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ツィアル国
90.攻略本……?
しおりを挟むさて、休憩に立ち寄った場所はギネッタ村というらしい。
村長のザーイに着いていき、荷車を引きながら村を観察する。
村、というとゲームなどなら小規模で家がちょっとあって田畑か家畜を育ってているイメージだが、この村は結構大きい。
全景は見えないが、家屋が多く、田畑はもちろん道具や武器、鍛冶屋といった店が立ち並んでいるところもあった。
まあ、町ほど規模は大きくないが、しっかり衣食住を賄える施設があるというわけだ。
『村ってこうなんだな。俺が知っているのはもっと小さいんだけど』
『そうか。まあ、気難しい職人なんかは町みたいに賑やかな場所を嫌うから、こういうところに居を構えたりするな』
ちなみに村には宿屋はないから集会所みたいなところを間借りするのだとか。
依頼も今日中にってわけではないのでここに泊めて貰って数を倒すのもアリだそうだ。
「なにか面白いい話をしているのかな? 私達に魔人語はわからないからねえ」
「はは、村が大きいのと、収入がすぐに入って良かったなって」
「凄いよね君、小さいのに魔人語が話せるんだ?」
村長のザーイが振り返って俺に尋ねてきたので、適当に合わせておく。すると、背後に回り込んで俺の肩に手を置いたオリィが驚いたようにそう言い、やっぱりなんだかマイヤに似ているなと思い返事をする。
「効率のいい勉強してて……あ!?」
「うわ!? ど、どうしたのアルフェン君?」
「い、いや……」
「オリィが急に話しかけるから驚いたんじゃないか? さ、ここです。裏の倉庫で査定しますわい」
「よろしくお願いします」
と、俺は頭を下げるが他のことを考えていた。
もし俺の知りたいことが分かるのであれば、最低二つ。聞くべきことがあったはずだ。
一つはどうして俺の手紙が爺さんに届かないのか?
もう一つは先ほどオリィを見て思い出したマイヤの存在だ。
俺と一緒に流されてから消息不明だが、考えてみれば『ブック・オブ・アカシック』が知っている可能性は高いと閃いたのだ。
あとで試してみるかと考えつつ、俺はグラディスとの通訳を経て賃金を手にすることができた。
「全部で35000ペリアだ、確認してくれ」
「いち、にい……オッケ、問題ないよ」
肉全部と骨と毛皮を二頭分でこの値段。
高いのか安いのか今の俺には分からないが、グラディスは満足気な顔だったので問題ないだろう。
単位はぺリアか。自領地ではルクスだったから、通貨は違うようだ。
『とりあえず牙は回収してっと。残り一頭を倒したら依頼料も貰えるのか、お得だな確かに』
『危険が伴うからそんなことを言っていられない依頼もある。冒険者が人気で、死ぬものが多いのはそういうところだからな。アルフェンほど強ければ一攫千金も夢ではないがな』
グラディスに半分お金を渡し、遠慮なく受け取ってくれるのは気持ちいい。一頭ずつ倒したんだ、遠慮されるのは気が引けるからな。
「久しぶりに良い肉を手に入れられて助かりました。村の中央に休憩所があるので、寝泊りを含めてそこを使ってください」
『タヨール』
「助かるって。ありがとう」
「もう行かれるのか?」
「後一頭はノルマなんで、暗くなる前に倒しておきたいんだ。また戻って来ると思う」
俺がそう言うと、ザーイは笑顔で頷き見送ってくれ、オリィが着いて来た。
「ねえねえ、どうして小さいのに冒険者をやってるの? 着ている服は貴族っぽいけど」
「色々あって、仕方なくだよ。オリィはここでずっと暮らしているのか?」
「えー教えてよー。それこそこの村にしか居ないから面白いことないし」
「ちょっと俺の素性は話せないんだ。またな。行こう、グラディス」
俺がさっさと歩き出すと、立ち止まって憤慨しながらなんか言っていたが耳を塞ぐ。
<この依頼を受けたのはこの村……というかあの方になにかあるからなんですよね?>
村の柵を修復している横を通り過ぎたあたりでリグレットが話しかけてきた。
このジャイアントタスクの依頼と関りと彼女が関りあるのはこいつも知っている。
まあイベントが発生するのは三頭目を持ち帰ってからなので、まずは狩りに集中したいので村を出た。
攻略本を片手にして遊ぶRPGゲームみたいな感覚だが、ここは外せない。
この後、貴族のお坊ちゃんが趣味で狩猟をしに来て村に滞在をするのだが、その貴族を俺達が助けることによってツテを作れる、ということらしい。
この国の貴族はロクでも無いようだが、そこは我慢というところか?
そんな未来のことを考えながら森に入っていき、すぐに三頭目のジャイアントタスクを仕留めることに成功。
「早く大きくなりたいな……」
「ははは、初めて子供らしい言葉を聞いた気がするぞ。まあ、今は修行だと思えばいい」
ジャイアントタスクを剣だけで倒すのはまだ難しいので魔法を使うことになるのだが、毛皮が燃えたり肉がぐちゃっとなるなど売り物としての価値が下がってしまう。
グラディスのように首を一撃で落とせればいいんだが、腕力がまだそれに追いついていない。
いや、待てよ……? 風属性か水属性でそういうことができなかったか?
「どうした、アルフェン?」
「ああ、いやちょっと試したいことがあって。<ウインドスラッシャー>」
俺が手刀を縦に振り下ろす仕草をして魔法を使うと、三日月型に空気が歪み、木々の枝を切り裂いていく。
「お、すごいな。お前は魔法の方が得意か? いや、大きくなれば剣も使えるか」
「ミドルクラスの魔法だよ確か。手ごたえはあった、もう少し練習すればジャイアントタスクの首をスパッといけそうだ。<ウインドスラッシャー>」
俺が適当に魔法を放つと――
「うわ!? な、なんだ!?」
「だ、大丈夫ですか!? おのれ、無礼な、この方をどなたと心得る!」
「え?」
どこかの将軍様のお付のようなセリフを言いながら立派な装備に身を包んだ男が俺の前に出て憤慨する。
そして後ろから、イケメンかハンサムか言い方を悩みそうな美形が、現れた。
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