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力を手に入れるために

28.新しい家族と生活

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 とりあえず茶番劇とも言える家庭事情が収束したことで、生活が一変することになった。
 茶番とは言い過ぎたか……だけど、多分ゼルガイド父さんがしっかりしていれば良かった話なのでこれは大きくなってからもいじらせてもらうことにする。

 それはともかく今回の件でゼルガイド父さんの両親もカーネリア母さんに歩み寄ってくれるようになったのは大きい。
 元々結婚していた相手だ、完全に嫌いだったわけじゃないしな。
 
 ……まあ、跡取りができるという打算で擦り寄っている可能性も無いわけじゃないが、ゼルガイド父さんが『家を出て行く』と宣言した時点でなにかしら歩み寄る手段を考えていたであろう。

 で、あれから数日。
 俺はカーネリア母さんに魔法と勉強を教えて貰う毎日になった。

 「――白蓮歴797年に魔人を今の‟ヤード大陸”に追いやったんだね」
 「ああ。あたしはまだ産まれてないけど、母さんが言うには大規模な戦いだったらしいよ。魔人ってのは好戦的なのが多いから、戦いにかけては一級品みたいだし」

 『魔人』というのは人に近い姿をしていて、近くて遠いという種族らしい。
 牙が長かったり、角があったりと身体的特徴がやや違う。
 
 正直、めちゃ優秀という感じではないのだが『考え方』やや特殊で、喧嘩っ早く、お偉いさん同士がやらかして戦争……ということになったみたいである。

 「そこでエルフや人間が協力して追いやったんだよね」
 「まあ、人間だけじゃちょっと無理だろうね。昔、魔人とパーティを組んでいたことがあるけど、単体の戦闘力はやっぱり高かったし」

 故に集団で押し切った、と。
 何気に魔人はエルフよりも短命で、だいたい150年。エルフは500歳くらいみたいだ。個体差はあるけど。
 
 何が言いたいかというと、400年も経っている今はわだかまりがかなり解けていて、魔人もあちこち行き来しているということだ。
 
 ……個人的には未だ恨みを持っているやつの子孫とかいてもおかしくないと思っているけどな。

 「さ、勉学はこれくらいにして後は外で魔法の訓練ね! 学校に行くまでに鍛え上げて貴族の坊ちゃんたちをの度肝を抜いてやるからね!」
 「いや、魔法は覚えるけどあんまり目立つようなことはしなくても……後、ゼルガイド父さんと再婚したから僕も貴族だよね? おーい、カーネリア母さんー」
 
 そんな感じでカーネリア母さんから楽しく魔法を習い、ゼルガイド父さんが休みの日には剣を教えて貰っている。

 「やあ!」
 「お、アルは筋がいいな。どこかで習っていたのか?」
 「うん、父さんが強かったんだ! 確かランクは48だったかな? お仕事は植物学者だったけど」
 「騎士じゃないのか!? しかし48は一般人にしては高いな」
 「僕もそれは思ったよ、全然戦いに向いていない優しい人だったから……」
 「……」

 俺の声色が小さくなり、無言で頭を撫でてくれる。
 あまり暗くなっても申し訳ない。

 「ゼルガイド父さんのランクはいくつなの?」
 「ん? 俺は78だな。まだまだ修行が足りないと思うよ、精神的にもな」
 「あはは、まだ気にしてるんだ?」
 「そりゃアルに気づかされたからなあ。よし、学校に行くまでにアルのランクを上げとこう。9歳で入学だから後三年……普通なら4か5だから、8くらいあれば度肝をぬけるか……?」
 「ゼルガイド父さん、カーネリア母さんと同じこと言ってるよ!?」
 
 俺の叫びにゼルガイド父さんはニッと笑って俺を抱き上げる。

 「そこはアル次第だからな! というかお前の剣か? あれ凄いな」
 「……僕の宝物だからね」

 あれに幾度と命を助けられたか分からないので、そう言っても過言ではない。
 前世の時はかなりボロボロになっていたのを研いで使っていたけど、これは新品みたいになっていた。

 体が小さいのでまだ振り回すには抵抗があり、もっと大きくなってから抜こうと思う。

 「よーし、もう少し打ち込みをするよ!」
 「お、その意気だぞアル!」
 「あはは、男の子は元気だねえ」

 横で見ていたカーネリア母さんはそう言って笑うけど、元気なのは夜の二人もそうなんだよな。
 ま、そのあたりは子供ができるということでお察しではあるけど、二年という月日はお互いを燃え上がらせたと思うことにしよう。
 
 追い出されるかもしれないけど、早く弟か妹が出来ないかと期待している。
 妹は……うーん、あまりいい思い出がないけど……

 そんなゼルガイド父さんが休みの昼下がりに、珍しく彼の両親が訪問してきた。

 「邪魔するぞ」
 「ごきげんよう」
 「父さんに母さんじゃないか。どうしたんだ?」
 「こんにちは」

 ゼルガイド父さんが俺を抱っこしたまま出迎えたので俺は小さく頭を下げて挨拶をすると、母親……モーラが柔らかく微笑み握手をしてきたので応える。
 
 それにしても何の用だろうな?
 こちらの生活圏に入って来るのは初めてのことで訝しむ。
 そんなことを考えていると、親父さんのベイガンが俺の頭に手を乗せて口を開く。

 「……お前達のことで言う機会が無かったが、この子は何者なんだ?」

 ああ、そうですよね……そりゃ気になりますよね……
 
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