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最終部:タワー・オブ・バベル
その373 わんわん行進曲
しおりを挟む「そらよ!」
ガゴン!
「吹き飛ばせば大したことは無さそうですね、カルエラートさん、ありがとうございます!」
「なんだ、大したことないな」
ボン! ガシャーン!
「なんのこれしき……! ぐっ!」
「カルエラートさん大丈夫ですか!?」
「気にするな、どんどん壊せ!」
大盾を構えて前進するカルエラートさんの後ろで剣士組であるクラウスさん、ニールセンさん、ソキウスの三人がお掃除ロボットとかいうのを弾き飛ばしたり真っ二つにするなどして壊していく。爆発の余波が全てカルエラートさんが担っているので衝撃が激しく、脂汗を流して耐えていた。
地上はこの三人に任せ、私は空中を飛んでいる物体にレイジングムーンで狙いを定める。
「撃ち落すわよフレーレ、アイリ! 」
「はい! ≪マジックアロー≫!」
「こういうのは私得意なんですよね!」
ピッ! ボン!
ガシィン! ボボボン!
ターン! ボン! ボン!
遠距離なら私達で十分対処できる。マジックアローはいっぱい出せていいなあ……弓は頑張っても三本が限界だ。アイリは一発ずつだが、発射までの間隔がとても短い。
後はずっと前衛を担ってきたレイドさん達には少し休んでもらう感じになり、私としては満足である。少しずつ前進しながら残骸の山を築いていく。
「わおわおーん!」
すると、先程爆発に巻き込まれたシルバが私の背中から飛び降りて怒りの特攻を始めていた。
「え、大丈夫なの!?」
「きゅんきゅん!」
セイラが叫ぶと、シロップが後に続く。お兄ちゃん想いの妹である。でも触ったら爆発するしどうするのかな?
「わん!」
ピッ!
「危ない!?」
お掃除ロボの上に飛び乗り何か音がする。シルキーさんが手で顔を伏せるが、シルバはすぐに飛び、別のお掃除ロボットへと飛び移った。
ピッ! ボン!
ピッ! ボン!
「おおーやるなあシルバ」
「きゅんきゅん」
ピッピッピッピ! ボンボンボンボン!
『あら、シロップちゃん凄いわね』
シルバの真似をしてどんどん踏んでいくシロップは手拍子をしているような音にも聞こえる。アルモニアさんがパチパチと拍手をして称えていた。
「負けられないわね、浮いているのを壊すわよ!」
チュン! タタタタ!
「気をつけろ、頭にでも当たったら即死だ」
<ほっほっほ、こういう時にわらわの魔弾が役に立つのじゃ>
ドドドドド!
私の腕輪から魔法弾が飛びかい、敵の弾を打ち消していく。防御面ならフレーレの魔法もあるけど、これはこれで便利だ。
<あ、いかん……疲れてきおった……ぐう>
<消耗が早いねえ……>
前言撤回、微妙なやつです!
「わたしが壁を作りますからどんどん行きましょう!」
フレーレの力強い言葉に頷き、私達は進軍していく。
――そしてお掃除ロボット軍団が全滅するかと思ったその時――
「わん」
ピッ!
シーン……
「きゅきゅん?」
お掃除ロボットが一体爆発しなかったのだ。恐る恐るシロップが前足でちょんちょん触り確かめる。
「きゅふん?」
そこへてくてくとラズベが歩いて行き、ぴょんとその上に乗る。今度は音もしなければ爆発もしなかった。ちょうどこっちも空を飛ぶ敵を倒しきったところだった。
「よっし! どろーんとか言うのも全滅ね! ありゃ、どうしたのそれ」
「きゅふん♪」
「わん♪」
お掃除ロボットの上にラズベが乗り、それをシルバが鼻で押して遊んでいた。うーん、楽しそうだけど急に爆発されても怖いなあ。そう思って二匹を回収しようとすると、ノゾムとユウリが先に近づいていく。
「これだけあったら不良品があってもおかしくないよね」
「……ああ。どれ、俺が爆弾を解除して改造してやろう」
「わん!」
ガブリ
おもちゃを取られると思ったのか、シルバがノゾムの手に噛みついた。
「……痛い。シルバ、離してくれ」
「こら、ノゾムはそれで遊べるようにしてくれるみたいだから離しなさい」
「わふ……」
私が言うとしぶしぶ噛むのを止めてくれた。歯型はついているけど手加減を覚えたらしく、ノゾムの手から血は出ていなかった。
「それにしても酷いありさまだなこりゃ」
「まあ爆発するんだから壊しておくに越したことはないけど、こっちの世界に無いものだし、ちょっと勿体ないかったかもね」
ガシャガシャと残骸の中を歩きながらクラウスさんとセイラがぼやく。
「ま、とりあえず一個は確保したしいいんじゃない?」
歩きながらお掃除ロボットをいじるノゾムにシルバとシロップがぴょんぴょん跳ねていた。その後、幾度かどろーんに遭遇したけど、特に動きが変わるというわけでもないので突き進むことができた。
しばらく歩くと扉を発見し、そのまま階段を登ってついに89階へ――
「着いたか」
「ですね、では開けますね」
ガチャリ……
「またか……」
『手抜きもいいところだよね』
レイドさんの言葉にエクソリアさんが肩を竦めて部屋を見渡しながら言う。それもそのはずで、今度こそ本当に何もないだだっ広い部屋だった。
「また床が抜けたりするんじゃないの?」
「……俺が確かめて来よう」
「私も行きましょう」
シルキーさんが床をじっと見ながら色が違っていないか探し、ノゾムとカイムさんがそっと前に進んでいく。私はひとつ良いことを思いついたのでそれを実行することにした。
「? ルーナ、弓でどうするんですか?」
「ん? もし床に罠があったらこれで回避できるんじゃないかなって思ったの。……こんな感じで」
ビシュ!
魔力の矢が床に着弾する。しかし特にこれといって変化は無かった。私が何をしたいのか分かったフレーレは、
「なるほど、こういうことですね! ≪マジックアロー≫≪マジックアロー≫」
バシュバシュ!
フレーレもマジックアローを連発して床にダメージを与えていく。これで何らかの変化があれば罠があるということになる。
「ようし! どんどん進むわよフレーレ!」
「はい!」
轟音を立てながら私達は安全であろう床に足を踏み入れどんどん進む。横にいたノゾムとカイムさんが物凄く困惑した顔を見せていたのを私はきっと忘れないだろう。
「あははは、楽しくなってきたわね」
「そうですね! それそれ♪ 床だけに愉快ですね!」
「ええー……」
「お兄ちゃんも大変ね」
「な、何がだよ」
「べっつにー! まあでも楽しくやれそうな義妹だからいいけどさ!」
「……まだ早い……」
「うわ、ヴァイゼさん本気の顔で近づかないでくださいよ。ね、お義父さん?」
「……」
『あ、照れてる。魔王が照れてるよ!』
「……ふん!」
『ぐわ!? どうしてボクだけ!?』
なんだか後ろが騒がしいけどどうしたんだろう? 結局この階は何も無く、見事、私達は90階のボス部屋へ辿り着くことができた。
しかし――
『何も無い』
この89階……いえ、ここまでの足跡についてもう少しよく考えるべきだった。すでに、いや初めから神裂の罠にかかっていたのだ。私達は。
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