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最終部:タワー・オブ・バベル
その294 勇利
しおりを挟む<バベルの塔:最上階>
『……何をしていた?』
「はて、何のことですかな?」
『勇利のところに居ただろうがよ? 何を話していたって聞いてんだ』
「特には。主が心配されていたことをお伝えしたまでですぞ」
『っば!? 心配してねーし! もう裏切ったみたいだし? あいつらがここまで来るってんならそれでいい。ま、世界を破壊してもあいつらは助けられるしな』
「(やはりあの三人は弱点になりますかな? ヘタに説得に応じられても困る……これはあの者のところへ行って正解でしたな)それではわしもそろそろ持ち場へついて準備をしましょうかの」
『おー、やる気じゃねぇか。次はお前が行くか?』
「そうですな……あの者達はまだなのでしょう?」
『だな。思ったより時間がかかってるわ。なら次はお前で頼む』
「しかし息子さんが勝つのでは?」
『今の勇利じゃちっと荷が重いかねえ……? 次のフロアは望と愛理はボス部屋の制限をつけないとダメか? ま、どちらにせよ用意はしておけ』
「はは!(わしが代わりに神になろうなどとは思わんが、最初の約束は果たしてもらうぞ主よ)」
◆ ◇ ◆
――バベルの塔、60階。
私たちはようやく折り返しの一段階目となる階へと足を踏み入れる。
「気を付けてな」
「うん、お父さんはゆっくり休んでね」
お父さんは足と腕を損傷しているため今回はボス部屋には入らないことになった。
メンバーは私、レイドさん、パパ、セイラ、ファウダーに、なんとフレーレが加わった。ママかニールセンさんでいいじゃないと言ったけど、意外にも道中の魔力消費が激しかったらしく、ママよりフレーレの方が元気だった。ニールセンさんも分かれて行動した際の消耗が激しく、お留守番となった。
「聖女様! どうかお気をつけて!」
「大丈夫よ、任せて!」
「レイドさん、意外とあの二人……」
「……」
ありゃ、ちょっと機嫌が悪いわね。妹の相手はやっぱり気になるのかな?
それはともかく、60階は広い。天井は見えず、一面は砂砂砂……私は見たことが無いけど、サンドクラッドと同じ砂漠というやつだろう。違うのは暑くないことくらい。
前を歩くのは望と愛理。できれば説得をして通過できれば、ということだったので二人に前へ出てもらった。
そして――
「……勇利! いるんだろう? 出て来るんだ!」
「私達はルーナさん達と父さんの元へ行くことにしたわ。勇利も一緒に……」
二人が大声で叫ぶと、奥からユウリがゆっくりと歩いて来た。
「来たかい、ここは通さないよ?」
「よせ、勇利、俺達はこんなところで戦う必要ない。父さんに話をするんだ、この世界は俺達の世界じゃない、その人達を犠牲にしていいはずもない」
「……そしたら僕達はどうなる? また冷たい世界に逆戻りか? 生まれ変わるのかい? あの神達の手で。僕は嫌だね。父さんとも、君達ともまた離れるのは」
そこでアイリも説得に入る。
「何か方法があるはずよ、こっちには女神が二人も居る。それに父さんだって力があれば何か……」
「うるさい! うるさい! 君達は僕の言うことを聞いていればいいんだ! 父さんを殺させはしない!」
タンタン!
アイリが全てを言う前にユウリは銃をアイリの足元へ撃ち、頭を押さえて叫びだす。
「……何か変じゃない? 言ってることがめちゃくちゃなんだけど……」
「あの目、ちょっとおかしいですね」
私とフレーレがひそひそと話していると、再びユウリが喋り出す。
「望、愛理! 僕の邪魔をするなら容赦はしない、腕の一本は覚悟してもらうよ!」
「……よせ! お前は……! う……!?」
ズゴゴゴゴ……
ユウリが手に持っていた何かを操作すると、どこからか音がする……。
『戦闘へリ……!? こんなものまでこの世界に持ち込んでるなんて!』
『落ち着きなさい妹ちゃん。ここで破壊してしまえば問題ないわ。だから頼むわよ!』
憤慨しているエクソリアさんに、他人事のようにいうアルモニアさん。ユウリはその鉄の塊に乗って上昇していく!
「ちょ!?」
「……馬鹿な、俺達は銃火器は使っても飛行機の操縦なんてしたことはないぞ! どうなっている!?」
「あは! ははははは! これはいいや! さあ、ショーの始まりだよ!」
バララララララララ!
「わ!?」
「危ない!」
「空飛ぶなんてずるいわよ! フレーレ!」
「はい! ≪マジックアロー≫!」
バシュ! フレーレのマジックアローが空飛ぶ箱へまっすぐ飛んでいき……
カンカン!
弾かれた。
「そんなものが効くわけないだろ!」
「うひゃあ!?」
またしても何かを撃たれ、慌てて回避する私達。
「空の敵にどうすれば……」
レイドさんが剣を抜いて呟くと、横に居たファウダーが巨大化を始めた。そうか!
<オイラに乗って! 二人までなら安定して飛べるよ!>
「私が行くわ、弓で撃ち落してやる!」
「でしたら私も連れて行ってください! ライフルならローターを撃ち抜けばいけます!」
「ルーナ、危険だぞ!」
<いいから早く!>
私とアイリがファウダーの背に乗り、一気に上昇する!
「チッ……ドラゴンとはね……」
「行くわよ、ちょっとキツイお仕置きが必要みたいだしね。ファウダー、銃は前についているみたいだから回り込んで」
「愛理は返してもらうよ。君達の相手は僕がしよう。地上に居る奴らにはこれだ……!」
ファウダーに指示を出し、後ろに回り込もうとする私達。ユウリが何かをまた操作したのを見て、私は下にいるレイドさん達が見る。するとそこで異変が起こる。
「くそ、ジャンナにも来てもらうべきだったか……俺のディスタントゼロじゃあの高さまでは無理だ」
「どこかに銃でもあれば……ん?」
ノゾムが辺りを見渡していると、砂漠の一角が盛り上がっているのが見えた。
「何、あれ?」
セイラも何かに気付いたようでそこを見つめていた。そして出てきたのは、丸っこい形をして、足が二本ある鉄の塊だった。
「……!?」
「どうしたノゾム、あれを知っているのか?」
キュイーン……
「変な音がしてますね? あ!?」
タタタタタ……
「撃ってきた!?」
「……あれは殺戮兵器だ! 全身に銃火器をつけている!」
ダララララララ!
「≪シャインウォール≫!」
カンカンカン!
フレーレの張った光の壁に弾が当たり、乾いた音が響く。丸っこいやつは距離を詰めるため前進を始めた。
「助かった、あれはなんだ? 壊せるのか?」
「……俺達の世界でも存在しないものだ。何かしらの魔法で作り上げたのかもしれない……ちなみにボディ自体はそう固くないだろうから剣で壊せるだろう」
「接近するまでが大変ね……ルーナは空だし、補助魔法がないのは痛いわね」
「それじゃわたしが一気に近づいて聖魔光で殴れば……」
「だから近づくのが大変だって言ってるじゃない!」
「……大丈夫だ≪フェンリルアクセラレータ≫!」
「あ! それ、使えるんですね!」
「そういやそうだったか。よし、迎え撃つぞ」
レイドさん達と丸っこい殺戮兵器の戦いも幕を上げた。
<モクヒョウヲカクニン。ハイジョシマス>
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