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最終部:タワー・オブ・バベル
その339 ホイットとニールセン
しおりを挟む「ぐあ!?」
「……ぐほ……!」
「ぐ……」
『そこ!』
「どこを見ている! 次はこっちだ」
「ぐあ!?」
「ユウリさん!」
<チッ、こいつ!>
ガキン!
アルモニアの攻撃を回避しつつ、ユウリにも攻撃を仕掛けるホイット。その後退避しようとするのを、カームが襲いかかるが剣でうまく躱されていた。
ホイットがヒット&アウェイで、空からの奇襲をするようになったため、動けないレイド達の傷が徐々に増えてきた。それでも即死を免れていたのはアルモニアとカームの牽制があったからに他ならない。
カームが降りて来た後、次に備えてアルモニアは一息つき、ホイットへ喋りかけた。
『ふう……ったく……狡すっからい男は嫌われるわよ? あ、もう嫌われているんだっけ?』
「減らず口を言うな。女神とはいえ体力は無尽蔵ではあるまい? そろそろ一人くらい殺してやろう」
『さて、それはどうかしらね』
空中にいるホイットを見ながらニヤリと笑うアルモニア。近くのカームにボソボソと何かを呟き、ホイットを見てニヤニヤと笑った。
「……何を企んでいるかわからんが、そのニヤケ顔は気にいらんな!」
イラついた様子のホイットがアルモニアではなく、再びレイドに襲いかかる。しかしアルモニアはすでにレイドの前に立ち、迎撃態勢を整えていた。
「何!?」
『そう来ると思ったわ。あなたは男しか狙っていない。そしてランダムに攻撃しているように見えて、順番に攻撃を仕掛けているわね? 男しか狙わないのは意図的でしょうけど、順番は無意識かしら? ……ハァァァァ!!』
ドン!
「ぐは!?」
<まだ終わりではないぞ!>
グシャ!
アルモニアの槍がホイットの左肩を捉え、バランスを崩したところにカームが上から強襲し、ホイットを頭から地面へ叩きつけていた。
『ほほほ、私は人間じゃないから容赦しないわよ? ……まずは心臓!』
「ぐ、くそ!?」
カームの手を逃れ、ホイットはゴロゴロと地面を転がり、ガツン! と、アルモニアの槍は地面を突いた。
『しぶといわね!』
アルモニアが追撃をしていると、別の場所で戦っているエクソリアが苛立たしげに叫んだ。
『姉さん早くしてくれよ! こっちは生かさず殺さず大変なんだよ! #%&¥しなよ!』
「エクソリアさん口が悪いです……」
フレーレがポツリと漏らすが、エクソリアは構わず続ける。
『んぎぎ……食い止めるだけで結構労力を使ってるんだ、それくらい許して欲しいね!』
「「うぉぉぉぉ……潰れろぉぉぉ」」
エクソリアはキメラの足と取っ組み合い状態でフレーレ達に向かおうとするのを止めていた。素早い動きを封じるためにはこれしかなかったからだ。キメラはエクソリアを掴もうと腕を伸ばすが、足元で細かく動きながらうまく避ける。
『もうちょっと頑張って妹ちゃん! さっきのダメージは小さくないハズ。カーム、一気に行くわよ』
<承知した!>
「何をするつもりだ? ……む!?」
アルモニアはカームを呼びよせると、背に乗り、真っ直ぐホイットへ突き進んだ!
『手の内はもう読んだから他のみんなを狙おうとしても阻むわよ!』
「ぬかせ、上にいる俺の方が有利だ! ≪フレイムストライク≫!」
「あいつ、魔法が使えるようになっているのか!」
カルエラートが驚きの声をあげる。しかしアルモニアはものともせず槍で炎の塊を斬り裂いた。
『隠し玉がこれ? なら、ここであなたは終わりね!』
<『ソニックウェーブ』!>
「おのれ、世界を管理するのはストゥル様だ! 女神はもう必要ないのだぁぁぁ!」
カームのソニックウェイブを受けながら剣を持ち突進してくるホイット。しかし、アルモニアの武器は槍である。剣で届くハズも無かったのだ。
ザブシュ……!
