているのはあなたの強さだけじゃない――――あなたの弱さも含めて、私たちはあなたを愛してる」
「……シル、ヴィア」
「だから、泣きたいときは泣いていいんだよ」
視界が光に滲む。
頬を熱い液体が伝っていく。
「――――会いたい」
喉が熱くて、言葉に火がつきそうに思える。
「家族に、会いたい」
「よくできました」
ぎゅっと、一段と強く抱き締められる。
「……痛いよ、シルヴィア」
痛くて――でも、優しくて。
聖女の微笑が、俺を包んでいった。
長い旅の途中――その微かな記憶の断片。
「シルヴィア。なに書いてるんだ?」
宿屋の机に向かって筆を走らせている背中に、そんな問いを投げた。
「友人への手紙。長らく文通でしか交流できてないから、必然的に文章が長くなっちゃう」
「……一個聞きたいんだけど」
「ん?」
「手紙ってどういう風に書けばいいか未だに分からないんだが……決まりとかあるのか?」
「最低限のマナーさえ守っていれば、あとは心が伝わるように書くだけ。あなたの事を大事に思っている、って伝わるように」
「……なるほどな」
あなたの事を大事に思っている……か……。
「ユキヤも誰かに手紙を?」
「いや……家族に書きたいところなんだけど、いくぶん遠すぎてな……」
「自己紹介の時に言ってたね、遠方から来たって」
遠く。
同じ星の光を見ることもできないくらい――遠く。
「――ユキヤ」
「……ん?」
シルヴィアが椅子から立ち上がり、こちらに向かって歩いてくる。
何をする気だろうと不思議に思いつつも、ぼうっと眺めていると――。
「ちょ、シルヴィア?」
背中に手を回され、ぎゅっと抱き締められる。
温かくて。
泣き出したいくらいに――温かくて。
「――なんですか?」
「なんですかじゃなくて……何してるのこれ……」
「んー? ユキヤが寂しそうに見えたので、抱き締めてほしいのかなって」
「二つ間違いがある。抱き締めてほしいなんて思ってないし、なんなら寂しくもない」
「そうですか? うーん……。じゃあ、私が抱き締めたかったので」
こういう理由だったらいいですか? と、シルヴィアは頭一個分下から俺を見上げた。
「見栄を張らなくても……背伸びしなくてもいいんだよ?」
「……なに、を……」
「ゼクルもルージュも、もちろん私も……あなたのことを大切に思ってる」
「……」
「愛しているのはあなたの強さだけじゃない――――あなたの弱さも含めて、私たちはあなたを愛してる」
「……シル、ヴィア」
「だから、泣きたいときは泣いていいんだよ」
視界が光に滲む。
頬を熱い液体が伝っていく。
「――――会いたい」
喉が熱くて、言葉に火がつきそうに思える。
「家族に、会いたい」
「よくできました」
ぎゅっと、一段と強く抱き締められる。
「……痛いよ、シルヴィア」
痛くて――でも、優しくて。
聖女の微笑が、俺を包んでいった。
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