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第四章:ひとまずの解決

その78 恐らく最強

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 「う……!?」
 「母ちゃん!?」

 黄色だったはずの液体が緑色に変わっていることに気付いたが、すでに母ちゃんはなんの躊躇いもなく一気飲みをしていた。豪快な性格が裏目に出たか……!

 そして、こたつに突っ伏した母ちゃんを前にポンチョが小躍りしていた。

 <あ”あ”あ”あ”♪>
 「お、お前、まさか毒を入れたとかじゃないだろうな!?」
 <あ”?>

 ポンチョを抱き上げて怒鳴りつけるが、体をへにゃりと曲げて『なんのこと』と言わんばかりの態度である。
 あれか、悪いことだと思ってないからなのか?

 「あ! ヒサトラさんお母さまが!」
 「どうした!?」
 <あ”!>

 母ちゃんの肩を支えていたサリアが驚愕の声をあげたので、俺は慌ててポンチョを放り投げてこたつの横に片膝をつく。ポンチョはスライム達がクッションになりキレイに着地していた。

 そして――

 「ん”あ”あ”……! なんか体がめちゃくちゃ軽くなった!」
 「なんだって!?」
 「あ、あれ? ちょっと皺とかシミ・そばかすが消えてるような……」
 「本当? どれ……」

 母ちゃんは鏡を取り出して確認すると、どうやらサリアの言う通りらしく、若返ったみたいになっているらしい。まさか葉っぱ効果……!?

 「齢46歳のあたしがまさかキレイになれるなんて。最初は冗談かと思ったけどおもいきって飲んで良かった……!!」
 「その薬の目的はそうじゃねえよ……。胡散臭い美容広告のキャッチコピーみたいなこと言ってねえで、身体はどうなんだよ」
 「え? 軽くなったわよ。癌にやられてた部分は鈍痛が走ってたんだけど、今は全然痛みとか無いし。現役時代になったって感じかな?」
 
 現役……?
 
 「母ちゃんがスポーツをやってたなんて話はきいてねえぞ?」
 「ああ、学生のころは荒れてたのよ。いやあ、あんたがヤンキーになった時はやっぱそうなるかーってなったわね」
 「マジか……!?」
 「やんきい?」

 なんでもくっそ厳しい父親との確執でグレたとか言いだした。
 そういや親父方の祖父母しか見たこと無かったけどそういうことだったのかと今更ながらに納得する。
 で、親父が大学生で母ちゃんが高3の冬に、繁華街で連れ去られそうになったところを親父に助けられてから付き合い、20歳で俺を産んだらしい。
 ちなみにクソ真面目だった親父は弱かったってさ。

 「体力も返ってるかしらね? よっと。そこの大きいわんちゃん、ちょっと肉球を貸してくれない?」
 <ん? 我か? 構わんぞ>
 「順応性が高いのはお母さま譲りなのね」
 「あそこまでは無かったと思うが」

 もう母ちゃんの独壇場と化した庭でダイトがひょいっと前足を掲げて殴りやすい位置に持ってくる。母ちゃんは深呼吸をした後、腰を落として拳を振るう。

 「速い……!?」
 <ぬお!?>

 インパクトの直後、ダイトの上半身がぐわっと浮いた。
 あの巨体が持ち上がったところを考えると威力は相当高いぞ……!?

 「うんうん、まあまあね。こんなところかしら」
 「凄い……」
 「一体なんなんだ……ま、病気は治ったってことでいいのかルアン?」
 『……』
 「寝てんじゃねえよ!!」
 『ハッ!? グレイトフルメンチカツが!? ……くっ、夢か……』

 なんか悔しそうだが、とりあえずこいつのおかげでここまで漕ぎつけたので礼を言っておこう。

 「どうやら成功したみたいだ、サンキューなルアン」
 『まあ、こっちにヒサトラさんを呼んだのはわたしの都合だからこれくらいはね? それじゃ、召喚魔法を使って眠いし、そろそろ消えるわ。もう会うことも無いかもしれないけど』
 「そうなのか?」
 『ええ、目的は終わったから、後はあなた達だけで暮らす感じね。こっちから用があったら顔を出すかもしれないけど』
 「ロクなことになりそうにないから勘弁してくれ」
 『あっはっは! そうかもしれないわ。それじゃ、後はよろしくね! シーユー!』

 笑顔でそれだけ言い残してモニターが暗くなり、俺達だけが残された。
 そこで俺と一緒にモニターを見ていたサリアが苦笑しながら母ちゃん達の方へ眼向けて口を開く。

 「でも、元気になって良かったわね」
 「元気すぎる気もするけどな……」

 学生時代に苦労させていたせいでこの姿を見ることが出来なかっただけなのだろう。それに……小さい頃は仕事仕事であんまり顔を合わせても無かった気がするので、

 「おう、君は大根の仲間かしら? こっちは色のついたゼリー?」
 <あ”あ”ー!>
 <!!!>
 「あはは、違うの? ごめんね」

 ああいう表情は、覚えていない。苦笑いばかりだった。そう思う。

 「しょうがねえな、サリア。アロンを連れて来てくれこいつら全員、母ちゃんに紹介するぞ」
 「はーい♪」

 だから、これからは苦労をかけないために俺が頑張ろう、そう思った―― 
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