槍がホイットの胸を貫き、カームの爪が羽根を片方毟り取る。
「があああああああ!? ふ、ははは、馬鹿め、これも計算の内だ! このまま勇者の脳天に剣を刺し貫いてくれるわ!」
『馬鹿の癖に! カーム急速旋回!』
<ああ!>
「間に合うまい! 死ね! 勇者!」
レイドの頭上に迫るホイット!
「くっ……アイリも頑張ったんだ……俺だって……!」
ぐぐぐ……と、歯を食いしばって右腕を動かすレイド。次の瞬間、持っていたセイクリッドセイバーを放り投げた!
「馬鹿が、武器を捨てるとは諦めたか!」
ホイットがレイドの行動を見て嘲笑する。だが、剣は思わぬ動きを見せた。
ドシュ……!
「よし、目論見通り!」
剣はレイドの背中に張り付いていた影を直撃した! すぐにレイドはその場を離れ、ホイットの攻撃を回避する!
「そんな手で!? だが、影はどこまでも追うぞ!」
「なら何度でも斬るまでだ! お前ごとな!」
レイドは向かってきた影を、もう一本の件、デストラクションでなぎ払いながらホイットに迫る。窮地に立たされたホイットは顔を歪めて歯ぎしりをして叫ぶ。
「雑魚共がぁぁぁぁ! 仕方ない、ここは見逃してやる!」
「あ! ちょっと何するのよ!?」
「セイラ!?」
ホイットはアルモニアとレイドの攻撃を避けられないと見たホイットは逃走を図った。その途中、セイラを確保して白いフロアに扉を作る。
「この白い世界を永遠に彷徨え!」
「見逃すとか彷徨えとか一貫しませんね! セイラを返してください!」
「セイラさん! 待てホイットぉぉぉぉ!」
激昂するフレーレとニールセンの声には耳を貸さず、扉の向こうへ消えた。
「逃げた……!? あいつがここの中ボスじゃなかったのか?」
ホイットが消えると同時に扉もスゥッと消える。後一歩のところで間に合わなかったレイドが歯噛みしながら呻く。そこでエクソリアが口を開いた。
『そっちが片付いたならこっちを頼・む・よ……! どっせぇい!』
「う、お、おおお!?」
ズシィィン……
エクソリアが渾身の力を込めてキメラをぶん投げた!
『はあ……はあ……くそ、無駄に魔力を使わされた……レイド、後は頼むよ……』
「わ、分かった! ホイットが居なくなって影も出なくなった。みんな、今助けるぞ!」
レイドが全員の影を消滅させ自由になる一行。
「……セイラが心配だ。早く追わないといかんな」
「で、でも、あれを倒すと村人も騎士さんも消えるって!」
ノゾムの言葉にフレーレが焦りながら言うと、ニールセンが前に出て口を開く。
「……村人はどうか分かりませんが、騎士達は自業自得。死んでも文句は言わせません。ここは私が引き受けます……!」
ニールセンが倒れたキメラに襲いかかる。
「ひぃぃぃ!? た、助けてくれよニールセン……む、昔のよしみじゃないか……!?」
「こんな風になってしまったお前達が助かるとは思えない。ホイットがそんな策を持っているとも。セイラさんを助けるため、死ね……!」
「う、うわあああ嫌だぁぁぁぁ!?」
「ひいいいい!?」
恐怖に震える騎士達。
ニールセンは容赦なく剣を振り上げた。
だがその時、キメラに異変が起き、ノゾムがいち早くそれを察知してワイヤーをニールセンへ伸ばす!
「な、何をするんだノゾム君!?」
全員のところまで回収されたニールセン。
その様子を見ていたフレーレも何かを感じ取り、全員の前に立って魔法を使う。
「≪シャインウォール≫! 皆さんわたしの後ろに!」
『まさか……!?』
「そのまさかだ! 来るぞ!」
アルモニアとカームが合流した直後、巨大キメラが大きく膨れ上がった!
「ぐ、ぐえ……お、俺達はまだ戦える、ぞ……」
「す、捨て駒かよ!? ちくしょぉぉぉぉ……」
カッ!
騎士達の怨磋をバックにキメラの体は爆散をした……
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