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サンディラス国の戦い

184.目指すはサンディラス国

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 「陛下が快く受けてくださったぞ」
 「やった! 急ごう爺ちゃん!」

 というわけで俺達一家は一度ライクベルン王都へ赴くことになり、しばらく屋敷はもぬけの殻となる。
 最後まで不服そうだったがリンカは婆さんと城で留守番に落ち着いた。
 まだ戦いは始まっておらず、参加には間に合いそうな雰囲気でなによりだ。

 フォーリアの町からは俺と爺さん、それとディカルトが参加する。
 一年過ごしてきたがこいつがなにかをしてくることは無かった。けどまだ信用していいレベルの人間じゃないので警戒はしておこう。

 必要なものだけ持って馬車で移動。
 御者にディカルトを据えており、さっそく爺さんからコキ使われているところである。

 「気を付けてね? 二人をよろしく」
 「うん。爺ちゃんが居るし、はぐれない限りは平気だと思うよ。どちらかといえば良くない出会いってのが気になるところだ」
 「まあ、敵なら斬るだけだし不穏な者なら無視すればいいだけの話だ。アルフェンに危害が及ばぬようにするわい」
 「あなたも気を付けてくださいよ? 【呪い】で片腕を失くすなんてもう見たくありませんからね」

 婆さんが窘めるように口を開き、俺とリンカがお互いの顔を見て苦笑する。
 奥さんが旦那を心配するのは歳を取っても変わらないな。

 ……俺は無事に黒い剣士を倒すことができるだろうか? 前世では相打ちになってしまったことがあるので、エリベールやリンカが居る手前、口ではどっちでもいいとのたまうも、死にたくない感情はある。

 強くなるしかないわけだが、爺さんと訓練を積めば必ず達成できると信じたい。
 この遠征もオーフとロレーナのためだけど、経験にはなるはずだしな。

 ◆ ◇ ◆

 「おお、アルベール! よく来てくれた」
 「お久しぶりです陛下」
 「うむ。まさかフォーリアの町に行ってからまったく顔を見せなくなるとは思わなかったが……。まあ、孫が帰ってくる前に顔つきなど戻ったようだから安心だな」
 「色々事情がありましてな」
 
 応接間で陛下と対面した俺達。
 まずは爺さんが挨拶と握手を交わし、俺達も軽く会釈をすると陛下に座るよう促された。

 「それにしてもお前が参加してくれるとは思わなかったから嬉しい誤算だぞ」
 「孫の友人も参加しておるようでして、行きたいとねだられてしまいました。どうせねだるなら高価なものの方が心臓に悪くないのですが」
 「はっはっは、さしもの死神も孫には勝てんか。ウチも息子が早く結婚相手を見つけてくれるといいのだが」
 「私はひ孫が見れそうですよ」

 俺とリンカを見て微笑む爺さんはその気らしい。
 実際、一年過ごしてやっぱり気は合うので結婚相手として考えてはいるので狼狽えたりしない。
 でも気恥ずかしいので俺は話を変えるため口を開く。

 「こほん。陛下、祖母とリンカを預けってくれる件、ありがとうございます。このお礼は作戦の成功に貢献すべく尽力します。……それで状況を聞いてもよろしいですか?」
 「無論だ。正直、黒い剣士の行方はまるで分からんが危険人物と組織扱いで捜索しておる。お主の言う通り野放しにはできんからな。それで状況だが――」

 公にはしていないが、国の一家が惨殺、それも貴族ということで爺さんとは別に、独自で黒い剣士は調査していたらしい。
 俺が戻って来たことで爺さんにも教えたが、片腕を失くした爺さんが暴走するのを見越して秘密裏に動いていたのだとか。

 それはともかくサンディラス国の状況は膠着状態のまま話は進んでいない。
 山を越えるかジャンクリィ王国にあるトンネルを抜けるしかないわけだが、こちらの動きを察知しているためかトンネルは今、封鎖されている。

 トンネルを抜けて少ししたところにサンディラス国の王都があるのでこれは痛い。
 ちなみに戦争とは言っているが、まだその段階ではなく、大人数で向かいつつどうしてこんなことになっているか各国の将軍や騎士団長が向かい、金額交渉の話をするという名目で威圧をかける。

 「さすがに二国間からの交渉テーブルとなればつかないわけにはいくまい」
 「なるほど、こちらからは誰を行かせるのですかな?」
 「……イーデルンだ」
 「それは――」

 と、言おうとしたところで、決まっていたことだからと陛下が肩を竦めて首を振る。
 将軍の地位を剥奪すべきではないかと陛下は爺さんに言うが、

 「……この一年、ヤツからなんのアプローチもありませんでした。あの地位を守れれば私や一家に興味はありますまい。仕事ぶりが目に余るようならその時は、というところでしょうな」
 「そうなるか。まあ、今回の遠征はその見極めになりそうだがな」
 
 そう言って次の話題へと移していく陛下。
 イーデルンはランクはそれなりにあり、他の将軍とそん色ない程度には強い。
 だが、人を陥れるようなことをしでかす者は後でどうなるか分からないのを危惧しているのだろう。
 国家転覆を考えるほどの人物ではないと思うが。

 爺さんにしでかしたことと、ディカルトに俺を襲わせたことについて処分したいが、当の俺達が泳がせると決めたので逆に頭を悩ませているようだ。

 「ま、今回の件で俺達を見て尻尾を出すんじゃない?」
 「そこまで愚かではなかろう。ワシらはワシらのできることをするぞ」

 どうかなあ……感情だけで動いている気もするし、なにもないといいけどな?
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