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運命を操る者

240.駆けつける同級生

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 「「ただいまー!!」」
 「おかえり二人とも、手を洗ったらおやつがあるからね」
 「ママ、アル兄ちゃん達が来たよ!!」
 「え!?」

 飛ぶようにペルから降りて玄関を開けっぱなしにして二人が母さんへ話をするのが聞こえてきた。
 すぐに母さんが玄関へ来て俺達を見ると顔を綻ばせて駆けてきた。

 「アル! それにリンカちゃんにおじい様達も!!」
 「お久しぶりですカーネリアさん」
 「ただいま、母さん! 手紙は届いている?」
 「もちろんだよ。大変だったね……」
 「ワシらは宿にでも行こう、馬車だけ置かせてもらえないだろうか?」
 「なにを言っているんですか!? アルの祖父母に宿を取らせるなんてとんでもない。部屋はたくさんあるので遠慮しないでください」
 「ごめんなさいね」

 爺さん達が頭を下げると母さんが二人を抱きしめながら家へ入ろうと微笑む。
 
 「ペロ達はこっちー! お馬さんも連れて行くね」
 「お、ルーク偉いな」
 「えへー。お手伝いしてるんだよ!」
 「クリーガーはルーナが連れて行くね」
 「あ、ずるいよルーナ。一緒に行こう」
 「はは、クリーガーも久しぶりだし一緒に行ってこい」
 「わふ!!」

 ルーナやペロ達の周りを走りながら馬とラクダたちを牧羊犬のように追い立て、双子と厩舎へ移動していった。

 「ふふ、いつも元気ねえ。ホント可愛い」
 「ウチの自慢の双子だからな。さ、俺達は先に部屋に入ろう」
 「うん、お邪魔します」
 「あはは、遠慮は要らないよ!」

 俺の部屋はそのまま残っていたので、リンカたちの部屋を母さんが用意し、荷物を置いてからリビングへ。
 勝手知ったる我が家なので懐かしさを覚えつつ俺は先にソファへ座る。

 「そこにアルが座るといつも通りって感じがするわね」
 「そう? 二年くらい離れていたけど、名残はあるって感じかな」
 「そうだね。無事で帰って来てくれてなによりだよ」

 母さんが俺の頭を撫でてくれ、なんとなく落ち着いた。
 見渡しても変わらない屋敷に帰って来たんだなと安堵している自分がいることに気づく。

 「失礼します」
 「あら、リンカちゃん。失礼しますだなんて他人行儀じゃなくていいのよ? アルの恋人なら家族と同じだからね」
 「ありがとうございます。やっぱり落ち着く?」
 「ん? だな、そう見えるか?」
 「うん。ラヴィーネを倒す前ということもあったと思うけど、表情が穏やかになったかな?」

 リンカに微笑まれて俺は目を丸くしながら自分の頬を撫でる。
 色々あったけどやはり根本には黒い剣士……ラヴィーネを殺すことが第一だったということだろう。

 「ま、それももう終わったからこれからは気を張ることもないだろうな」
 「そう? 王様になるのに勉強がたくさん必要なんじゃない?」
 「う……」
 「ははは、リンカちゃんの言う通りだね! そういえばエリベール様にリンカちゃんのことを伝えたけど『あー……』って苦笑してたわよ」
 「え!? 言っちゃったの!?」

 俺から言おうと思っていたのに……。
 勝手なことをしたなと不機嫌に口を尖らせていると、リンカが笑いながら言う。

 「ふふ、これからは黒い剣士を倒すよりもっと大変かもね?」
 「まあ、それでも今度こそ寿命まで生きることが出来そうだし、いいことだと思うよ」
 「……そうね」

 俺達は前世で子も作らずリタイアした。
 復讐に身をやつした俺、和人とそれをサポートしてくれた怜香も病死という結末。
 
 だけどもうこの世界で生きるのに大きな障害は無い。
 戦争なんかも近隣国に対していつの間にか友好になっているので、下手を打たなければ長く仲良くやっていけそうだ。

 「もうダーハルさんも迎えればいいのに」
 「あれはダメだろ……王女だし……」
 「ああ、あの子ね。王女様だから物言いが生意気だけど、あれは尽くすタイプかもね」
 「やめてくれ母さん」

 そんな話をしていると、玄関が騒がしくなりあっという間に泥だらけになった双子とクリーガーが入ってくる。

 「アル兄ちゃん、ラッド王子が来たよ!!」
 「お、本当か? 王子のくせに相変わらずフットワークが軽いな」
 「あはは、誉め言葉だと思っておくよ」
 「一応そのつもりだけどな」
 
 近くにいた気配はしたので悪態をついてやると、ラッドが双子の後ろから顔を出していつもの笑顔を見せてきた。

 「はいはい、あんた達はお風呂に行くよ。クリーガーも覚悟しなさい」
 「きゅうん!?」
 「ルーナが洗ってあげるね」
 「わふ」

 返事はするがライクベルンの屋敷でルーナが洗ってやった時に雑だったようで苦手らしく尻尾は下がったままである。仲良しなので我慢していると見るべきか。
 一瞬、一番洗い方が優しいリンカに目を向けるクリーガーだが、助けは無いと悟った子狼は耳も下げて風呂場へ消えた。

 「それにしても早くないか? 門番が報告に行ってすぐじゃないか」
 「そうしないと君はすぐどこかに行ってしまうからね? そちらのお嬢さんは?」
 「私はリンカと申します。初めましてラッド王子、お話はアルフェンから聞いております」

 リンカがスカートをつまんで挨拶をすると、微笑みながらラッドは口を開く。

 「初めまして。やっぱり女の子を連れて帰ったんだねえ。あいた!?」
 「アル!?」
 「いいんだよ、一言多いのは変わらないな」
 「まったく、王子にそんなことができるのはお前くらいだぞ」

 軽く小突いてみるとお付のイワンが呆れたように肩を竦めていた。

 「そりゃ同級生にからかわれたらそうなるだろう?」
 「まあまあいいじゃないか。これも懐かしいよ」

 そんなことを言いながらラッドが握手を求めてきたのでそれに応じ、ぐっと握りこんだところで一言。

 「おかえり」
 「……ああ、ただいま」

 そう、口にしたのだった。
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