327 / 377
最終部:タワー・オブ・バベル
その348 つけ入る隙を探せ
しおりを挟むドゴォン!
「きゃ!?」
「凄い爆発……! ロケットランチャーみたい……」
爆音がレイドさん達の前で炸裂し煙が上がる。近くの柱が崩れ、フレイムストライクとは比べ物にならない威力に私とアイリが驚いていると、さらに意外な状況が始まる。
「くそ、大盾が壊れたか……」
カルエラートさんがケイオスフレアを大盾で受けたようで、見事にゆがんで溶けかかっている大盾を捨てながらぼやいていた。だけど、すでにレイドさん達は動いていた。
この80階、城の構造を模しているのか柱や壁がそれらしい造りになっていて、煙に紛れて柱に隠れることは可能だった。ちなみにセイラは謁見の間だったら玉座がありそうな通路の中央に掲げられている。
「後は任せておけ! ニールセン、セイラを頼むぞ!」
「わ、分かりました!」
<上から仕掛ける。乗れ、カイム>
「承知!」
レイドさんが剣を両手に構えて煙の中から飛び出し、続いてカームさんに、腕がすっかり治ったカイムさんが出てくる。ニールセンさんは煙で見えないが、磔にされたセイラを救出するのだろう。
【二人とは舐められたものですな】
【一人ずつ確実に殺せばよかろう?】
異形の化け物に変化をしたストゥルとホイットが迎撃のため剣を構える。ホイットはレイドさん狙い……ストゥルはカームさんとカイムさんを笑いながら目で追う。ストゥルが上を向いたその瞬間、煙の中から魔法が飛んできた。
「≪マジックアロー≫!」
【む!? 僧侶の娘か! 小賢しい!】
ストゥルがマジックアローを剣で叩き落とす。そこへカイムさんのシュリケンが飛びかい、両肩に刺さる。
「カーム殿!」
<魔法を弾くか。だが、その隙は命取りだぞ!>
【国王!】
カームさんが牙を剥きストゥルに襲いかかるのをホイットが止めようと振り向く。だが、すでにレイドさんも踏み込んでいた。
「余裕があって羨ましいよ! 食らえ!」
【ぐあ!? おのれ!】
「ガウゥ!」
「わおん!」
レイドさんとレジナ達が入れ替わり立ち代わり攻撃を仕掛けていく。あいつらの話だとコアとやらを壊さないと死なないようだけど痛みはあるようね? 見ればストゥルもカームさんに斬り裂かれた胸からは血が出ている。
「首を刎ねれば流石に行動はできまい!」
【蒼希のニンジャが馬鹿の一つ覚えのように! 一人と一匹で何ができ――】
「いんや、二人だぞ。これはアーティファに毒矢を当ててくれた分だ」
【なに!? うお!?】
ガツン!
「うええ!? ヘスペイトさん!?」
「ヘスペ……? うわあ!」
私が叫ぶと、いつの間に乗ったのか、カイムさんの後ろで大型の金槌をストゥルの頭に振り下ろしていた。後ろを振り向き驚くカイムさん。あの人気配ないもんなあ……
<いいから追撃だ!>
「は、はい!」
「このコアを押し当てたらどうなる……!」
ザン! ゴキン!
カイムさんの刀が、カームさんの牙が、ヘスペイトさんの赤い玉がストゥルを攻撃していく。何気にヘスペイトさんの攻撃は冗談のように見えるけどかなりエグイ。
【うっとおしい! そんなもの効かぬわ!】
<チッ……>
「はっ!」
剣を振り、三人を吹き飛ばすストゥル。しかし、ヘスペイトさんは尚も赤い玉を押しあてながらぶつぶつと呟いていた。
「これでもない……なら、やっぱり……」
【き、貴様!? 吹き飛ばんか!】
スカッ!
衝撃波のようなものを飛ばしながら激昂するストゥル。だけど、シルバ達が困惑していたように攻撃は全てすり抜けていった。
【馬鹿な!?】
「……お前達はアンデッドになって死なない、みたいなことを言っていたようだけど、その実『殺す方法』はある。それに引き替えお前達の攻撃は俺には届かない。不死を謳うなら俺のように幽体になるのが一番なんだぞ。コアが壊されなければ不死身だなんてお笑いだな。はっはっは!」
ヘスペイトさんが得意気に笑うと、ストゥルが忌々しい目を向けていた。そして私の横で口をへの字に曲げてすごく不機嫌な顔をした人がいた。
「……」
「あ!? ち、違うわよ、ヘスペイトさんが言っているのはあの二人のことで、お父さんのことじゃないから!」
「……やはりレイドとの交際は許可できんか……」
「えええ!? ちょっとヘスペイトさん! お父さんに謝ってください!」
ドンドンと魔法壁を叩きながら抗議の声をあげると、ヘスペイトさんがこちらを不思議そうに振り返る。
「え? 何がだい?」
全然聞こえてない!?
