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最終部:タワー・オブ・バベル

その273 緊急

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 あれから二日経過し、ゆっくりと休息を取る事で私達は充分に回復ができた。

 しかし、懸念が取り払われたわけでは無く、色々と考えなければならかった。


 「すいません……」

 「大丈夫よ、ゆっくり休んでて」

 フレーレは目が覚めたものの、戦えるほどには回復しなかったので一旦カルエラートさんと共に休息を取ることになり、一緒にレジナも拠点に残すことが決まった。

 「くぅーん……」

 「フレーレと一緒に待っててね。次に帰って来たときに治ってたら一緒に行こうね」

 「がう」

 「わんわん!」

 <シルバが代わりにがんばるって言ってるにゃ>

 レジナとフレーレについてはこれで一旦持ち直してもらうことで外れてもらい、後はダメージをニールセンさんだけど、彼は休むことで回復し再び着いてくることに。戦力として頼りになるので、これはありがたかった。



 そして準備をしているときのこと。


 「リンがどこいったか知らない?」

 「え? ミトと一緒じゃないの?」

 するとミトは首を振って、フレーレと一緒にいるからと部屋に残してから姿を見ていないらしい……

 「どこへ行ったのかしら……エクソリアは知らないの?」

 セイラが尋ねると、エクソリアさんも首を振って手を上げる。

 『ボクが飲み物を取りに行く前は居たんだけど、帰ったら見なかったよ。どこか拠点の中に居るんじゃないかい? 外に出たらあっという間に餌だから出ないと思うけど……痛い!?』

 餌、という言葉でミトが不安げな顔になり、セイラに頭を叩かれている女神。

 「そう……拠点から出ていないといいけど……」

 というわけで子猫のリンがどこかへ姿を消してしまったようだった。拠点に居る間はミトが面倒を見てくれていて、今日は朝ごはんの時間にも姿を見せないのでおかしいと思ったらしい。手分けしてしばらく探したけど見つからず、後はフレーレとミトに任せて再度準備に取り掛かる。

 だけど、リンとは別にもう一つ問題があった。

 「……シロップは?」

 『部屋から出てこないわね、主人を噛んだのがかなりショックだったみたい。ご飯も食べに来ないし、このままじゃ衰弱しちゃうわよ』

 そう、シロップが引きこもりになってしまったのだ。私は大丈夫だよって言ってもか細く鳴くばかりでもぞもぞとベッドの下から出てこない。

 「今回はシロップも置いていくしかないかな……まあここの方が安全だと思うけど……」

 私がそう言ったところで、シルバが部屋に入ってきた。

 「わん! わんわん!」

 ガツン!

 「きゅーん……わん!」

 シロップよりも大きくなったのでベッドに滑り込むことができず、頭をぶつけたシルバだけど、めげずにベッドの下へ潜りこみ、シロップとわんわんきゅんきゅん鳴き始めた。

 『説得をし始めたのかしら? ここはお兄ちゃんに任せておきましょう』

 「そうですね。シルバ、シロップ! お腹が空いたらでてきなさいよ!」

 「わん!」

 と、一鳴きしたので、私達はシルバにシロップのことは任せて外にでることにした。


 今日は明日からの方針を決めるため広場に集まることになっており、折角だからと各国の代表も交えて話をすることになっていたのだ。

 「拠点も大きくなってきたわねー」

 「ブラウンさん達頑張りすぎでしょ……家とかありがたいけどさ」

 『人間は力を合わせることで大きなことに挑戦し乗り越えることができるって訳よね。私達には分からない感覚だけど、理解できるようになってきたわ』

 「ダメだから消す、という考えが無くなったってことですか?」

 『そうね、失敗から学ぶことも多いし。妹ちゃんの料理みたいに常にできそこないというわけじゃないから、見守って、たまに手助けをする。それでいいんじゃないかって思ったのよ』

 アルモニアさんが笑いながら地味にエクソリアさんを貶めながら歩き、尚のこと神裂を倒せば平和になるんだと確信した。
 程なくして広場に到着すると、パパに声をかけられた。

