341 / 377
最終部:タワー・オブ・バベル
その362 ダンジョン特有の罠
しおりを挟む「エクソリアさん大丈夫? とりあえずみんなに<ストレングス・アップ>を、と」
「あ、いいですね!」
重い足取りのエクソリアさんを回収して全員に初級補助魔法をかけると、わずかに足が軽くなったようでフレーレがぴょんと飛び跳ねていた。
『うん、これならなんとか……。助かるよルーナ、とりあえず軽装組で来た感じだね?』
「がうがう」
『はいはい、レジナもね。さて、このフロアは時間か空間を操る何かがあるってことかな?』
「……恐らく。時間を早めたり重力を操作できるならその可能性が高い。だが、そんなことが出来るやつは俺達が100階にいた頃は見ていない」
「時間と重力って何か関係があるんだ?」
ボスも気になるけど、重力が気になって聞いてみると、ユウリが用心深く周囲を見ながら口を開く。
「僕も詳しく勉強したわけじゃないけど、物体が軽くなればなるほど時間はゆっくりになっていき、逆に重くなれば早くなる……だから下の階の時点で恐らく少しずつ空間の重力を増やされていたんだと思う。で、ここに来て一気にそれをあげた」
『まあそんなところだろうね。急がないといけないのは、この早くなった時間が神裂にどう影響を与えるか何だ』
ドスドスと大きな足を音を立てながらエクソリアさんが言う。私は影響が無いけど、体を動かすのはかなりぎこちないと思う。
「静かに……これは……なんでしょうか」
前を歩いていたカイムさんがT字路の角を曲がったところで少し進んで足元を指さす。
「矢印?」
「これは……アレだろうな……」
「……ああ」
フレーレが後を追いかけ、首を傾げて呟く。確かに言うとおり矢印である。ユウリとノゾムは何か知っているような口ぶりだけどどうしてこんなところに……? そう思っていたところで後ろから殺気を感じて振り返る。
グッァオォォォ!
「魔物!? 気配は無かったはず! すみません!」
カイムさんが謝りながら振り向くがやはりいつもより鈍い。ならば!
「私が行くわ!」
唯一きちんと動ける私が、悪魔のような羽を持った灰色の魔物二体の前に立ちはだかる。
グゴォォォ!
『こいつらはガーゴイルか! 石像の化け物だから気配が無かったのかもしれない!』
ゴウ!
エクソリアさんが解説してくれていると、ガーゴイルが指先からフレイムストライクを飛ばしてきた! 魔法が使えるの!?
<アタシの盾なら防げるよ!>
「了解!」
フレイムストライクをアネモネさんの盾で打ち消していると、そこにフレーレの魔法が後方から援護で飛んできた!
「≪マジックアロー≫!」
ドウン!
グゲ!?
「怯んだ! てやああ!」
素早く踏みこみ灰色の魔物を縦にばっさり斬ると一体目の魔物がボソリと砂になって崩れ消える。
「……もう一体は俺が引き受けよう」
もう一体へ攻撃を仕掛けようと態勢を変えている間に、いつの間にか迫ってきていたノゾムがガーゴイルの首にワイヤーを巻きつけて刎ねていた。
グギャァァァ!?
ボシュ!
「あ!?」
もう一体もあえなくダウンかと思われたが、死ぬ間際にフレイムストライクを放ち、一直線にフレーレに向かう!
「きゃあ!」
「ガウ!」
「レジナ! ……ふう、良かった……」
間一髪、レジナがフレーレを突き飛ばして転ばせたので直撃は免れた。
「いたた……ありがとうございますレジナ。魔物はもう――」
と、フレーレが言いかけたその時、フレーレが乗っている矢印が光り出した。
「え? え? ……わあ!?」
「が、がう!?」
なんと次の瞬間、ぺたんち座り込んでいるフレーレとレジナが勝手に移動し始めた!? あの矢印ってそういうこと!?
「やっぱりか! 追うぞ!」
「はい! フレーレさん!」
『あ! 罠かもしれないのに!』
エクソリアさんが止める間もなくユウリとカイムさんが飛び乗りどんどん進んでいく。ここではぐれるのは良くないと思い、私も矢印に飛び乗る。
「まともに動けないから固まって動かないと!」
『ええい! 知らないぞ!』
「……自分たちで走れば少し早く移動できそうだ、行こう」
ノゾムの言葉に同意し全力で走ると、ユウリとカイムさんの背中が見えてきた。
「カイムさーん! 大丈夫ー?」
「はい! ですがどこへ行くんでしょうか」
あと一息……! カイムさんが全力でフレーレに近づいていく。
「あーれー」
「がーうー」
「……!? カイム急げ!」
ユウリが焦って叫ぶ。その理由は追いついた私にも分かった。終着地点に大穴が開いていたからだ!
「追いついてもこのままじゃ私達も落ちるんじゃない!?」
「……だな。こういう時は回避策があるものだが……父さんならどこへ作るか……」
ズズズ……と前へ進むので、抗ってみるがあまり効果は期待できない。するとノゾムが細めていた目を見開いて穴に向かってダッシュする!
『何を!?』
「……穴の手前にレバーがあった、あれを下げれば……!」
「ノゾムさん!」
カイムとフレーレを追い越し、凄いスピードで進むと確かに壁にレバーらしきものがあった。それをすれ違い様に下に降ろす。
ガクン……
「止ま……ってない!?」
「大丈夫だ、問題ない」
私が叫ぶとノゾムそのまま大穴に……は落ちず、直前で曲がった。
「切り替えスイッチだな。どこに繋がっているか分かったもんじゃないな……」
カーブのところで大穴を覗き込むユウリが愚痴をこぼす。矢印はその後、右やら左やらぐねぐね通路を曲がり、程なくして私達は矢印が無くなったところへ辿り着く。
「はあ……怖かったです……」
「がう……」
レジナを抱きしめて少し涙目のフレーレが呟く。とりあえず何とかなったけど……
「かなり迷わされたな……出口かこの重力を操っている敵を早く見つけないといけないな」
「とりあえず進みましょう。マッピングはしているから、レイドさん達が居る方向へ歩けば帰れるかもしれないし」
私は胸元からマッピング用の魔法板を取り出しそう言うと、みんなが頷き歩を進ませ始める。マップには辿ってきた一本道があったけど、かなり流されていたようで戻るのも一苦労かも……
そんな中、次の分岐路で事態が好転する!
0
お気に入りに追加
4,187
あなたにおすすめの小説
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。