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最終部:タワー・オブ・バベル

その367 魔王親子と虎まっしぐら

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 「このこのこのぉ!」

 「当たれぇぇぇ!」

 うじゅるるるる……!!

 「ええい、素早い!」

 うじゅじゅじゅ……♪

 「うう……気持ち悪い……ちょっとどこを触っているのだ!? こいつ!」

 うじゅ!?

 私とアイリの遠距離攻撃を軽々と回避し、歓喜したような動きで触手を飛ばしてくるボスギャザー。だけど、これは想定内。気付いていないみたいだけど、かなり遠くへ移動させることができた。カルエラートさんには申し訳ないけど、もう少し我慢してもらう。

 ――何をするのか? それはお父さんと協力して地上にいるギャザーを殲滅するのが目的だ。それにはボスギャザーに邪魔されないよう私とお父さんから距離を離し、かつみんなに伝言を頼まないといけない。

 「バス!」

 <なんだにゃルーナ!>

 レジナ達と同じように、器用に飛び回ってバインドギャザーを倒しているバステトをこっちへ呼び寄せ、耳打ちをする。バステトの耳がぴくぴくして本人もむずむず体を動かしていた。

 <くすぐったいにゃ……>

 「我慢して! 合図したら――」

 <了解だにゃ! とぅ!>

 バスが突撃し、バインドギャザーの頭を踏みつけながら仲間達へ知らせてくれる。

 <にゃにゃにゃ!>

 ざしゅざしゅと触手をなぎ払い、突き進む姿はさながら猫のようだ。さておき、これで準備は整った! ボスギャザーの足止めはアイリに任せて、私はお父さんと並び立つ。

 「……よし、では行くぞ……!」

 「分かったわ! ≪魔王≫!」

 「……≪滅焼殺≫!」

 私とお父さんが床に剣を突きたてると、床に怪しげな紋様が広がっていく。円を描くように広がり、やがて遠くの方で一つになると、紋様が光り出した!

 パーン!

 直後、私は大きく手を叩いて合図をする。そしてそれを聞きつけたバステトがみんなに向かって大声で叫んだ!

 <行くのにゃぁぁぁぁぁ!!>

 「分かった!」

 「いくです!」

 「こ、こうか?」

 「ガウ!」

 「わんわん!」

 バステトの声に反応したみんなが、次々と矢印の床を踏んでいき天井へと飛んで行った! 全員が地上から居なくなったところでお父さんが仕上げをする。

 「……”崩”!」

 ゴッ!

 じゅじゅ!?

 うじゅる……!

 紋様の光が一気に輝き、白い炎を巻き上げる! 地上にいた雑魚ギャザーが次々と消滅していくのが見えた。

 「凄いですね……!」

 「とどまっていたら僕達も消滅してたな……」

 天井からフレーレとユウリがごくりとしながら呟く。地上を見ると、雑魚ギャザーは跡形も無く消滅していた。

 <やったのにゃ!>

 「耳がいいバスのおかげよ!」

 スタッとバスが降りてきて万歳をすると、レジナ達も降りてきてバスを褒め称えていた。

 「がうがう」

 「わおーーん」

 「きゅんきゅん」
 
 「きゅふん!」

 <ありがとうにゃ! さ、それじゃあいつをボコして終わりだにゃ!>

 うじゅ!?

 バスがレイピアを向けると、カルエラートさんを撒きつけたまま後ずさりするボスギャザー。捕まっているカルエラートさんがちょっぴり変な声をあげていた。

 「う、うん……あん……」

 「ぜ、全力で倒すわよみんな!! ≪シューティングスター≫!」

 一筋の光がボスギャザーを襲い、頭であろう付近に刺さる。

 ビシッ

 「お、いけるぞ! ねえちゃん今助けるからな!」

 逆さになったソキウスが駆け出し、剣を振る。しかしボスギャザーは降下し、それを避ける。

 「まだまだ!」

 ガキン!
 
 うじゅる!?

 ブシュ!

 ソキウスは天井の矢印床を使って瞬時に追いつき、触手を斬ってカルエラートさんを救出した。器用だなあ。

 「待つですソキウス! 一人じゃ危ないですよ!」

 「大丈夫大丈夫! てやぁ!」

 ガガガガ!

 雑魚が居なくなればこのとおり……上に行っても下に行っても矢印床であっというまに追いつけるため、ガンガン攻撃を仕掛ける。

 うじゅ!

 するとボスギャザーは背中を向けて逃げ出した!

 「あいつボスの風上にもおけねぇな! ……ってか後ろスカスカじゃねぇか!?」

 クラウスさんの言うとおり背中側は鎧が無く、代わりに先程戦ったクラウドデーモンがぴたりとくっついていた!? こいつが空を飛ばせていたのか……

 ヒヒヒヒ……

 バレたことに焦り、クラウドデーモンが速度を上げる。そこへフレーレがカイムさんと連れて私のところへやってきた。

 「ルーナ、補助魔法をお願いします! クラウドデーモンは聖魔光で倒せるはずですから。後は素早いカイムさんに弱点の目をついてもらいましょう」

 「分かりました。お願いします、ルーナさん!」

 「オッケー! ≪フェンリルアクセラレータ≫!」

 二人に補助魔法をかけると、即座に追撃を開始。

 ヒヒヒ……!?

 いくら空を飛んでいても、上下反転の床だけでは止められない。あっという間にフレーレが取りつき、いつの間にか取り出したモーニングスターを振りかぶった。

 「消えてください! 聖魔光!」

 武器に魔力を注ぎ、光り出すモーニングスター! 物理は効かないだろうけど視覚的に痛い。

 ヒヒヒヒィー……!?

 カッ! 

 フレーレの一撃がクラウドデーモンを霧散させ、塵となった。動力を失ったボスギャザーはべしゃりと落下し、もぞもぞと動く。

 「はあ!」

 カカカカ!

 ぶじゅ!?

 カイムさんの攻撃で鎧が斬り裂かれ、目を覆っていたガラスのようなものがコロンと床に転がる。カイムさんが刀を構えると、天井から、

 「もらったぜ!」

 うじゅるう……!?

 ズシュ!

 勢いをつけたソキウスが剣を目玉に突き刺していた。剣が背中まで貫通すると、ボスギャザーは液体を撒き散らしながら息絶えた。

 「きゃあ!?」

 フレーレが声を上げる中、ソキウスは鼻の下を指でさすりながら口を開く。

 「へへ、悪いなカイムさん、美味しい所もらって」

 「構わないよ。倒せればそれが誰だっていいしね」

 ガコン……

 「おっと……」

 ボスギャザーが消えた瞬間、矢印床が消えて天井に居たレイドさん達が地上に落ちてきた。これで先に進めるみたいね。

 「みんなお疲れ様! ケガとか無い?」

 「うん私達は大丈夫だけど……」

 「ふう……ふう……」

 セイラの足元であられもない姿のカルエラートさんが気絶していた……そして――

 「きゃああ! み、見たらダメですよ!」

 ばちーん!

 「ぐあああああ!?」

 「いってぇぇぇ!?」

 フレーレが最後に浴びた体液で服が溶かされ、半分くらい下着が見えていて、カイムさんとソキウスが張り倒されていたのだった……でも少し見え隠れしている隻眼ベアーマーは傷も無く、あれは頑丈だな、と遠い目をしながら私は思った。
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