 「これで集まったな」

 どうやら私達が最後だったらしく、慌てて椅子に座る。リンを探すのに時間がかかっちゃったからなあ……。私が椅子に座ると、エリックが立ち上がりおじぎをしながら自己紹介を始めた。

 「蒼希の方々は初めましてですね。僕はビューリックの騎士団長でエリックと申します。こちらの勇者様達にはさる事情で大変お世話になりまして、協力をさせていただいております」

 「ほう、あなた方もですか。わしらもそちらのセイラ殿と、体調を崩されているフレーレ殿に娘を助けて頂いたことがありましてな。婿のベルダーもディクライン殿のパーティにおったことがある。わしらも是非協力する所所存じゃ。わしはサイゾウ、蒼希のニンジャ部隊を率いてきた」

 サイゾウさんが言い終えた後、ニールセンさんが立ち上がって深々と頭を下げた。

 「……私はヴィオーラの聖騎士、ニールセンと申します。恥ずかしながら我が王は神裂に取り入り、塔へと立てこもってしまいました。本来であれば協力すべきところ、ご迷惑になる形になり申し訳ない……。必ずや打ち倒して見せます」

 「あんまり気負わなくてもいいと思うよー。ウチの国王も大概だったしねー? そういうのは遅かれ早かれどこかで破綻していたはずさー。僕たちも協力するから遠慮なく言ってよ」

 うん、ビューリックはあんたが破綻させたけどね……。私は被害をこうむったけどあれはまあ最終的には良かったからいいけど。

 「ありがとうございます……」

 「挨拶はそれくらいでいいか? こっちはだいたい知っていると思うけど、ディクラインだ。早速で悪いが、五十階以降の行動を……」

 ニールセンさんが椅子に座り、パパが話を続けようとしたその時、サイゾウさんの後ろに部下のニンジャさんが現れ耳打ちを始める。

 「何……!? 身動きが取れなくなったじゃと?」

 「どうされました?」

 レイドさんが尋ねると、サイゾウさんが苦い顔をして全員に告げた。

 「……先に行ったサムライの部隊が行軍できなくなったらしい……」

 「あれだけの人数が居たのに、ですか?」

 すると、サイゾウさんが部下に顔を向けて頷くと、部下のニンジャさんが口を開いた。

 「カイムさんとその横にいた男の制止を振り切って五十一階へと登ると、見たことの無い建造物が建っておりました。最初は戸惑ったものの、魔物も集団でかかれば倒せなくはなかったので五十二階へ進んでいました」

 「流石は噂に聞くサムライか。それならもっと進んでも良さそうなものだが……」

 パパが顎に手を当てて呟くと、ニンジャさんは言葉を続ける。

 「……我々にもよく分からないのですが、彼らが歩いているとどこからか攻撃を受け始めたのです。鎧を貫通し、小さな穴が空くのですがそこから血が噴き出るのです。建造物のどこかから弓で攻撃しているのかと思いましたが、気配は完全にシャットダウンされ、ニンジャの我々でも見つけることができませんでした。足を重点的に狙ってくるようで、それで足が止まり、建造物へ避難したまま動けなくなったというわけです」

 「回復魔法は?」

 「着開ける者はいます。ですが、とても回復が追いつくような状況ではありませんでした……それで私が戻ってきたのです。ニンジャ総出で探せばあるいは、と。幸い建物の中では攻撃を受けていませんが、攻撃されないとはかぎらないので」

 それに対し、サイゾウさんが立ち上がって頷きながら口を開いた。

 「一刻を争うか。では我々も向かおう、好き勝手に動いた報いとは言え、見捨てるには忍びない」

 「なら俺達も行こう、準備はいいか?」

 「遠距離なら私の出番かもね、任せて!」

 遠くから攻撃してくるなら私の弓は最適だと思う。

 話を聞く限り過酷な環境ではないようなので、通常装備で塔へと出向くことになった。
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