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最終部:タワー・オブ・バベル
その295 兵器
しおりを挟む「何アレ!?」
「現代にもない兵器です! 地上は兄さんと皆さんに任せて私達はこちらを!」
ターン……!
「見え見えだよ!」
「ならこっちも!」
シュン! ガゴ!
「チッ、魔法の矢か……装甲がへこんだな」
丸っこい二足歩行(羽があれば大きな鳥に見えなくもない)の鉄の塊がレイドさんやフレーレに襲いかかるのを最後に、私とアイリは目の前のユウリへ視線を戻す。これを落とせばあれの命令も停止するのではと思ったからだ。
「ファウダー、上へ!」
<任せて!>
「まだ上がるのか、ならこっちは少し後退だ」
ダダダダダ!
「射線を合わせて来るわね、あの銃を壊した方がいいかしら」
「そうですね……ルーナさんは機銃をお願いします。私はローターとコクピットを攻めてみます」
タン! ターン! と、リズムに乗った感じで撃ちまくるアイリ。それをあの大きな箱はするりと避けていく。その中で一発、ユウリの乗っている場所へと当たったけど、弾き返されてしまった。
「やはり防弾ね。それならそれで」
アイリが続けて撃つが、フラフラと躱され中々当たらない。
「見かけより動く……けど!」
シュ!
ガン!
「よし、命中!」
私の矢が左右にある機銃のうち右に当たる。続けて射かけると、斜め回避しながら撃ってくる。
「機銃狙いか!? その前にドラゴンを落としてやる!」
ダダダ!
ビスビス!
<痛っ!>
ファウダーが私達を庇い、機銃の攻撃が胴体へとヒットする。少し血が出ているようだけど……
「大丈夫?」
<全然大丈夫だよ。オイラはこれからあの箱の下に回り込むから、その時に機銃を破壊できる?>
「やってみるわ」
ファウダーが少しずつ下がりながらユウリへと向かう。その間、アイリの攻撃は休まず続いていた。
「突っ込んできた? 何のつもりだか分からないけど、近寄らせるもの……何!?」
ドン! ドン! ガシャン……!
「ぷわ!? 防弾を破った!?」
ユウリを守っていたガラスに放射状のひびが入り視界を塞いでいた。ライフルに弾を入れながら叫ぶアイリ。
「同じところを何度も当てれば脆くなるわ、ファウダーさん、今です!」
<よしきた! ルーナ!>
「任せて!」
「この……!」
ダララララララ!
「そんなでたらめな攻撃がは当たらないわよ! それ!」
箱の下に潜り込んだ私は、腰から剣を抜き、すれ違い様に叩き斬った。そして右の機銃を真っ二つにすることに成功した。
<ナイス、ルーナ!>
「たまにはいいところ見せないとね、さあ、次は後ろから行くわよ」
「こっちも装填が終わりました。ローターを撃ち抜きます!」
チャキっとファウダーの旋回に合わせて構えを取ると、箱は物凄いスピードで前へ移動し、こちらへ向き直った。
「無理して付き合う必要はないからね。一旦態勢を立て直させてもらう……とはいえ機銃一つ破損か……使いたくなかったけど、一筋縄じゃ行かないか……。これでも食らえ!」
カチッ!
バシュ……!
「ミサイル……!? くっ……!」
箱の羽についていた長い物が発射され、こちらに飛んでくる。アイリがそれを狙って撃つと、大爆発を起こした。
「うわわ……耳がキーンってなった……!?」
「ミサイルです! 威力は見ての通りなので、避けてください!」
<二発目が来た!? カァァァァ!>
すかさず撃っていたのだろう、二発目のミサイルが私達を襲う。しかし、これはファウダーのブレスで凍らされ、そのまま地上に落ちた。
「くそ、ミサイルでもドラゴンは落とせないのか!」
「大人しくやられなさい! で、あれを止めてもらうわ」
「まだだ! まだ負けたわけじゃない……!」
バシュバシュ!