「都合の悪いことは聞こえない人みたいだな……」
「父さんにちょっと似てるけど、こっちの人は本当に聞こえていなさそうだ」
「それより、あの幽霊さん攻撃が効かないなんて反則ですよ! でも、このまま一気に倒せそう!」
ユウリ達三人が呆れたような感じで言い合っていると、ストゥルがふと真顔になり息を吐く。
【ふう……怒りで我を忘れるところだった。別にお前に攻撃が当たらなければそれでいい。後からゆっくり考えればな。まずは目障りな者達を排除せねばな!】
「ハッ!?」
カキン!
「カルエラートさん!」
前を向いたまま横の柱を剣で斬ると、斜めに柱がずるりと崩れ落ちる。その向こうに、近くまで迫っていたカルエラートさんが腕を裂かれて小さく呻く。剣で咄嗟に弾いたものの完全には受けきれなかったようだ。
【そっちもだな?】
「……まずい! フレーレさん!」
<待て、カイム!>
【と、そう来るだろう? 馬鹿者めが】
柱の向こうにフレーレが居る。それは私達も分かっていて、それを逸らす為のあの会話だったが、気付かれていたようだ。カイムさんがフォローに入るが、むしろそれを狙っていたストゥルがゴキゴキと有り得ない方向へ体を曲げ、カイムさんへ急襲した。
「その態勢から!?」
【遅い】
踏み込み過ぎた、恐らくカイムさんはそう考えたと思う。刀がストゥルを通り越し、逆にカイムさんのお腹に剣が刺さっていた。
「くぅ……!?」
「カイムさん! 後ろからなら!」
フレーレが飛び出し、メイスを頭めがけて振り下ろす! 光っているので聖魔光のおまけつき……死なないまでも時間稼ぎはできる!
と、思っていたんだけど――
ガシッ!
「ええ!?」
なんと……背中を見せていたストゥルにメイスを止められてしまったのだ。しかも――
<背中から腕が生えてきた!?>
【醜いので使いたくは無かったがな。本気にさせたことを後悔するがいい!】
ブン!
「きゃあ!」
「危ない!」
【チッ、ヘスペイトめが……!】
フレーレが全力で柱に叩きつけられようとした瞬間、ヘスペイトさんが上手くキャッチしてくれていた。あ、危なかった……フレーレに何かあったら回復もできないし、何より悲しい。
「……おい、ヘスペイトとやら。早いところ謎を解明しろ。お前の息子も危ないぞ!」
「おお……お父さんの風当たりが強い……でも、レイドさんをちゃんと心配してくれているのはやっぱりお父さんだ」
お父さんがヘスペイトさんに発破をかける。確かにレイドさんも死なないホイットに苦戦を強いられていて、ダメージよりも体力的に厳しい様子だ。
「……ふむ。誰かは分からないが、言ってくれるじゃないか。少し分かりかけてきた、もう少しだ……」
【だが、その前にこいつらは全滅だ……!】
四本の腕に剣を持ち、ストゥルが吠えた。この戦い、勝敗はヘスペイトさんにかかっている! というかもっと頑張って! ボス部屋に入れない私はやきもきしながら壁を叩いていた。
0
お気に入りに追加
4,187
あなたにおすすめの小説
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ハズレスキルがぶっ壊れなんだが? ~俺の才能に気付いて今さら戻って来いと言われてもな~
島風
ファンタジー
とある貴族の次男として生まれたアルベルトは魔法の才能がないと蔑まれ、冷遇されていた。 そして、16歳のときに女神より贈られる天恵、才能魔法 が『出来損ない』だと判明し、家を追放されてしまう。
「この出来損ない! 貴様は追放だ!!」と実家を追放されるのだが……『お前らの方が困ると思うのだが』構わない、実家に戻るくらいなら辺境の地でたくましく生き抜ぬこう。 冷静に生きるアルだった……が、彼のハズレスキルはぶっ壊れだった。。
そして唯一の救いだった幼馴染を救い、大活躍するアルを尻目に没落していく実家……やがて毎日もやしを食べて生活することになる。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。