「二発同時にミサイルを発射してきた!?」
<くっ……速い!? それに逃げても追ってくるのか>
「あはははは! ドラゴンが落ちたらアイリだけは助けてやるよ!」
<追いかけて来るなら……これだ!>
「きゃあ!?」
ファウダーは急上昇! それをミサイルが上に向かって追ってくる。そしてファウダーの次の行動は……!
「こ、こっちに来るな!? くそ、左の機銃はまだ使えるか?」
<ルーナ達は伏せて!>
ダ、ダ、ダダダ……!
<くう!?>
正面から機銃を受けつつユウリへと突撃していくファウダー! かなり接近したところで直角に曲がった!
「う、うわ!? か、回避を!」
シュルル……
ボン!
「当たった!」
一発は逸れたが、もう一発は羽に当たり、バランスを大きく崩した!
「今!」
ターン……!
ボギン!
鉄の箱を浮かせているローターと呼ばれていた羽をアイリが撃ち抜いた……!
「ダメか……! 脱出を!」
「あ! ユウリが出てきた! ファウダー、怪我している所悪いけど、近づける?」
<いけるよ……! いてて……>
「ドラゴン……!? 来るな……! 来るなぁぁ!」
パンパン!
ユウリが背中からバシュッと広げてフラフラと落下していた。そこを目がけてファウダーに突っ込んでもらう。銃で攻撃してくるけど私にはアネモネさんから貰った盾があるのだ!
「そんなのじゃ今更効かないわよ! ノゾムとアイリが止めろって言ってるのに止めないならこっちも容赦しないわ!」
私は隻眼ベアのガントレットの感触を確かめ、右手に力を込める。そしてファウダーから飛び降り、盾を構えてユウリへと落下していく!
「パラシュートも無しに正気か!?」
パンパン!
「とりあえずキツイの一発食らいなさい……! ≪パワフルオブベヒモス≫!」
カンカン!
盾で弾を防いだ私は、補助魔法を唱え、ガントレットでの一撃をユウリの顔面に打ちこんだ!
「ぶあ!? ああああああ!?」
キリモミ状に吹き飛びながら、ユウリは砂漠へと落ちて行った。
「隻眼ベアのガントレットの威力みたか……!」
<ちょっと無茶し過ぎだよルーナ>
「あら、ありがとファウダー」
ゆるゆると落下していた私をファウダーが受け止めてくれた。同時に鉄の箱も落ちて爆発していた。
「やりましたねルーナさん! これであの機械も止まるはず」
アイリが下を見ると、レイドさんとパパが少しずつではあるけどダメージを与えているらしく、煙を噴いていた。このまま一気に倒せる、そう思った矢先にそれは起きた。
「……動きが止まった……?」
停止したからこれで終わり……では無かった。
「マスターノ、キケンヲカンチ。コレヨリボウエイモードヘイコウシマス」
「こいつ、まだ動くのか……!?」
「……ワイヤーで足を……む!?」
キュイィィィィ……!
「ガウゥゥゥ……!」
「わんわん!」
高い音を立てながら、一気にその場を離脱した! レジナとシルバが追うが、とてもじゃないけど追いつける速さじゃない。向かった先には……ユウリが居た。
「セイメイニイジョウ、ナシ。セントウシュウリョウマデ、カクノウシマス」
「何か触手みたいなの出てきた!?」
地上に近くなってきた私は上からその光景を見ていた。やがて丸っこい頭の部分がパカッと開き、触手のようなものを使ってユウリをその中へと放り込んだ!?
「あ、マズイ!」
「まさか人質にしたつもりか!?」
レイドさんとパパが同時に叫ぶ。確かにそう言われれば、迂闊にあれを壊すことが出来ない。
「……いざとなればユウリごとやるしかない……」
「兄さん!?」
「セントウモード、サイキドウ、センメツセン、ニ、ハイリマス」
「何かさっきより大きくなってませんか……?」
フレーレが目を細めて呟くと、ノゾムが何かに気付いた。
「……あいつ、ヘリを取りこんでいるんだ!? 急げ、ぐずぐずしていたら手が付けられなくなる!」
「わ、分かったわ!」
ノゾムの叫びで私達は丸っこい箱へと向かう。だが、時はすでに遅かった……!
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